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●ファームインさぎ山 萩原知美(埼玉県)

田舎暮らし体験「かあちゃん塾」

(1)田舎暮らし体験「かあちゃん塾・ファームインさぎ山」の誕生
 平成8年、バブル経済崩壊後、植木生産農家の我が家も植木を作っても売れない状況が続き、空き畑が増えてしまいました。この頃、小学校の生活科の授業でさつまいもの栽培やワラ細工、かまどでのご飯炊きなどを教えており、このときの子供達のキラキラ輝いた目が忘れられませんでした。
 そんな中、「グリーンツーリズム」という言葉を雑誌で知り、通信講座を受講して経営や法律、実践方法を学びました。ドイツとフランスへグリーンツーリズムの視察に行き、アンリ・グロロー氏から、「首都圏30・圏内に住んでいる貴女が成功することが、地方の活性化にもつながるのです。貴女は、地方の発信基地になってください」という言葉がずっと忘れられないでいました。 平成9年4月、首都圏30・圏内に位置する見沼田んぼのそばの自宅の雑木林や畑を解放し、「かあちゃん塾・ファームインさぎ山」を開講しました。

(2)「かあちゃん塾」は総合学習の場
 私は、子どもたちに、人間にとって本当に大切なことは何かを伝えたい。自然を慈しみ、野菜づくりや田舎暮らしの体験を通して育てる喜びと苦労、食べ物、環境を大切にする心を養いたいと思っています。かあちゃん塾を総合学習の場として4つのテーマを設け実践しています。
ア:豊かな自然環境や農地を利用して、子どもたちを自然に触れさせる。
イ:リサイクルを実践し物を大切にする心を養い、ゴミ問題や自然環境を考えさせる。
ウ:野菜づくりを通じて収穫の喜びを味わい、食物の安全性を考えさせる。
エ:塾のスタッフとして、義母や地域の高齢者の生きがい・健康づくりに役立てる。

(3)田舎暮らし体験「かあちゃん塾」の開催
 「かあちゃん塾」の講座は、幼児や児童のいる家族30組を対象に、3月から12月までの計10回、毎月第2土曜日の午前を主体に開講しています。会費は、年間15,000円で、別に、その時々の体験内容に応じた実費をいただいています。
 家族10坪の畑を利用した野菜づくりが基本であり、これに、遊びや伝統行事、環境問題などを織り交ぜて、「かあちゃん塾」としています。平成13年度は次のとおり実施し、参加人数は、各回とも100人〜130人が集まりました。

3月10日
4月14日
5月12日
6月9日
7月14日
8月4日
9月8日
10月13日
11月10日

じゃがいもの植え付け、ペットボトルの害虫フェロモントラップづくり
野菜の種まき、味噌づくり、元天然記念物・野田のサギ山のお話
夏野菜の植え付け、田植え
さつまいもの植え付け
じゃがいも掘り、田の草取り、エビガニつり
デイキャンプ、じゃがまんじゅうづくり、夜の昆虫採集
秋野菜の種まき、稲刈り
さつま芋掘り、収穫祭
秋野菜の収穫、ワラ鉄砲づくり

 伝統行事のワラ鉄砲づくりは、里芋の茎をワラで包み、縄でぐるぐる巻いて棒状にしたワラ鉄砲をつくり、11月10日「十日夜のワラ鉄砲」と言って地面を叩く行事です。
 12月8日 秋野菜の収穫、落ち葉はきと堆肥づくり、餅つき大会 堆肥づくりは、雑木林の落ち葉を集め、木のチップや米ぬか、油かす、鶏糞、生ゴミなどを混ぜ合わせて積み重ねてつくります。

(4)特に工夫したこと
ア:スタッフの構成はバラエティーに!
 受け入れる側のスタッフは、古くからの友人知人が私の考えに共鳴してほとんどボランティアで集まってくれました。レリェーション協会の資格を持つ元女性警察官、保母さん、主婦、カメラマン等々。スタッフは、農業とは無関係な仕事で社会経験も豊富であり、それぞれが個性的かつ柔軟な発想の持ち主です。このため、農家のみでは考えられないような発想で「かあちゃん塾」を盛り上げています。
 サブスタッフとして、主人と義母、次男、近所のお年寄りが時々加わり、義母はお手玉披露、近所のお年寄りは技術を生かした菜園指導など、それぞれが得意な分野でいきいきと参加しています。
イ:入念な打合せと予行演習で楽しませる工夫を!
 さつまいもの貯蔵用穴蔵を利用した子どもたちの洞窟探検、屋敷林のツタにぶら下がるターザンごっこ、いろいろな問題を解きながら行う「ウォークラリー」、子ども主体の田植えと稲刈り、かまどのご飯炊きなど、新しいゲームや行事を始めるときには神経を使い入念な準備を行います。
 毎月のスタッフ会議はもちろん、スタッフ自身が初体験のことは、何度も予行演習を行い、安全でかつ楽しい行事づくりに万全を期しています。

(5)活動の成果
ア:子どもたちが農業体験の感想文をたくさん送ってくれました。「嫌いで食べられなかった野菜が大好きになった」、「食べ物を残さなくなり、大切にするようになった」、「サギ山公園の白鷺が環境破壊で消えてしまったことを知り環境を考えるようになった」、「生ゴミと落ち葉で堆肥が出来て野菜の肥料になることを知った」、「自然を大切にし畑にゴミを捨てないようにしたい」、「さつまいも栽培や里芋畑を手伝って農業の楽しさを身をもって知ることが出来た」など、感謝の手紙がたくさん届きました。
イ:参加した親達からは、「土の感触、育っていく野菜のにおいが忘れられない」、「農家の生きるための工夫や知恵は素晴らしい」、「親子で小さな種をまき、土の中から芽が出てきたときの喜び目の輝きそして収穫したときの子どもたちの誇らしげな顔」そこには、喜びが満ちあふれ、お米や野菜を育てることで自然の大切さ、自然の共生を学び、収穫することで感謝と命について学びました。真夏に汗だくになりながら草取りすることで、いきものに対する思いやりや我慢、辛抱する心が芽生えたことでしょう。
ウ:次世代を担う子どもたちが、農業体験学習により、自然に親しみ、野菜を育てる苦労と喜びを味わい、その元になる環境を大切にする心が培われました。このことは、「生きる力」を身につける上で極めて重要であり、環境、食料、農業・農村などの理解に大きな効果をもたらすものと期待しています。

(6)今後の課題
ア:地域の農業者や住民との連携を深め、地域ぐるみの活動に発展させること。
イ:子どもたちの親に対して、自然や環境、食料、農業・農村の理解を深める活動を実践する。
ウ:天然記念物であった「野田の鷺山」の歴史の語りべと我が家に伝わる「柿渋」の伝承。

(7)結びに
 いかに自然が大事か、生命をつなぐことの出来る私たち女性が、環境と農業、農村文化のことを伝えていく必要があると思います。 農村生活には自然の中から学び、何もないところから作り出す知恵や力があります。長い間培われ、育て上げられてきた良き農村文化を、「かあちゃん塾」を通して発信していきたいと思います。

(子ども農業体験推進コンクール2001 農林水産大臣賞受賞事例より)


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