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勤労体験活動と体験活動を融合

 富士市立吉原第三中学校の、勤労体験活動と交流体験活動を融合させたユニークな体験活動である。静岡県富士市の中学2年生が長野県豊丘村の農家にホームステイし、リンゴの摘花作業を中心とした農作業に従事するとともに、地域の様々な人たちと幅広く交流する体験である。また、リンゴの収穫期を向かえる11月には、親子リンゴ収穫体験を実施するなど、地域ぐるみ、家族ぐるみの交流に発展している。

 勤労と交流を融合し、事前・事後の学習や指導を充実させ、活動を多彩に展開しているところに成果をあげているポイントがあると感じる。地域をまたいだ交流を通じて、同じ中学生同士が率直に語り合ったり、協同作業をしたりする工夫も考えられる。

 また、体験後に自分たちの住む地域をあらためて見つめ直し、地域の伝統と文化の重みを再認識させる学習に発展させることも必要であると感じた。

取材しての評価

○昭和60年度から23年間継続し、同校の教育活動の柱として定着している。
○地域や保護者の体験学習に寄せる期待が大きく、PTAや地域を含めた交流に発展している。
○PTAのOBやPTA会員で「豊友会」を組織し、豊丘村では、受入れ農家を中心に「ふじ友の会」を組織し、勤労体験学習を側面から支援している。
○校内組織として、校務分掌に豊丘担当を位置付け、豊丘村との交流の推進を図っている。窓口は教頭が担当し、具体的な推進は豊丘担当教員と2年学年団を中心に、 PTAの豊丘担当部とも連携を図りながら事業の計画立案にあたっている。
○長年継続しているのは、農家の方々を含め、多くの人々の支えがあったからであり、このことに感謝し、現地や地元の期待により応えようとする学校の姿勢に好感が持てる。
○学校側と受入れ先で行う反省会で出された様々な意見や指摘を、建設的に受け止め、今後の教育活動に生かそうと努力する学校の姿勢に好感が持てる。
○受入れ農家の高齢化問題が課題になっている。また、作業に習熟していない生徒が作業を行うため、品質を低下させてしまう問題もある。このような状況において、農家にとって一番忙しい時期に勤労体験や収穫体験の受入れをお願いしている。
○農家への感謝の気持ちを忘れず、関係機関との連携を緊密に行う努力を惜しまない学校の姿勢に好感が持てる。

(服部 修 記)

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問い合わせ先:
富士市立吉原第三中学校
1年3学級、2年3学級、3年3学級
生徒数276名 教職員19名
〒417-0847 静岡県富士市比奈2126
電話 0545-34-0868  FAX 0545-34-0869

 

農家の人たちへのお礼の手紙

 「農家の人といっしょに働いて、すごく暑くて疲れながらも作業をしました。その作業が終わって僕はものすごい達成感を感じました。僕は、これが働く喜びなのかなと思いました」

 「中心花を残したままその他の花をとることは、そう簡単ではありませんでした。やっているうちに爪や目が疲れました。しかし、二日目、三日目の作業では機械を操作し、農業に対する喜びが分かってきました。豊丘の自然、天竜川が流れ、中央アルプスが連なる山脈を見て、富士では見ることのできない自然なので、とても美しいと感じました」

 これらは静岡県の富士市立吉原第三中学校の2年生たちがファームステイでお世話になった長野県下伊那郡豊丘村の農家の方々に書いた手紙の抜粋である。どの手紙も感動がすなおに言葉になっている。 「日々寒くなっていく、そんな季節になりました」 「気温が下がり始め、肌寒い季節となってきました」など自分の言葉でしっかりと時候のあいさつが書かれている点も印象的だ。

農家民泊で「働くこと」を体験

 “吉原三”が勤労体験活動と交流体験活動を融合させた2泊3日のファームステイをスタートさせたのは、昭和60年。今から23年前のことである。目的は「勤労を通して子どもたちの心を育てること」。実をいうと、学校が少し荒れていたのだ。当時はキャンプなどの野外活動が注目されていたが、吉原三中の教師たちは自然体験だけでなく勤労体験にもこだわった。

 生徒の保護者のほとんどは会社勤め。地元の製紙・パルプ関係の会社に勤めている者が多い。吉原三中はJR東海道本線「吉原」駅を起点とする岳南鉄道の「比奈」駅から徒歩16〜17分の高台にあるが、比奈駅に降り立つと、もくもくと煙がたなびる製紙工場の大小の煙突が見えた。ちなみに富士市の特産品のひとつはトイレットペーパーである。

 勤め人の子どもは親が働く姿を見る機会が少ない。親の仕事を手伝うこともない。だから、教師たちは生徒たちに「働くこと」を体験させたかったのだろう。

 生徒に自然体験と勤労体験を同時に味わせたい―吉原三中では生徒を受け入れてくれる場を探し始めた。勤労体験学習がスタートする前年の秋、鳥居孝雄教頭(当時)は「農業体験をさせてくれるところはないでしょうか」と長野の教育委員会に電話で問い合わせをした。その時、たまたま居合わせた豊丘村の教育委員長が「それはおもしろい」と関心を示してくれた。そして、その年の12月、豊丘村の教育長と農協の組合長が吉原三中を訪れた。これが吉原三中の豊丘勤労体験学習のはじまりである。

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勤労体験学習

「2年生になったら豊丘だよ」

 当初は農家民泊だけでなく馬籠や妻籠など、いわゆる観光地にも足を延ばしたが、徐々に農村体験の比重が高くなり、現在のようなリンゴの摘花作業を中心とした2泊3日の勤労体験学習に落ち着いた。教師の側で「(観光より農家との交流のほうが)生徒が生き生きしている」「生徒が確実に変わった」という実感がもてたからである。教師と生徒の信頼感もさることながら、生徒と農家の間には信頼関係が生まれていた。

 平成7年には当初からこの体験学習を支えてくれたPTAの会員やOBたちが「豊友会」を発足。年に何度も豊丘村を訪れ、村の祭などにも参加し、交流はより深まった(今年度、豊友会は会員の高齢化などのため発展的解消。近く再結成される予定)。また、豊丘村でも受入れ農家を中心に富士市民との交流を目的とした「ふじ友の会」を組織。この活動を支援してくれている。

 なお、受入れ農家などの斡旋は「りんごの木オーナー制」の募集受付の代行などを実施している特定非営利活動法人交流センター「だいち」が豊丘村農協と連携して行っている。農家への謝礼は3日間で1人6000円だという。

 「最近では、地域では『三中はリンゴだね』、校内では『2年生になったら、豊丘だよ』といわれるようになっています」と、豊丘担当の松野英子教諭。この活動は来年、24年目を迎えるが、すでに「親子2代で参加した」という者も見られるという。(続きを読む

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