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(1) 小学校での栽培学習の実践とその教育内容
(2) 学外の稲作体験による児童の自然に対する感情・認識の変化
(3) 小学校の発達段階に応じた農業体験学習の効果
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 小林菜々恵(株式会社星野リゾートピッキオ)
三島 孔明(千葉大学園芸学部)
藤井英二郎(千葉大学園芸学部)
協力 日本農業教育学会

1 研究の背景と目的

 近年、植物を育てることによるさまざまな効果が期待され、学校などでも植物栽培活動が数多く行われている。このような植物や自然に触れることによる効果に関連した研究には、子どものころの自然体験とその後の価値観との関係に関するもの(文献1)や、自然とのふれあいと環境配慮意識との関係を調べたもの(文献2)、自然体験と道徳観との関係について調べたもの(文献3)などがある。また、学校教育での栽培学習については、その方法や実態を扱った研究(文献4,5,6)がさまざまある。
 植物を育てることによる教育的な効果を期待するうえで、植物を育てる活動を行っている子どもの詳細な様子や、活動を通して自然などに対して関心をもつ過程、感情や意識の変化を把握することは重要である。しかし、今までの研究ではこのようなことに関する把握は多くなく、明らかにはされていない部分が多い。
 そこで本研究では、植物を育てる体験によって、身近な自然に対する感情や認識が、どのように変化するのかを明らかにすることを目的とした。

2 調査方法

 調査対象者は、千葉県松戸市主催の農作業体験教室「こめっこクラブ」に参加した小学校4〜6年生21名(男子5名、女子16名)とした。「こめっこクラブ」は、平成5年から松戸市内の自然尊重型総合公園「21世紀の森と広場」の田んぼで実施されている米作り体験教室で、5月から11月にかけて、田植えから餅つきまでを6回の連続講座として実施している(文献7、8)。
 調査は、農作業体験前の5月と体験後の11月の2回、および各回の農作業体験後(6回)に質問紙によって行った。また、各回の農作業体験中の様子をビデオカメラで撮影し、子どもの言葉(発話)を記録して分析した。

3 子どもの言葉・絵に見る変化

(1)農作業体験中の言葉に見られる変化

 農作業体験中の発話のうち、イネ、土、ムシ(昆虫や小動物)、草花(イネ以外の植物)に関する発話を、その内容から6つのカテゴリー(表1)に分類し、各回の出現回数を整理した(表2)。その結果、「感嘆」は1回目に、「感覚」と「感情」が1、2回目に多く見られ、その後は少なくなっているのに対し、「観察」と「愛情」は2回目以降に多く見られた。つまり、「感嘆」「感覚」「感情」などが初めに多くあらわれ、その後減少したのに対し、「観察」「愛情」は2回目以降に多くなる傾向がある。
  このことから、子どもたちは、はじめは見たり触ったりなどの対象物とのかかわりから、やがて観察したり愛情をもつなどの、より積極的、自発的なかかわりになることが伺える。
表1 発話のカテゴリーと例
カテゴリー 発話の例
感嘆 「うわぁー。」「いやー。」「きゃー。」
感覚 「ふわふわ。」「ぬるぬる。」「葉っぱがちくちくした。」
感情 「気持ちいい。」「好き。」「嫌い。」「かわいいバッタがいる。」
観察 「めしべとおしべ。」「葉っぱの形が違う。」
遊ぶ 「稲の茎、ストローになる。」「この草ほうきみたい。」
愛情 「かわいそう。」「助けてあげよう。」
表2 各カテゴリーの発話数の推移
  1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
感嘆 8 1   2 1 2
感覚 44 16   1    
感情 22 14 1 4 4 4
観察 10 60 36 50 30 33
遊ぶ 4 6 1 4 2 10
愛情   6 2 10 5 3
 また、カテゴリーごとにイネや土などの対象が占める割合を見ると(図1)、ムシは「観察」「愛情」「遊ぶ」「感情」「感嘆」で、他の対象よりも比較的高い割合を占めている。発話の数も他の対象物に比べて多く(図2)、中でも「観察」に関する発話は非常に多い。これらのことから、子どもたちのムシに対する関心の高さが伺え、ムシが命ある動くものであるということが、子どもたちの目や興味を引きやすいものと考えられる。
 イネに対しては、「観察」「愛情」で、ムシに次いで比較的高い割合になっている(図1)。このことは、子どもたちがイネの成長の様子に興味を示し、自分が育てたという意識が生まれて愛情のような思いを抱くようになったことを伺わせる。
 土に対しては、「感嘆」「感覚」「感情」で比較的高い割合を占めている(図1)。これは、1、2回目の体験時に土の中に素足で入り、直接土を感じたために、子どもたちに驚きや感動を与えたと考えられる。また、素足で田んぼに入る前には、「気持ち悪い」「入りたくない」などの発話が見られたが、素足で作業してからは「気持ちいい」「好き」などの発話が見られたことからも、触覚を通した直接体験により、ふだん捉えにくいことに気づいたことが伺える。
図1 各カテゴリーにおける各対象に対する発話の割合
図2 対象ごとの発話数
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