【一覧に戻る】
はじめに

農業高校のイメージを変えた体験入学
──「阿波農まるかじり」とは

三橋 和博
徳島・阿波市教育研究所(前吉野中学校教諭)
「阿波農まるかじり」の講座「食品の色素を検査してみよう」の一場面

 初夏の候、風薫るさわやかな季節になりました。私は阿波農業高等学校に入学し、2カ月が過ぎようとしています。先生はいかがお過ごしですか。(略)
 私は阿波農業高校に入学してから「ここに来てよかった」と何度も思いました。教室だけの授業では学べないこともありますし、本当に毎日が充実しているのです。(略)
 最後になりましたが、先生には感謝しています。私が今、最高の学校生活を送れているのは、先生のおかげだと思うからです。

 この手紙は、「阿波農まるかじり」を体験したことで、これまでの進路希望を見つめ直して、阿波農業高等学校へ進学した生徒からのものだ。それでは、この生徒の進路を決定づけた「阿波農まるかじり」とは何かについて紹介しよう。

1.農業高校の魅力を知ってほしい

「阿波農まるかじり」の講座名一覧
No. 講座名
1 本に親しもう
2 百人一首を楽しもう
3 微生物の力はどのぐらい?
(微細な巨人)
4 サクサククッキーをつくろう
5 バトミントンを楽しもう
6 押し花小箱をつくろう
7 くだものの甘さを比べてみよう
8 農と食と環境を考えよう
9 動物と触れ合おう
10 先輩と語ったり進路や阿波農を知ろう
11 食品の色素を検索してみよう
12 組織培養に挑戦してみよう
13 アジアンノットを楽しもう
14 お茶をたしなもう
15 筋肉トレーニングに挑戦しよう
16 ラグビーペナルティーキックに挑戦しよう
17 ハーブで香りを楽しもう
18 種まきから始まる野菜づくりを楽しもう
19 先輩と一緒に調理をしよう
20 フラワーアレンジメントにチャレンジしよう
21 英会話を楽しもう
22 楽しく数学を学ぼう
23 バスケットボールを楽しもう
24 透明水彩で絵はがきをつくろう
25 あなたも作曲家
26 書道に親しもう

 「阿波農まるかじり」とは、中学生を対象にした地元の徳島県立阿波農業高等学校(以下、阿波農高)への体験入学のことである。それまでも、体験入学を行なってはいたが、夏休みに希望者だけ参加するものだった。それを、前任校の阿波市立吉野中学校の3年生全員に体験させたいと考えた。なぜ、全員参加の体験入学を考えたかというと、2つの理由があった。

 1つは、阿波農高の山本一夫校長先生との出会いであった。「農は食を生み、食は人を育て、人は未来を拓く」という校長先生の言葉から生まれる教育実践に感動したからだ。それは、食農教育を通して未来をたくせる人間の育成をはかっていると感じさせるものだった。そのような教育実践に少しでもふれさせることで、生徒たちに食や農への意識を持たせたいと考えた。

 また、吉野中学校のある地域は、ほとんどが平野で、農業地帯であり、稲作と園芸が盛んで、特にレタスの集団栽培は全国的にも有名である。そんな地域でありながら、地元の阿波農高へ進学する生徒は、あまりいなかった。それだけでなく、阿波農高に対して勝手なイメージを描くだけで、まったく知ろうともしないという実態があった。それが、3年生全員参加の体験入学を考えた、もう1つの理由であった。

 そこで、隣りの中学校にも呼びかけ、阿波農高の先生と2つの中学校の進路担当教員とで、どのような体験入学にするか何度も話し合った。中学生にも、その話合いの経緯を伝え、単に体験することが目的ではなく、農業高校、ひいては農業を理解することが目的であることを納得させた。だから、体験講座「阿波農まるかじり」は、中学生の自由な選択にまかせたが、講座の主旨を理解していたせいか、講座ごとの選択人数のバラツキは、さほどなかったと思う。表が、講座内容の一覧である。農高の先生が担当するもの、農高の先生と農高生が一緒に担当するもの、農高生だけで担当するものと、内容はさまざまだった。


▲このページトップ 【一覧に戻る】
 
このコンテンツのすべての画像、文字データについて無断転用・無断掲載をお断りいたします