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●地元が対象のグリーン・ツーリズム活動(JA北信州みゆき 総合対策部 大塚春雄)

(1)北信州の子供達に自然・農業のすばらしさを伝えよう

あぐり畑

稲刈り

落花生収穫

豚舎見学
 北信州は農村地帯で豊かな自然と昔ながらの田園風景が広がっている。豊かな自然が残る事により農業が営まれている事、また、農業を行う事により自然・景観が守られている事については、あたりまえの事であり誰もがこれからもこの自然・景観が続いていくと思っている。しかし、農業が衰退し耕作放棄地が広がった場合には、田園風景も確実に一変する。農業(食糧問題)と自然については一緒に語られる事はあまり無いが、相互に関係があり農業を教えると伴に自然についても教える事が重要となっている。生活するには、日本でも有数の豪雪地帯というハンデがあるが、四季折々のすばらしい自然環境の中で豊かな心を育む事ができ、子供達が育つには最高の自然環境が残る北信州だが、子供達も高学年になると都会へのあこがれが強まり、自分たちの住む北信州の良いところが見えずこの地域に暮らす事の誇りが薄れる傾向が強くなる。また、生まれてから何時も農業・自然に接する事のできる為に、日常的すぎて子供達に感動を与える事が出来なくなっている。都会の子供達が、グリーン・ツーリズムで北信州を訪れ、農業を中心に様々な体験を通して、自然・農業の大切さを学び感動を覚えて帰って行くが、農村地帯の子供達にはこのような機会が一切無かった。地域の次世代を担う子供達にも、JAとして学校では教える事の出来ない農業・食糧の大切さ、恵まれた自然、地域文化・伝統(食)等教える事により地域を愛する心を育む事を目的に、平成14年度から学校に週5日制が導入されるのを契機に活動を始めた。

(2)地域体験を折り込んだ農業体験で地域に残る「農魂」を伝えたい
 あぐりスクールの名前を付けるにあたり、農業を通じ地域全体が守られている事を教え農業の大切さを伝えたい思いがある。農業だけではなく自然・地域・伝統(食)・生活文化など様々な学習・体験をさせ、授業も生徒達が飽きる事なく楽しく学べるように工夫した。農作業も同じ内容を半日行うのではなく、他の作業と組み合わせた。本年度は、昔から伝わる郷土料理を作る事を目的とし、畑には里芋・落花生とカボチャを作付けした。また、水の大切さを教えるために授業でも意識して説明した。お年寄りとの交流により、昔の人たちが農業を通じて、地域を守っていた「農魂」を生徒達に学習させた。生徒も個人ではなく助け合う事の大切さを教えるために1年間を通じてクラス編成を行い活動。家の光協会の子供向け雑誌「ちゃぐりん」を教科書として使用し生徒同士が農業・食料・環境等への共通の話題作りが出来るように心がけた。
<実施期日>  4月26日〜12月14日までの間に14回の授業
<参加人数>  生徒数 107名
<経費> 参加費用 8,000円(教材として使用する「ちゃぐりん」1年分5,340円含む。)海外研修(佐渡)は、参加者から7,000円負担してもらう。不足分はJAで負担。先生の職員・JA青年部はボランティア。

(3)テレビゲーム(室内)より農業(屋外)はおもしろい!
 現在、農村地帯の子供達であっても、学校から帰って来れば塾へ行ったりテレビゲームで遊ぶなど都会の子供と何ら変わる事が無く、農村に住んでいるのに農業にふれあう機会が減少している。グリーン・ツーリズム等で農業体験を行う都会の子供達の方が農業・土とふれあう機会がが多い位である。また、農家も農業機械の大型化により、土に接する機会が減少している。特に大規模稲作農家は1回も水田に入る事なく耕起〜収穫が出来てしまう時代となった。
 こうした中で農業関係の授業では生徒達に、土にふれあう機会を多くする様に計画した。田植えでは、素足で水田に入らせ、水が冷たくても土は温かい感触を体験させたり、畑ではマルチ張りも生徒にさせ出来る限り土にふれさせた。作物の成長過程を観察させる事も重要と考え、集合場所であるJA本所の花壇に花の代わりにカボチャを植えて、受付終了後、授業が始まるまでの空いている時間に観察・草取り等の管理をさせた。保護者も会社員が増え農業・自然に接する機会が減っているので、本年度は、4回の親子参加の授業を計画し親子で農業・自然について学習する機会を設けた。屋外でキャンプをしたり料理をし食べるアウトドアがブームとなっているが、会社員の家族がキャンプの代わりに自分で作物を作り、畑で収穫し食べるアウトドア(自給自足というかも?)で一層農業・自然のよき理解者になってくれる事を期待したい。

