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(1) 小学校での栽培学習の実践とその教育内容
(2) 学外の稲作体験による児童の自然に対する感情・認識の変化
(3) 小学校の発達段階に応じた農業体験学習の効果
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 佐々木 壽(宮城県農業高等学校)
協力 日本農業教育学会

1 研究課題の契機

 学技教育法の改正により、その第18条2で社会奉仕体験活動などの「体験学習活動」が制度化された。さらに小・中学校ではすでに「総合的な学習の時間」がはじまっているが、その学習内容として農業学習への関心が高まっている。現任校では従来より学校農場を中心に地域との連携教育を進めてきたが、最近では小学校からの農場見学や体験活動への依頼が多くなってきた。
 これまで現任校において、農場長の立場で農業教育活性化に向けた取組を実践してきたが、小学校の児童に対する農業体験学習には、主に次のような教育効果が期待できるものと考えている。
食と農並びに都会の子どもと農村の子どもの農業に対するイメージが次第に乖離する現状において、将来を担う児童・生徒が農業体験を通して、食の重要性を認識するとともに、生命・自然・環境などを大切にする心を培える。(食農教育・環境教青・自然教育・緑化教育)
農業体験字習を通して、地域の暮らしや農業の役割などが体得できる。〔ふるさと教育〕
小学校との相互の連携のもとで異年齢との交流体験や、児童・生徒が様々な体験を通じて協調性・社会性や自立する精神を養うことができる。
小学技の児童・生徒のみならず、保護者や教員を含めた交流体験により、農業高校への一層の理解を深めることができる。
農業学習を実践する教場である学校農場は、地域社会のなかで次のような機能と役割をもっている。すなわち、安全で新鮮な農産物の提供、環境や農業を理解してもらうための地域住民参加の学習、地域住民のための農業体験学習の場、農薬や農村の文化や社会的便益機能の教材化の場、などであるが、これらを義務教育における農業体験学習に活かすことにより、地域との一層の連携教育をめざすことができる。
農業高校生が専門学習の成果を直接、小学校の児童に教えることによって、高校生自身が専門分野のスキルの向上とともに、一層の意欲・興味・関心、思考力や表現力が高まる。
 そこで、小学校児童を対象とした農業体験学習活動の教育効果を高めるためには、各発達段階(ライフステージ)別による農業体験学習項目の精選と学習指導や、小学校における「食」「農」と「環境」「農村文化」学習の進め方などの研究が急務となってくる。さらに、具体的な農業体験学習としては、栽培・飼育の基礎的な体験、農産物の加工に関する基礎的な体験、生活に潤いをもたらす体験、農業を支える技術に関する基礎的な体験学習などが考えられる。そのためには、小学校における農業体験学習のための基礎整備や小学校教員の農業技術研修、農業体験学習の成果及び指導評価と自己評価も必要である。幸い、現任校は平成13〜14年度に文部科学省より専門高校と小・中学校との連携推進事業校とて地域指定を受けた。筆者はその推進とまとめ役として教育を実践したが、本研究ではその骨子を要約し、地元の二校(名取市立下増田小学技、名取市立閑上小学校)の協力をいただいて実践した農業体験学習の結果について報告する。

2 具体的な課題の目標

このような本研究の趣旨に則り、児置の成長過程を踏まえて小学技の段階や各字年に応じたものになるよう、具体的な目標を下記のように設定した。児童への直接の学習指導は高校生が行った。
小学技低学年では、動物や家畜、作物や野菜・果物などにふれたり、簡単な食品の加工を体験することにより生き物と暮らしとのかかわりあいや、食べ物やいのちの大切さに気づかせる。
小学校中・高学年では、作物や家畜にふれて観察したり、加工品などのものづくりを通して、日々の暮らしや身近な環境、自然や農業などについて気づかせる。さらに、農業体験学習の過程で自分とのかかわりを明確にしながら、仲間と一緒に主体的に取り組ませる。
農業高校生と交流しながら、小学生には社会に目を向けさせ、多くの人々とかかわりあいのなかで、明るくあいさつしたり、他を思いやる心を培わせ、中学生には、高校生や級友と一緒の協同での体験活動のなかで、自身の役割や責任を担いつつ、共に成就感を味わせる。また、教科などでの学習をむすびつけながら、食べ物や農業と環境や自然、ふるさとを観る目を養わせる。
高学年では、食の重要性や地域の農業・環境・地域の文化などについてよく考え、自ら学習に励ませ、動植物とふれあったり、ものづくりの過程で、自身の内面を表現させる。さらに、個性や感性を高めながら、生命の尊さを理解させ、感動する心や人を思いやる心を培わせる。
高校生白身が、専門に学習している内容について、反復・継続して小学校の児童生徒に指導援助することにより、学習内容の一層の習熟と理解を深めさせる。また.リーダーシップを発揮し、個性と感性を高めさせながら、人に尽くしたり、社会に役立つこと、貢献すること、やりがいなどの意義を体得させて、自身がかけがえのない存在であることを実感させる。
小学校と農業高校の教職員との相互理解と協力態勢を深め、農業教育を理解してもらう。
農業教材を活用し、地域に開かれた学校づくりの一端として連携学習を実臨する。

