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●体験館 TRY TRY TRY 人見みゐ子(栃木県黒磯市)

「牧場を学びの場として提供―いのちの感動を子ども達に―」

(1)活動のはじまり
 私の住む黒磯市戸田は、那須連峰の麓の酪農地帯です。私の家は、兼業農家で私は経営主として酪農を25年間続けてきました。次女が後継者として就農することとなりましたが、「自分も娘も楽しみながら農業を行い、子どもたちにも農業の魅力や感動を伝えることができないか 」との思いから、海外農業事情視察研修に参加し、スイス・ドイツのグリーンツーリズムを体験してきました。
 ヨーロッパでは特に農家の女性がいきいきしていたのが印象的で、農業者としての誇りをもち、農業の魅力や感動を伝えたいという思いは更に広がり、夢いっぱいの構想を抱いて帰国しました。その後農村漁村女性生活活動支援協会主催のグリーンツーリズム専門家養成講座に参加しながら、準備に取りかかりました。
 娘は幼稚園・保母の資格を持っており、その技能を活かしました。牧場では、子育てや生活の知恵と、農業を取り巻く厳しさ、食べ物を生産する工夫等を伝え、また農作物や動物に触れあいながら体験することができます。そうした体験的な活動をとおして、人間の素直な心や命の尊さを学び、考え判断する力を育むことができます。これは、総合的な学習の場として牧場を提供することになったと云えるでしょう。

(2)手作りで施設整備
 少しずつ蓄えていた資金(約500万円)で、トイレ、シャワー室、食品加工室、コテージを設置しました。整地や花壇づくり、牛舎の壁画、看板などできることはすべて私と娘が中心になりながらも、家族みんなで手作りしました。体験館の名称は、娘達がつけてくれました。「お母さんは、今までもいろいろなことにトライしてきた。そしてまたトライ。トライ3つもつけてあげるよ。」と、いうのです。オープンは、平成11年4月18日でした。思いがけずその前日、新聞記者が看板を見て来訪し、当日の新聞に「酪農体験館本日オープン」と、大きな見出しで掲載してくれました。次の日から予約が入り忙しくなりました。

(3)私の目指す教育ファームとは
 来館者は、原則として一日一組しか受け入れません。それは、子どもたちと会話をする中で私たちの思いを伝えたいからです。体験を通じて、農業に興味をもってもらえたらいいなと思っています。