(4)伝統料理復活大作戦
 授業は板書から一転、スクリーンとパワーポイントに場面が早変わり。博士っぽく、三宅さんは白衣に金の「角帽」(博士がかぶるような帽子です)をかぶって、登場。子どもたちも何が始まるのか、興味しんしんです。
 三宅さんは「きみもれんこんはかせになろう!」というタイトルを出したあと、「これは何の花?」とパワーポイントにハスの花を映し、まず子どもたちに質問します。
「わかる人!」
もちろん、自分たちで育てたものですから、みんなわかります。
「じゃあ、声をあわせて」
「ハスの花!!」
「そうです。ハスの花です。レンコンの花って言う人がいるかと思いましたが、さすがハスを育てた二小のみなさんですね」
 「レンコン」というのは、根っこの食べる部分のことをいい、植物全体としては「ハス」というので、子どもたちは正解です。
 じゃあ、これは、と場面を切り替えながら、ハスの実の話、中国種と在来種があること、みんなが作った品種はふっくらとした中国種であること、良いレンコンの見分け方などを話していきます。そして栽培した一年を振りかえり、レンコンの栄養、「れんこんパワー」の話にうつります。レンコンを使った給食の写真などをいっしょに紹介しながら、「からし蓮根」の写真も映し出しました。
「これもレンコン料理です。なんていう名前か知っていますか?」
みんな、頭をかしげています。
「熊本県の『からし蓮根』という料理です」
「エー、からしィ!」
「辛そう!」
「これは、からしみそをつめて、油で揚げた料理でとってもおいしいんですよ」
 よその地域の郷土料理も紹介し、レンコンは、地域によっていろいろな料理があることを知ってもらいます。また、ビタミン類が含まれていること、食物繊維があること、昔から咳や痰をとめる働きがあると言われ、風邪のひき始めにはレンコンを食べてきたことなどを話しました。
 「これから冬に向かって寒くなりますが、レンコンをしっかり食べて、みんな風邪をひかないようにね」
 三宅さんはここでひとまず退場です。

(5)水田は緑のダム
 北信州は、ほとんどが農村地帯でいたる所に農業用の水路があり水が流れている。飲料水にはとても関心が高いが、農業用水に関しては全く関心が無いものである。しかし、作物を作るためには水は不可欠であり最も大事な要素の一つとなっている。水田脇の水路の水も遠くから引かれてきたのだが誰もその事を教えていない。授業の中では出来る限り水についての話をした。田植えの時は、水田の説明をする前に水路に流れる水について説明を行った。カヌー体験では、農業用ため池(水源は湧水)にカヌーを浮かべたり、標高1,450mのカヤノ平高原では保水力のあるブナ林を散策し森林の大切さも学習した。このカヤノ平高原のブナ林のそばを流れる農業用水についても説明し、とても遠くから水を確保しなければ農業が出来なく、昔の人はとても苦労して水を確保した事も教えた。しかし、水については、人間が生きる為・農業を行う為に必要であるが災害を起こす事もある。約20年前の昭和57年・58年の飯山市を襲った大水害が襲った。北信州の春を代表する菜の花の見学も、「菜の花公園」ではなく、千曲川の河川敷の菜の花畑を見学させ、10m程ある堤防も大雨が降るといっぱいになり堤防が決壊し大きな被害が出た事や、河原で温泉の出る秋山郷でも、人の何倍もある石が水の力によって流されて来た事を教え、大雨が降った場合には、必要な水も災害を起こす事もある、災害を防ぐためにも緑のダムとして水田や森林が水を蓄える事を学習し、食糧生産以外にも役に立っている事を子供達に教えた。

