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(1) 農山村フィールドワーク体験による農業・環境学習
(2) 触覚に注目したブルーベリーの目隠し収穫体験プログラム
(3) 食農教育から生まれる教育的効果に関する
(4) 地場産学校給食を入り口に幼稚園も小学校も積極的に食農教育
(5) 連携してここまで高めた小学校の「総合的な学習」と農高の教育力
(6) 生活文化の語り部・農村の高齢者
(7) 教育にとっての家畜の活用
出典 『21世紀の日本を考える』2003年 2月号
 島根県・八雲村は、県都松江市の南に隣接する、都市近郊農村だ。松江市中心部から、わずか10キロメートルの距離にあり、近年、ベッドタウンとしての開発が進む。人口は、7000人余り。過疎県のなかでは、比較的人口が増加傾向にある地域として知られている。
 村の基幹産業は農業ではあるものの、もともと田畑が少ないため、専業農家、大規模農家はほとんどいない。農業生産は、おもに高齢者の手に任されているのが現状だ。

1 地域に根ざした学校給食を

 こんななか、八雲村学校給食センター(村内の幼稚園、小学校、中学校に計830食を実施)では、地場産野菜を利用した学校給食を積極的に進めてきた。
 もともと、昭和49年に、1軒の農家が10キログラムに満たないニンジンを給食センターに持ち込んだことから始まった。口コミで生産者の輪が広がり、しだいに持ち込まれる野菜の品目、量が増加。
 「効率的にできるよう、組織化せんといけんね」ということになり、昭和53年、栄養士の長島美保子さんが中心になって、野菜の購入選定基準を作成した。平成元年には、あらためて「八雲村学校給食用野菜生産グループ」(19名)を結成。出荷方法や規格等についてまとめた規約を施行した。
 「地域に根ざした学校給食を推進したい」と、学校給食センターと地元の生産者たちとのパイプ役をつとめる長島さんは言う。
 長島さんは、生産者たちが心をこめて栽培した野菜を給食に利用することで、子どもたちの心に「郷土愛の芽生え」「農業に対する理解」を育てたいと考える。
 生産者たちの思いも同様だ。子どもたちに安全でおいしい野菜を食べてもらおうと日々努力を重ね、生きがいを持って活動している。
 組織化した頃からは、村からわずかながら助成金が支給されるようになった。生産者たちは、これを活用して、先進地を視察したり、定期的に研修会を開いて野菜の栽培技術を学ぶ。品質の向上、出荷量の確保につとめた結果、今では、年間でおよそ40品目、給食センターで利用する野菜のうちの、およそ70%をまかなうまでになった。

2 畑づくりが縁で始まった生産者と園児たちとの交流

 このような活動を続けるうち、しだいに生産者たちが、学習の場で子どもたちとふれあう機会が増えてきた。

 園児57名が通う八雲幼稚園には、10坪程度の畑「元気っ子農園」がある。10年ほど前、この畑をつくる時、生産者グループは、八雲幼稚園からの依頼で、畑づくりの一連の作業を手伝うことになった。
 園児たちは、ここで、さつまいも、じゃがいも、なす、ピーマン、トマト、スナックエンドウ、かぶなど、季節の野菜を栽培する。畑は園庭の片隅にあるので、いつでも野菜の生長ぶりを観察できる。「トマトが赤くなったよ!」と、すすんで知らせに来る園児もいる。
 収穫した野菜は、たいていみんなで一緒に料理して、食べる。
 「お肉などはこちらで切りますが、4歳さんは皮むき器を使ってじゃがいもの皮なんか上手にむきますし、5歳さんになると、包丁を使って野菜を切ります。カレーの材料にしたり、バター焼きにしたり、炒めたり……。お泊り保育の時は、朝どりした野菜を食べることもありますよ。やっぱり自分が栽培した野菜だと、子どもたちの興味は全然違います。大嫌いなピーマンも口に入れることができるんですから」(須山雅美先生)
 この「元気っ子農園」の畑づくりが縁になり、生産者グループと園児たちとの交流が始まった。八雲幼稚園では、年に1度、「ぐつぐつもりもりパーティ」を開くが、食べ物に感謝をするという気持ちをこめて、日々の給食用の野菜をつくってくれている生産者たちをパーティに招くのだ。
 当日、生産者たちは、幼稚園に自分の得意とする野菜を持っていき、野菜について話をする。たとえば、同じかぶでも、いろんな種類があることを教えたり、野菜の苗を見せて「これはなんの苗だかわかる?」と質問し、園児たちとの交流を楽しむ。
 もちろん、パーティでいただく食事は、「元気っ子農園」でとれた野菜を使って園児たちが料理したもの。ちなみに、昨年暮に行なわれたパーティのメニューは、豚汁、わかめごはん、そしてデザートだった(豚汁に使った大根、かぶが「元気っ子農園」でとれた野菜)。
 

3 地場産学校給食は地域を知る教材

 いっぽう、八雲村立八雲小学校(生徒数439名)では、昨年度、3年生の「総合的な学習の時間」のテーマに、そのものずばり、「学校給食」を取り上げた。
「八雲村の学校給食は、地元の野菜を取り入れた特徴的な給食なので、地域のことや、給食に関わる人たちの思いを知るには、ちょうどいい題材だと思いました」と、担任だった高橋悦子さんは言う。
 給食センターは、学校のすぐ隣にあったので、子どもたちも身近に感じていたこと(昨年9月、400メートルほど離れた場所に新築移転)、また、日頃から家庭科や給食の時間を通じて、子どもたちの食教育に関わる長島さんに、協力を求めやすかったことなども「学校給食」を選んだ理由だ。
 こうしてスタートしたのが、「給食探偵団」。1学期は、長島さん、調理員さん、そして生産者の方々のインタビューから始まった。
 大まかに「学校給食」というものをつかんだ後、子どもたちは、給食から連想したイメージマップをつくり、そのなかから自分が興味のある課題を見つけた。「給食センターの人」「残った給食」「米・パン」「野菜」「肉・魚」など、いくつかのグループに分かれて、調べ学習を進めていった。
 
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