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(1) 普通科生徒の栽培実践と教育的効果
(2) 高校生の「心の居場所」と園芸植物
(3) 学びを生かす「農業教育と園芸療法ボランティア」
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 深澤 眞悟(山梨県立農業大学校、前・山梨県立農林高等学校)
協力 日本農業教育学会

1 農業・園芸のもつ福祉的な要素

 高等学校の農業教育が、農業後継者の減少により産業的価値の再生産という一面から、農を通しての人間形成へと変遷して久しい。高校での農業教育は、農業技術としての価値の再生産から、しだいに関連分野に関わる技術へと拡大し、そして「ガーデニング」「趣味の園芸」という生活面へと拡大しつつある。そしてわが国の高齢社会の到来により、注目を浴びてきたのが農業や園芸のもつ大きな意味での福祉的な要素である。これらは園芸療法、園芸セラピー、園芸福祉という言葉で広く認知されつつあり、作業療法や福祉レクリエーションであったり農業従事者の生きがいであったりと、そのレベルはさまざまである。確かにこれらの活用領域の認識はさまざまで、混乱している面もあるが、農業高校では2003年に科目「生物活用」が設けられ、これらの分野を学ぶことになっている。
 農業・園芸の技術教育を農業以外の社会的な多くの領域で活用することを学ぶことは、社会的見識を深める点でも高校生や大学生にとってきわめて重要な意味をもつ。学際的には、福祉・医療と農業・園芸、そして教育の複合領域に当たる園芸療法の場面で高校生とともにボランティア活動を行い、その調査結果から見た農業教育の新領域での展開の可能性を検証する。

2 園芸療法ボランティアの実践内容

(1)病院の概要と実施方法

 98年5月から医療法人甲療会・赤坂台病院療養型病棟で、園芸セラピー・ボランティアとして取り組みを始めた。参加生徒は、システム園芸科3年生で科目「課題研究」(2単位)で「園芸セラピー」を希望した生徒であり、02年12名とおおむねクラスの30~40%の生徒が参加している状況である。男子よりも女子のほうが多く参加している。5月から10月の土曜日の午後を使い、病院に訪問し月に1度のペースでボランティア活動を行っていたが、5日制となってからは試験後の午後を使い行っている。
 夏休みに自主的に参加する生徒も増えている。このときには、一般のボランティアの人と一緒に行っている。この方は主婦であるが、ヘルパーや福祉住環境コーディネーターの資格をもち、園芸の知識も豊富であり、98年から参加し今では週に1回園芸セラピーを実施している熱心な方である。教育的にみるとボランティアの「モデリング」という存在である。
 この療養型病棟は、脳性疾患にともなう肢体不自由・言語障害、パーキンソン病、神経痛、リュウマチなどの病状の方で、高齢者が多く車椅子利用者がほとんどである。女性が9割ぐらいである。病棟の中庭約250m2が園芸セラピーの場になっている。中央には手作りのレイズドベッド(高設花壇)がつくられ、車椅子でも出られるように舗装がしてある。近くにはクヌギの雑木林もあり、将来は道をつくり車椅子でも散策できるように計画を立てている。私たちボランティアの受け入れの窓口になっている職員は、事務長、看護婦長、鍼灸師、ケアマネージャー、ケースワーカーである。長いつきあいとなり、意思の疎通も十分である。病院側は、長期入院者のストレスの緩和、気分転換といった園芸のもつ効果に着目し園芸セラピーを取り入れた。病棟から出て太陽の光を浴び、外気を吸い園芸を楽しむ。中庭の花を見ることで花の美しさや四季を感じる、これまでの病院では考えられなかったことを実践している。
 この療養型病棟は、脳性疾患にともなう肢体不自由・言語障害、パーキンソン病、神経痛、リュウマチなどの病状の方で、高齢者が多く車椅子利用者がほとんどである。女性が9割ぐらいである。病棟の中庭約250m2が園芸セラピーの場になっている。中央には手作りのレイズドベッド(高設花壇)がつくられ、車椅子でも出られるように舗装がしてある。近くにはクヌギの雑木林もあり、将来は道をつくり車椅子でも散策できるように計画を立てている。私たちボランティアの受け入れの窓口になっている職員は、事務長、看護婦長、鍼灸師、ケアマネージャー、ケースワーカーである。長いつきあいとなり、意思の疎通も十分である。病院側は、長期入院者のストレスの緩和、気分転換といった園芸のもつ効果に着目し園芸セラピーを取り入れた。病棟から出て太陽の光を浴び、外気を吸い園芸を楽しむ。中庭の花を見ることで花の美しさや四季を感じる、これまでの病院では考えられなかったことを実践している。  

(2)計画の作成と実施のポイント

 年間計画の作成では、患者さんの状況や安全性、経費をかけない、失敗しない園芸などにポイントをあて立案している。実際の運営では、楽しい時間とすることはもちろんであるが、適度な作業を行えることや、患者さんの意欲を喚起できるように心がけている。自分の花を育てる、自分で名前を書きラベルを立てるなどして所有権を明確化にし意欲を喚起するのである。そして、高校生ボランティアとの交流を大切にしている。園芸のもつ身体的・精神的な効用とコミュニケーションによる効用をうまく引き出すことがポイントである。
 実際の園芸活動は、花を中心として野菜も取り入れた栽培分野と、押し花やアレンジメントなどの分野である。花は、押し花やアレンジメントに使えるものを選定している。また、鮮やかな色彩の黄色やオレンジ・赤など高齢者でも認識しやすい色と、大きな花を選んでいる。種まきやさし芽、植え替え作業、花の収穫、花柄とり、草取りとすべての園芸作業活動を展開している。細かい種子は、扱いにくいため土団子をつくり、種を埋めたものをプランターにまくとか、アレンジメントでは、花を束ねやすいように円錐形の紙でアイスクリームのコーンと同じ形のものをつくり、花をさす要領で花束をつくるなどの配慮をしている。このようなところが普通の園芸活動とひと味違う。
 患者さんたちは身体の状況に合わせて参加し、また体に負担とならないように暑い日や寒い日は屋外での活動を避けている。実施時間は1時間程度である。暑いときや寒いとき、雨天時などは、室内の食堂で園芸活動を行う。患者さんの参加希望は多く、20~30名が参加している。

(3)生徒と患者の変化

 生徒が参加するときは、患者さん2人くらいを担当し園芸活動ができるようにサポートとして活動する。患者さんの車椅子を押し中庭に出て、上半身片側麻痺のときには片手となって鉢をもち手助けを行う。病院という、若者にとって一番縁のないところでボランティア活動を行う。最初のうちは車椅子の扱いもギコチなく、高齢者とのコミュニケーションもうまくいかなくても、回数を重ねるごとに自然に適応してくる。背をかがめ車椅子の高齢者の目線で会話を自然に行うようになる。
 患者さんたちは、高校生の来る日を楽しみにしている。高校生たちが変化の少ない病棟に新鮮な風を送り込んでいるのである。園芸作業を一緒に行うという時間の共有が、人の心の壁を早く取り払い、コミュニケーションを促進するのである。園芸セラピーは、癒しの風を吹き込む。癒しの効用は、身体のリハビリテーションとメンタルヘルスである。身体面でのリハビリテーションは、当然病院での理学的な処置によって機能回復が図られているが、園芸セラピーを行っているときに意欲を喚起し、不自由な手を伸ばそうとするなどの実例を聞く。
 またメンタルヘルス面では、患者さんたちが集まり花を植えたりするこの活動は、集団精神療法の一つとしてストレス解消に役立っているようである。
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