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(1) 栽培方法を科学的に考えさせる栽培マル秘作戦の実践
(2) 栽培体験の教育的効果に関する
(3) 地域の教育力を取り入れた栽培学習
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 會田 充志(埼玉県入間市立金子中学校)
石田 康幸(埼玉大学教育学部)
協力 日本農業教育学会

1 中学校での栽培活動

 以前から栽培体験には教育的効果があると言われてきた。学習指導要領などでは、幼稚園や小学校で「環境」や「生活」などの教科で情操的効果を狙った栽培活動の展開が期待されている(文献1、2)。また、「特別活動」や「総合的な学習の時間」で菊の栽培や稲作りを実施し、命の大切さや協力し合う心を育てることを目標とする学校も少なくない。
 それに対し中学校では、栽培体験は主に「技術・家庭科」で扱われ、技術的な側面が強調されている(文献3)。その効果として、中学校で栽培を履修した大学生に対しての調査では、栽培に関する内容は、「生活に役立つ」と捉えられており(文献4)、栽培は「技術・家庭科」の目標でもある「生活に必要な基礎的な技術」を養成していると言えるだろう(文献3)。
 しかし、実際のところ「技術・家庭科」では栽培に関する学習は少ない。その理由として、授業時数、設備、指導力、生徒の興味・関心による制約があげられる(文献5)。とはいえ、中学校でも栽培体験による情操的効果や勤労観を目標に田植え体験などの体験学習に取り組む学校も少なからずある。
 そこで、中学生を対象に栽培体験を主体とした授業を行ったところ、栽培体験が生徒の意識に与える影響に関して若干の知見が得られたので、その概要を報告する。

2 栽培の教育的効果

 向山(文献6)は栽培による教育的効果として、計画性、科学性、技術性、社会性、やさしさ・情操性、自主性・責任感・集団性、地域性を挙げている。また情操面では、学校で栽培活動をすることにより子どもたちの破壊活動が減った例(文献7)、「花はきれいだけど、育てるのはいやだ」と発言していた大学生が、いつの間にか毎日植物の顔を見ないと気が鎮まらなくなった例(文献8)などが報告されている。また、中学生に対する効果として、「収穫の喜びや作物を育てる楽しさを体験できた」「自然や環境への興味・関心が育成された」などの生徒の反応に関する報告がある(注1)。
 このことは、現在のわが国で重要視される心の教育に通じる部分が多く、今回の改訂でもこれらの課題に適切に対応していくことが求められている(文献1〜3)。
 中学校で「栽培」を扱う技術・家庭科では、知識・技能の習得が目標となっているが、指導者によっては情操的側面を重要視する場合も多い。教員養成課程に所属する大学生に対する調査でも、情操的側面を伝えたいという意見が多い(文献9)。また、技術・家庭科の教科書も、福祉や医療における園芸の活用(文献10)について取り上げるようにもなってきており、栽培のさまざまな教育的効果が期待されている。

3 調査方法と授業形態

(1)調査対象と日時

 平成14年4月に埼玉県内のA中学校第3学年で、選択技術(注2)を履修した生徒の男子7名、女子6名、合計13名を対象に、栽培経験および意識について質問紙法による事前調査を実施した。
また、同年7月および12月に栽培の授業を受けての意識の変化を把握するために同じ方法で事後調査を実施した。

(2)調査項目

 事前調査では、栽培経験については、1)栽培の経験、2)初めて経験した学年、3)経験した環境、4)初めて栽培した作物、5)現在、個人的に栽培を行っているか、およびその環境、についての5項目を、栽培に対する意識については、1)植物を注意してみるようにしている、2)植物を育てることはおもしろい、3)植物を育ててみたい、についての3項目をそれぞれ設定した。また後者については、「思う」「やや思う」「あまり思わない」「思わない」の4段階の尺度を設定し、それぞれを順に4、3、2、1点として得点化を試みた。
 事後調査では、栽培体験(経験)による意識の変化に着目し、1)植物を注意してみるようにしている、2)栽培は楽しい、3)植物を育てることはおもしろい、4)花や野菜を育ててみようと思った、5)植物を育てることは役に立つ、6)植物を大事にするようになった、7)誰かに栽培を教えたいと思う、の7項目を設定した。また各項目については、事前調査と同様に得点化を試みた。なお、3)および7)は自由記述も併用し、その理由について回答を求めた。

(3)授業形態と内容

 授業は週1回の1単位時間(50分)をあて、学習内容は授業前半を栽培や作物に関する説明にあて、後半に実習活動を行う形式で行った。
 A期として、4月から7月までの期間、授業のガイダンスを含む10単位時間実施した。学習内容は、中学校敷地内には栽培活動に活用する用地がないため、栽培用地の確保と畑の土を入れる作業から始まった。その後「夏野菜の栽培」として、播種、定植、手入れ、「稲の栽培」として、プラスチック製のバケツを利用した古代米の播種、定植を行った。
 B期として、9月から12月までの期間に9単位時間実施した。学習内容はA期の継続を主とし、「夏野菜の収穫」として、食味と作物の片付け、「稲の栽培」として、稲刈り、籾殻取りに取り組んだ。また、新たな作物として「大根の栽培」を行い、播種から収穫まで、さらに食味試験も行った。
 
図1 「授業風景」
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