●ーうんちの話から始まり、始まりー
 体験学習に来た子どもたちや消費者にまずやってもらうことは、牧場のにおい探しです。 バスから降りるやいなや「くさい」と鼻をつまむ人、ハンカチを出して当てる人・・・。
 「えーっ!うっそー!」と驚きの声があがります。そして、うんちがくさいと思い込んでいたのが、実は餌のにおいだと気付くのです。「牛は、この餌を食べて命があり、私たちに牛乳を恵んでくれているんだよ。」「うんちだって堆肥となり、野菜を作ったり、お米を作ったりと畑で役に立っているのです。」話しているうちに、ハンカチや鼻に手を当てる人はいなくなります。
● 牧場クイズ
 クイズにすれば、農業や食物に興味をもってくれるきっかけになります。そして、「わからないではなく考えよう。」「できないではなくやってみよう。」と呼びかけています。
(例)
・牛のうんちは、1日に何キロくらい出るかな?
・ホルスタインという牛は、何で自分を証明するかわかりますか?
・(かぶと大根を一緒に蒔いておき)かぶはどれかな?
牧場クイズの景品も準備しています。
●酪農エリア
〔搾乳体験〕
 搾乳体験の前に、まずは牛についてのお勉強。「母牛は子牛を育てるやめに牛乳をだします。人間はその大切な牛乳をいただいているわけです。」などなど。
〔牛の体についての勉強〕
 聴診器を使って牛の心音や消化器の音を聞いてみます。初めての体験に行列ができます。「牛は4つの胃袋をもっていて、急いでパクパクと餌を食べ、ゴロンとして噛み返します。」「みんなも食事をしてすぐ寝ると牛になるゾーと、言われたことありませんか?」
〔授乳体験〕
 養護学校の子どもたちを受け入れたとき、重度のハンディを持つ子どもたちは私の言葉をなかなか理解できませんでした。しかし、子牛への授乳体験の時、言葉にできない喜びを体いっぱいに表現している姿に涙がとまりませんでした。
●食品加工エリア
〔バター作り体験〕
 フイルムケースを利用して一人一食分のバターを各自作ります。「思いっきり振り続けてね。おいしいバターができます。」できあがったらパンにつけて試食をします。「うわー、バターができた。」「おいしい。」自分で作った喜びと本物の味に感動します。
〔ソーセージ作り体験〕
 ソーセージは、羊の腸、牛の肉、豚の肉を使います。したがって、三種類の動物の命をいただくことになります。牛が赤ちゃんを生み、もしオスだったら、10日もすればこの牧場から売られて行って肉となるため命を亡くすのです。」「食事のとき、“いただきます”と言うでしょう。そのとき、お母さんお父さんに感謝するのはもちろんのことですが、動物にも命をありがとうと感謝してくださいね。」話しをしながらソーセージ作りをさせています。「今まで考えたこともなかったよ。」「そうだなあ、牛さんだってもっともっと生きていたかったかもなあ。」と、感謝の心が生まれます。その他いろいろな質問が出てきて、学校ではあまり話しをしないという子どもたちも活動的になってきます。
〔お菓子作り体験〕
 カステラ作りをする時には、卵を鶏小屋からとって来るところから始めます。かぼちゃかりんとう作りは、かぼちゃの収穫から体験します。じゃがいも堀り体験の後は、鉄板にスライスしたじゃがいもと野菜・手作りチーズをのせて焼いて食べます。など、四季折々に採れる野菜でレシピと体験メニューを組み合わせ、できるだけ旬の味と新鮮さを伝えることにしています。
●農業エリア
〔野菜の種蒔き・草取り・収穫体験〕
 大勢のときは、義父も応援してくれます。「とうもろこしの種は、カラスに食べられないように、種は指で押して土の中に蒔くんだよ」と、コツを教えます。「そういう心配もしなきゃだめなんだね」と、子どもたちは新しい発見をします。
 収穫期に再度訪れ、自分たちで収穫することもできます。そして、皮をむいで焼きとうもろこしでいただきます。採りたての焼きとうもろこしはとにかくおいしい。
 種蒔きをしても収穫に来られないときは、宅配をしてあげることもあります。
●キャンプ場エリア
 特別な接待は行わず、酪農家の暮らしの中で、都市で暮らす人たちが親戚の家を訪れたように、一緒に働いたり、動物とふれあったり、収穫をしたりして楽しんで帰っていただいています。
●みんなで食事
 みんなで汗を流した後は、自分で作ったソーセージやバター、牛乳すいとんで昼食です。全員が大きな声で「いただきます」と手を合わせます。感謝・感動・感激・・・。

(4)今後の抱負
 体験カリキュラムは、来館者の年齢、人数、時間等を踏まえながら、なるべく要望に応えられるように、打ち合わせをして組んでいます。婦人研修や社員研修として受け入れた時には、酪農の他に男女共同参画や後継者育成家族経営協定の講話もしながら、普及活動をしています。
 平成13年に酪農教育ファームとして認証され、更に自信と希望が湧いてきました。来館した時とは別人のようになって帰っていく子どもたちや都市住民を見送りながら、総合的な学習の場として牧場を提供することにして本当に良かったと思います。そして、これからも続けて行こうと思っています。

(地域に根ざした食生活推進コンクール2001 農林水産省総合食料局長賞 農林漁業分野より)

<関連情報>

  • 酪農教育ファームホームページ(全国)
  • 農業体験学習ネット 受入情報

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