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(1) 農山村フィールドワーク体験による農業・環境学習
(2) 触覚に注目したブルーベリーの目隠し収穫体験プログラム
(3) 食農教育から生まれる教育的効果に関する
(4) 地場産学校給食を入り口に幼稚園も小学校も積極的に食農教育
(5) 連携してここまで高めた小学校の「総合的な学習」と農高の教育力
(6) 生活文化の語り部・農村の高齢者
(7) 教育にとっての家畜の活用
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 小松崎 将一(茨城大学農学部附属農場)
協力 日本農業教育学会

1 農村に対する関心の高まり

 農村地域において、自然、文化、人々との交流を楽しみながら滞在するグリーンツーリズムが注目されて久しい。このような農家滞在による交流では、農村の自然そのものを楽しむことに加えて、農業体験がもう一方の柱であることが多い。このことは高度情報化社会の進展により、われわれの生活のなかに実体験の希薄ないわゆるバーチャルな部分が増大している背景から、「食」という人間生存の根幹に関わる部分への関心があることを表しているのではないかと考えられている(文献4)。
 一方で、衰退する農村にとって都市住民が農村で余暇活動を行うことには、一種のビジネスチャンスの到来としての期待もみられる。農水省(平成13年12月)の「グリーンツーリズムの展開方向」によると、観光による波及効果や地域特産物の販路拡大など地域経済の活性化に期待を寄せる市町村も多い。この点で、いわゆるグリーンツーリズムは単なる農村体験の枠から逸脱し幅広い展開もみられている。
 しかし、このような都市住民が農村を求める背景には、農業に対する関心、興味の高まりがその根幹にあることに異論はない。このような農村体験の機運の高まりをより持続・発展させていくには、農村体験によっていったい何をどう体験させるとよいのか、という点について十分に検討していく必要がある。ここでは、農山村フィールドワーク体験によって、都市住民、大学生および受入れ農家がどのような感想をもったのか分析し、農村体験の意義について言及したい。

2 鮫川村の農業概要と受入れ農家

 ここで対象とした福島県鮫川村は、阿武隈山系南部に位置する農山村である。標高250~600mに集落があり、林野率76%、農家率73%であり、ヤマセの影響による冷害の被害が大きい地域である。そして、1.若年層を中心とした人口減少による農業担い手の不足、2.高い農業就業率と稲作中心の経営、3.稲・工芸作物などの作付けの減少と耕作放棄地の増大、4.零細な作付け規模と低収益経営など、日本の山間地農業のもつ問題点を象徴的にもつ地域である(文献1)。
 このような地域的背景の中で、都市住民および大学生などの受入れ農家は、成苗疎植および深水による冷害回避、安定収量確保を基本とした、減農薬・減化学肥料栽培を実施している。また、この農家は、肉牛の繁殖・肥育一貫経営と水稲作との複合経営であり、作物栽培、畜産経営および山林管理などの地域資源管理活動を密接に結びつけた経営を行っている。すなわち、水田から産出される稲わらをすべて乾燥・貯蔵し、肉牛への粗飼料として用いるほか、山間地水田の特徴である広大な水田畦畔の法面などの下草をすべて繁殖牛に有効に給餌している。また、野菜作や畑作の残渣なども同様に活用している。さらに、家畜舎からの排泄物を堆肥化し、全量を耕地へ還元し、土壌有機物の涵養に努めている。
 このような受入れ農家の地域資源管理は、その生活全般に認められ、山林、家庭菜園、畑、水田、畜舎、野草地などが第1図のように密接に関連している。
図1 受け入れ農家に見る農山村地域資源の相互連関

3 フィールドワーク体験の枠組み

 東京都心部に居住する青年層を中心に、農村体験グループ「コメけーコトはいいじゃない会」が平成4年に結成され、受入れ農家の水田を借用し、水管理以外の水稲作一切を会員が行っている。当会は、当時、コメの自由化をめぐる国民的議論の広がりの中で、個人の職業、社会的背景および思想に関わらず、われわれの生存に欠かすことができない「コメ」というものを農村体験によって真剣に考えていこうという趣旨で設立された。当会は、(財)自治体問題研究所(当時)、武蔵大学(当時)および茨城大学の職員・学生を中心に結成され、現在(平成14年度)では会員約30名である。この事業は、鮫川村役場および茨城大学生涯学習センターなどから補助も一部受けており、平成14年まで10年間継続して実施している。
 また、平成9年度から、茨城大学農学部での教養科目として「主題別ゼミナール」にとりあげ、年間25〜30名の学生が農村体験を実施している。そこでは、農家での農業体験に加えて、農村ゼミと称して、農作業が終了したあと夕食時に、農村生活や農業技術に関わるさまざまな点について議論する場を設けている。この授業も年間の受講者が20名程度である。現在までに?が受講している。
 農村体験は、それぞれの時期に応じたフィールドワーク体験と農村生活体験を行うこととし、具体的には、1.低農薬水稲栽培、2.肉牛管理、3.畑作・家庭菜園管理、4.地域色豊かな食体験、および5.夕食を囲んでの交流会を2日間実施している。これらのフィールドワーク体験と交流会は、稲作栽培期間中月1回の割合で実施しており、毎回5〜15名前後の参加がある。現在までにこの体験に参加した延べ人数は約500人にのぼる。これらの体験から、冷害など厳しい自然環境とそれに対峙する農業という側面、山林など地域の自然資源を有効に活用する側面、および自然と共生して生きる生活など、さまざまな面から農村・農業に対する理解を得ることを期待している。
 この農家での体験終了後、すべての参加者は簡単な感想をノートに記している。また、受入れ農家もそのつど感想を記載している。
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