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●田んぼが育む豊かな農村環境を学ぶ「田んぼの楽校」
 (静岡県袋井市・太田営農協議会 長島康男)


田植え

田んぼの生き物調査

分からない生き物を調べました

待望の収穫

 静岡県袋井市の太田営農協議会では、農業用水施設を含む農業・農村の多面的機能を生かした地域づくりの一環として、次世代をになう子どもたちへの食農教育に力を入れています。ここ2年間、農協青年部、老人会などと連携しながら、地元の今井小学校で、3年生(大豆づくり)と5年生(イネづくり)が「総合的な学習」として取り組む農業体験学習を支援してきました。5年生のイネづくりでは、田んぼでの作業のほかに、用水での水質調査や生きもの調査なども取り入れ、土づくりや水環境、田んぼ周辺の環境などについて調べながら、多様な作物や生きものが育つ豊かな農村環境を作っているのが、他でもない田んぼや農業用水であることを学んでもらいました。

 当初、子どもたちは学校行事や塾通いなどにより、田んぼ周りの生きものに触れる機会が減っているため、田んぼの作業や生きものには関心のない子が多いと思っていましたが、ふたを開けてみると予想以上の関心を示し、一つ一つの作業に楽しく取り組む姿に驚きを感じるほどでした。

■田んぼの先生と共に体験するイネづくりと生きもの調査
 「田んぼの楽校」は小学校に隣接する田んぼ10aが舞台です。校長先生は、稲づくり45年というベテラン農家の地元のおじいちゃん。直接の指導を行う担当の先生には、地元のおばあちゃんも加わります。環境教育も目的とした総合的な学習であるため、子供たちの要望も入れて、出来る限り環境に配慮した栽培方法を取り入れました。

 イネづくりの初日、まずは営農協議会会長のイネづくりの話から始まりました。そのあと田んぼに水を供給する農業用水の役割について、用水の維持管理を行う磐田用水東部土地改良区の職員から話があり、実際に用水をたどって幹線用水路から水を取り入れる取水バルブも確認しました。それが終わって、最初の農作業は元肥振りと田んぼへの用水からの取水。田んぼに水がたまり始めると、はじめは田んぼに入るのを嫌がっていた子供たちも、田んぼの中でどろんこ遊びに興じ始めました。

 田んぼに水が入り終わると、次は田んぼの代かき。これは専業農家の大型トラクターを使うので、あっという間に完了。そしていよいよ稲づくり最大のイベントである田植えが始まりました。作付けしたのはうるち米ともち米で、それぞれ5aずつ。苗を植える際に双方の苗が混ざらないよう細心の注意を払いました。最初は泥の中に裸足で入ることをためらっていた子も、ヌルヌルとした今まで味わったことのないような代かきした泥の感触に大喜びで動き回り、中には足が泥にもぐって動けなくなり、尻もちをつく子も。そうかと思うと、今度はなんと先生役のおばあちゃんまでつられて尻もちをつく場面も。皆から大歓声が沸き起こり、そんなこんなで楽しく田植えが終了しました。

 その後も「田んぼの楽校」では、イネの成長にあわせて追肥や草取りなどの作業を続け、あわせて田んぼをめぐる生態系を知ってもらうために、夏休み前には、田んぼ周辺の生きもの調査も実施。田んぼや畦、用水などを注意深く探してみると、カエルやドジョウ、イモリなど様々な生きものが見つかりました。種類が特定できないものについては図鑑で調べたりして、田んぼは生物学習の場に早変わり。子どもたちは一様に田んぼ周辺の環境が育んでいる生きものの多さに驚き、生きもの調査は田んぼがある農村環境の豊かさを子どもたちに感じ取らせるものとなりました。

■地域にとっても大きな財産になる「田んぼの楽校」の取り組み
 田んぼが実りを迎える10月になると、待ちに待ったイネ刈り。校長先生が前日から刈ったイネを干すためのハズ(ハザ)を準備してくれました。最近では農家さえも鎌を持つことが少なくなっている中で、当然子どもたちも使い方を知りません。まずは、校長先生から鎌の使い方の指導。あわせて、束ねたワラをしばるスガイづくりも教えてもらいました。田植えよりも重労働であったイネ刈り。しかし、ハズに掛けきれないほどの豊作に、作業の辛さも忘れて一同大喜び。ハズ掛けをして天日乾燥させた後で脱穀してみると、うるち米・もち米合わせて8俵ほどの収穫がありました。

 田んぼでの作業も終わり、いよいよ「田んぼの楽校」を締めくくる収穫祭。「田んぼの楽校」をバックアップしてくれた農家や保護者も招いて、田んぼの周りで餅つきを行い、おにぎりや豚汁など食する楽しいイベントとなりました。とりわけ、前年仕込んだ味噌を使って作った豚汁は味わい深いもので、参加者全員に好評でした。

 収穫祭も終わり一段落した後、「田んぼの楽校」では、田んぼから得られるもう一つの贈り物であるワラを使って、しめ縄づくりにもチャレンジしました。しめ縄づくりの先生もやはり「田んぼの楽校」の校長先生。この日のために準備してくれていたワラと道具を体育館に持ち込んで、手を取りながら指導してくれました。子どもたちは慣れない手つきでしめ縄を編み、一人一人が個性的なしめ縄を編み上げました。初挑戦にしては上々の出来栄えに、お互いに作ったものを見せ合いながら喜び合う子どもたち。皆の顔が輝いて見えました。

 お米を育て、生きものを観察し、最後には新年を迎えるための伝統文化であるしめ縄づくりまで体験し、「田んぼの楽校」は子どもたちに地域の農業や文化に目を向ける貴重な機会になりました。また、「田んぼの楽校」の取り組みは地域の人たちの温かい支援があってこそですが、毎回の体験が楽しい時間として子どもたちに感動を与えられたことは、支援する側である地域にとっても大きな財産になるものと思います。一年間を通して農業体験を行い、様々な形で収穫の喜びを知った子どもたちが、将来とも何らかの形で農業に関わってくれることを期待しています。

<関連情報>

  • 磐田用水東部土地改良区
  • 田んぼの学校

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