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農業へ思いを寄せて

農業と農家を楽しむ暮らし
──三世代現役で野菜農家を営む小寺さんの農業経営と思い

東京都清瀬市
小寺 義直さん

2.地域、仲間、子どもとともに受け継ぐ心と技術

 ただし、そうした農家哲学を東京で守り続けることは容易なことではありません。比較的まとまった畑が多い清瀬市でも、毎年相続のために、何haもの農地が宅地に変わっています。営農を続ける農家も、副業を余儀なくされることが少なくありません。その中で専業農家を続ける義直さんは語ります。「周囲の農家から変わり者だと言われるが、農家として当たり前のことをしているだけで、変わったのは周りの方ではないでしょうか」。

 義直さん・正子さん夫妻からすると二代目にあたる正明さんは、そうした両親の背中を見ながら、高校進学の時に農業を継ぐ決意をしたそうです。都市農業後継者のなかには、父親とは異なる品目にチャレンジする二代目が少なくありません。そうしたなかで正明さんは、両親の技術を受け継ぐために、あえて同じ品目の野菜栽培を続けています。心と技術の両方が受け継がれているのでしょう。

地域づくりと仲間づくり

 二代目の正明さんが新たに取り組んでいるのは、都市農業後継者の仲間づくりと地域づくりです。その名も「きよせ施設園芸研究会」。行政の事業も活用して、後継者仲間とともに「農薬軽減型ビニールハウス」を導入しました。従来のハウスの構造に改良を加え、風通しをよくしたり、開口部に防虫ネットを備えたりします。また、施設導入だけが目的ではなく、栽培技術の向上や農薬散布軽減方法の研修など、品目ごとに部会を設けて情報交換や研究活動を行ないます。

 さらに、「きよせ施設園芸研究会」では、メンバー34人全員が東京都が推進する「エコファーマー」の認定を受け、環境保全型農業を研究会の活動の柱にしています。後継者仲間づくりと地域環境づくりが結びついた、新たな都市農業の形を実践しています。

中学生が見せた新鮮な感動

コカブの出荷作業

 昨年秋「きよせ施設園芸研究会」では、はじめて市内中学生の農業体験活動を受け入れました。中学校2年生による「職場体験学習」の一つとして、「研究会」に農作業体験活動受け入れの依頼があったのです。

 「研究会」メンバーのなかには、最初は受け入れをためらう農家もありました。「いまどきの中学生が、素直に農作業をしてくれるのだろうか」。もっともな心配です。しかし、実際に受け入れてみると、中学生は予想外にも積極的に作業に励み、また農業に対する尊敬と感動がうまれたことがわかりました。体験活動の後には、各農家にお礼の手紙が多数寄せられ、農家にとっても励みになっています。

 機械化の進む農業では、広い畑で作業するのが一人だけということも珍しくありません。子どもたちの体験参加は、本来の家族経営農業の姿に重なります。新たな地域づくりと次世代の育成のヒントは、畑と農作業にあるといえるでしょう。


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