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5.まとめ

石巻市立北上中学校における聞き取り調査は、事前に行ったアンケート調査内容に加え、さらに詳しい内容を直接担当された先生方から伺うことができた。この面接調査により学校の教育目標、課題、学校経営の重点、教育推進の重点、研究課題などを整理し、総合的学習の位置づけを明確にするなど、学校側の農業体験学習に対する姿勢を確認した。

これらから、農業体験活動に対する「意欲」の形成要因、「知識・技能」の導入と効果、また、この体験学習を通じてどのような「創意」が芽生え、そして活動後の子どもたちに何らかの「変容」が見られたのかの4点について考察をくわえると、次の通りである。

(1)農業体験活動に対する「意欲」の形成要因

小学校、中学校の義務教育レベルの子供たちが、変動する経済や社会生活の中で、日々の学業や様々な活動をとおして、今、何に強い興味や関心をもっているのか、果たして自然環境の大切さや食べものを生産、加工、そしてその安全や流通、確保などについてどの程度認識しているのか、また、農業体験活動をとおして“農業”に興味を起こし、何が「意欲の形成要因」になっているかである。

この点、今回訪問面接調査をさせていただいた石巻市立北上中学校は「自ら学び、主体的に判断し行動する心身共にたくましい生徒を育成する。」ことを学校教育の目標とし、これら一連の事柄を包括する総合的な学習の時間を、生徒たちにより親しみ易い時間とすることを含め、これらの時間を「にっこりタイム」と呼び設定し、4年前から具体的な活動を実施している。この「にっこりタイム」には、生徒が先生の指導によって各自の関心に基づき、4つのコースから年間をとおして取り組む課題を決めている。また、地域の人々にわかりやすい表現で実施しているということから、地域の理解と協力を得る上で大きな効果をもたらしてきている。つまり、農業体験学習に対して意欲を形成する学校内外の環境が整えられているといえよう。

北上中学校はこの「総合的な学習の時間」の効果を高めるため、実施してきた内容と成果を学校だより「きたかみ」で逐次報告させ、また、年1回大きな発表大会を実施していることも、生徒をしてより良い成果を得る努力を醸成させ、それらの体験学習に対する「意欲」をさらに向上させていると評価できる。

(2)「知識・技能」の導入と効果

北上中学校における農業体験学習は、学校経営の基本方針でもある「恵まれた環境を生かし、小規模校の特徴を生かし、確かな学びを身につけさせ、社会性とともに創造性を育てる」ことで、思いやりと豊かな心を育み自主性・社会性に富んだ人を育てる総合的な学習のひとつとして位置づけている事から、農業・食糧生産、農産加工に関する一般知識や技能を地域の方々、特に一般的な技術な物的支援をしてくださる学校支援委員や農家の方々から教えてもらうに留まらず、通常の学校における各教科との関連からも大きく学ぶ機会として捉えている。

つまり、学校支援委員さんのご指導により、米が、芋が、野菜など食べ物がどのように生産されているかを直接体験することで認識し、そしてどのくらいの労力がつぎ込まれ、農家の人のご苦労を短時間内ではあるが身をもって体験している。更には、昔と今日との生産技術、工程、労働量の違いを体験すると同時に、人々は協力して社会を構成しなくてはならないなど、農業体験学習は多くの知識と技能を学び取る機会となっていると確信できる。

(3)体験学習を通じて「創意」と工夫が生まれたか

この体験学習の数々の記録写真を見ると、生徒が田んぼに一列になって並び、稲の苗を手で植えている。これは現在のような田植え機を用いない一昔前の田植えであり、無農薬栽培であることから手による草取り作業も行っている。これらは支援委員さん達があえて取り入れている作業であり、生産技術の基本を体験した出来事のひとつであろう。これらの体験をとおして生徒達は、食べ物を生産する大切さとその基本を体験したことになる。

一緒に働くこれらの活動(体験)により、多くの人が一緒に働く環境下における自分の立場や役割・責任について、生徒達が何か気が付いたことがあると期待できる。このことは、入学した1年目から既にカリキュラム化されていた「総合的な学習の時間・にっこりタイム」で、担当の先生からきめ細かな指導を受け、地域の先生(学校支援委員ほか農家の方々)による体験指導が下地にあった。つまり、「にっこりタイム」において「自分で課題を見つけ、解決する能力」、「美しいものや自然に感動する心」、「思いやり・倫理観・社会貢献の精神」が着実に醸成されていたことも大きく影響しているといえる。

(4)活動後の「変容」について

佐藤泰孝校長は、「当校の農業体験学習は、総合的な学習の時間に地域の特性を生かして行っている。特に、相川中学校との統合により、漁業を生活の糧とされてきた家庭の子供達が一緒に学ぶ事になり、今まで経験の少なかった農業関連の体験は子供達を大きく変容させる要因となっていると考える。当地域を取り巻く環境や産業の特色を知り、町の良さを外に向けて発信していくことを柱として学習することを期待している」と語り、これまでの農業に関連した活動に加え、特に過去4年の経過を振り返り「生徒は地域に対する愛着が強くなったと思う。その現われとして卒業後に地元の高校へ進学する生徒が多くなってきていることが挙げられる」と評価している。

食べ物の生産とその重要性を体験させているこの農業体験学習の時間を実施した事により、生徒の食に対する考え方の変容がみられ、何事にも無駄を無くす心構えや、協力・相互扶助につながる心が着実に醸成され、教育効果を大きく発展させていると評価できる。

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