(6)自然豊かな北信州
 子供達の日常活動するエリアは小学校の範囲内が中心となるが、当JAは、1市4村にまたがりとても広い。生徒達は、町の小学校の子供もいれば、農村・山間地の子供もいる。授業に数回出席すると、自分が住む地域の事を生徒同士話すようになり興味がわいてくる様だ。長野県で栄村が一番標高が低いのは意外と知られていない。一番標高の低い栄村と管内で車で行ける場所として一番標高の高い木島平村カヤノ平高原へ行き歴史、自然など学習した。栄村では一年の約半数を雪に閉ざされる秘境の秋山郷へ行き熊を捕るマタギの人の話を聞いたり、江戸時代に起きた天明の大飢饉により集落が滅亡した話を聞いて自然の厳しさについて学習した。カヤノ平は、ブナの原生林が広がる高原で標高は1450m、飯山市街地との標高差は1,100mあり気温も約10℃位低い。夏でも涼しい高原には牧場があり管内の酪農農家の牛も多数放牧されており、標高の高い所にある牧場と牛についての学習も行った。

(7)友達をたくさん作ろう!
 各地から生徒達が集まるのでクラス編成をおこなうと様々な小学校の生徒達と一緒になる。生徒達が早く仲良くなるようにオリエンテーリングを行った。このオリエンテーリングは、普段見慣れた場所の写真を見ながらチェックポイントを探しゴールまでたどり着くゲーム。写真を見て生徒達が相談したり、近所の商店へ行き道を聞いたり助け合い行動する中で友達も出来てきた。しかし、なんと行っても佐渡へ行き一泊した後で急速に仲良くなった。長野県は海が無いので大人も子供も海へのあこがれがとても強い。ましてや船に乗り佐渡へ行く子供からすると夢の世界だ。佐渡へ行くのは多額の費用がかかる。親に負担をかけないために宿泊は休業中の旅館を貸してもらい雑魚寝をし夕食は自分たちで作り食べた。農村地帯では水田を中心に集落があるが、漁村は港を中心に形成されている事など山の文化と、海の文化の違いを目で見る事の他に生徒同士の絆が強まった。

(8)あぐりスクールは大人の勉強の場所にも
 毎回、JA職員が先生としてクラスを受け持つ。職員も1日クラスを受け持つので事前に様々な勉強を行い授業に臨んでいる。生徒達には、管理職も一般職員も関係ないので職員の努力の仕方で生徒達の反応が全く違うので担任となった職員は真剣だ。普段子供達とは接する機会がほとんどなく、生徒達に接する事で新たな発見もあり職員の研修の場としての大きな成果があった。農業のプロであるJA青年部も本年作付けした落花生については誰も栽培した事が無く、一から栽培法を学びを生徒達に教えていた。農業は新品目栽培に目を向けがちだが、昔から栽培されている農産物を見直す機会になった。また、本年度から、飯山南高等学校では、あぐりスクールを、就業体験授業の一環として位置付け8月から8名の高校生が副担任として参加し、生徒と一緒に農作業・料理等の体験を始めた。

(9)過疎・高齢化に悩む農村地帯に夢を与える
 当JAのあぐりスクールも12月で2年を終了する。生徒達も農業・地域のの良いところも理解してきており、北信州で暮らす事の誇りも芽生えて来たように思われる。あぐりスクールが、参加する生徒の家庭の話題から学校の話題・地域の明るい話題として様々な所に登場し、地域住民がこの活動を通じ、自然・地域・農業・生活文化(食)の良いところを見つける機会となっている。JAとしては、職員の意識醸成の場としての大きな成果があった他、非農家である会社員等との距離が縮まり、農業・地域を守るJA活動への理解が深まり、北信州に根ざすJA作りへの大きな効果があった。今後も子供達が楽しみながら、農業を中心に地域の自然・伝統を学ぶ事を目的に積極的に活動していきたい。
 北信州では今後一層の高齢化が進む事が予想され、また、過疎化も進行する可能性がある。子供達の明るい声が響く事は、過疎・高齢化に悩む農村地帯に夢を与える事が出来る。地域の次世代を担う子供達も高校卒業後北信州を離れ都会へ行く子供も多数いるはずだ。高校生の授業の一環として参加したが生徒も含めあぐりスクールで学んだ事が今後の生活に役立つ事を期待している。  
 北信州は日本でも有数の豪雪地帯だ。都会の子供に「雪がとけたら何になりますか?」と質問すると間違いなく「水」になりますと答えると思う。北信州では、「雪が消えると春」になりますと答える子供が多くいる。JA北信州みゆきでは、「あぐりスクール」通じて、こうした豊かな感性を持つ子供を育てたいと思う。

<関連情報>

  • JA北信州みゆき あぐりスクール

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