3 農業高校生が指導支援して実施した小学校児童の農業体験学習の概要

 本年度、宮城県農業高校の生徒が指導支援した農業体験学習は以下のようである。
小学校におけるサツマイモ畑の整備に関する体験学習(5月29日)
 名取市立閑上小学校校庭側の野菜園を会場に名取市立閑上小学校教職員を対象として、本校農業関係職員が野菜畑の整備方法と活用、野菜畑の整備等について技術指導を行った。

「どんな動物たちがいるのかな?」(6月5日、9月4日)
 本校農場の畜産部門・ふれあい農園部門において、下増田小学校1学年21名と第2学年20名対象に、本校畜産専攻生20名が校内のいろいろな動物の紹介、動物の観察と給餌、動物のスケッチ等について指導し、児童との交流を深めた。

「おいしいメロンをつくってみよう」(5月30日、6月20日、7月15日)
 本校の施設野菜園芸温室で下増田小学校3学年15名を対象に、園芸科2年施設園芸班14名が、メロンの撒種と受粉、栽培管理、果実と肥大のしくみ、収穫と品質などについて指導した。

「ふるさとの貴重な海浜植物、私たちの地域にあるハマボウフウを学習しよう」
 地域の遺伝資源を素材にした農業体験学習として、5月29日と10月10日に、本校や小学校で下増田小学校4学年20名を対象として、本校園芸科2年バイオ類型班8名が、浜防風の生態、撒種と栽培菅理、収穫と調製・調理・試食及び利用と、環境保全について実地に指導した。

「リンゴ博士になろう」(6月12日、6月13日、12月3日、12月5日)
 本校果樹園において、閑上小学技5学年80名を対象として、園芸科3年果樹専攻班3名がリンゴの果実の付き方、摘果、品種別樹木調べ、リンゴのスケッチと観察、収穫と品質調査、試食などについて指導し、年間を通し児童たちに同じ試験区のリンゴを継続して取り組ませた。

「柚木橋周辺に花壇をつくろう」(6月27日)
 下増田小学校に隣接する柚木橋花壇予定地で、下増田小学校5学年20名を対象に、本校園芸科3年造園専攻班20名が、花壇づくりの基礎、花壇の種類、作業の方法、除草・表土の耕転・整地などを指導した。児童たちは高校生と一緒の花壇づくりは初めての体験であり支流を深めた。

「藍染めでオリジナルハンカチをつくろう」(7月4日、11月21日)
 この学習は小学校2校で実施した。対象は、閑上小学校3学年82名と下増田小学校6学年17名である。いずれも本校生活科3年生活技術専攻班4名が、身近な暮らしの中での草木染め、日本の伝統的な染色としての藍染め、藍染め液の作製、藍のしぼり染めなどについて指導した。

「イネについて調べてみよう」(7月4日)
 下増岡小学校が農家から借用している水田で、小学校4学年20名を対象に、本校農業科3年作物専攻班6名が日本の稲作とイネの特徴、イネの生育とその調べ方などについて指導した。

「アイスクリームをつくって食べよう」(9月6日)
 本校食品製造実習室を会場として下増田小学技6学年11名を対象に、本校食品化学科3年食品製造専攻班11名がアイスクリームの原科、製造工程、配合例、製造、試食などを指導した。

「おいしいうどんをつくろう」(10月11日、11月1日、11月I5日)
 本校食品製造実習室を会場として開上小学校3学年82名と、下増田小学校1〜2学年41名を対象に、本校食品化学科3年食品製造専攻班11名が、うどんの原料や製造工程、うどんの製造の実際、そして児童がつくったうどんの試食などについて指導した。
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