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「いのち」を育てる本校の食農教育の取り組み
― 稲作りの作業をとおして(地域教材の活用を図って)

● 和光市立新倉小学校 O教諭

■ はじめに

 新倉小学校は和光市の北、荒川に近い地域にある。昔は新倉田んぼと呼ばれるたくさんの田んぼがあった。しかし、近年の都市化により田んぼは畑に、畑は住宅にと大きな変化が見られる地域である。新倉小学校の校内研修のテーマは「地域の教材を生かして」で、このテーマに向け総合的な学習の時間を利用し、わずかに残る田んぼを使い稲を育ててみようということになった。現在、和光市で稲作を続けている農家は2軒のみ。幸いにも、その1軒が本校の学校評議員である本橋喬氏(市内の元中学校長)が住んでおられ直接ご指導をいただけることとなった。

■ 取り組みについて

 子どもたちはすでに5年生で日本の農業について社会科で学習している。また、クラスによっては籾から発芽させてバケツやペットボトルで育てたりもしている。また、6年生の理科学習で発芽の学習をし、いろいろな種を発芽させたりしている。しかし、学年全体での取組としては米作りをやっていない。そこで今年は学年全体での取り組みをやろうということで始まった。新倉小学校ではここ3年間、古代米・キヌヒカリ(白米)・餅米作りと連続して米作りに取り組んできた。これまでの取り組みを基に、今年も餅米作りに取り組むことになった。

(1)田植え

 6月下旬2アールの田んぼに子どもたちと苗を植える。田植えを経験した子どもがほとんどいない中、最初は泥の中に入るのをいやがっていた子どもたちも実際に入ってみると、土の心地よさを楽しむような姿が見受けられ、なかなか出ようとしない子どももいた。手植えのため指導をしても苗の列はなかなか一直線に揃わず、縄を張ったり植え付けの方法を考えたり悪戦苦闘の末、2アールの田を約1時間ほどでやっと植え終えた。

(2)雑草取り

 最初から除草剤は使用しない方針であった。間もなく田一面に雑草が生えた。田植えから約1か月たったころ、暑い太陽の日差しの下で子どもたちと一緒に雑草取り(田の草取り)を実施、汗を流しながら雑草と戦う子どもの姿は普段よりずっと頼もしく見えた。夏休み中、有志の子どもたちの協力で除草作業を続け、さらに教師だけで再度除草を実施した。

(3)網掛け

 去年の取組(プールのフェンスを利用した網掛け)は失敗に終わり、大量の稲穂が雀や昆虫の被害にあう結果となった。今年は本格的な網掛けを計画して時期を待ったが、不順な天候のため作業が進展せず、指導の本橋氏にご苦労をおかけすることになってしまった。収穫期を前に子どもたちと稲の出来を観察した。心をこめて育てた稲は、しっかり稲穂をつけ、1つの稲穂に90粒から100粒の籾が観察された。この豊作に子どもたちは歓声を上げ、「よくこれまで育ってくれた!」と感激ひとしおの様子であった。

(4)稲刈り

 待ちに待った稲刈り。今年は2アールの作付け。うまくいけば60キログラムぐらいの収穫が期待できる。ほとんどの子どもは稲刈りや鎌を使うことが初めてという。事前指導に重点をおき、事故防止と慎重に作業が進められるように配慮した。保護者の方々にも協力いただき、稲を干す時に掛ける「矢来」作りと稲束の巻き方などを指導していただいた。

 これまでは稲を束ねるのに稲藁を使っていたがこれがなかなか難しく、今年は麻縄で束ねることにしたので子どもたちも上手に束ねることができた。矢来ができて全員で束ねた稲を干した。1時間半近くかかったが、けが人もなく無事終了できたことは何よりであった。矢来で乾燥した後、脱穀をするのであるが、今年は収穫量が予定をはるかに超えて多いために、機械作業に頼ることにした。少し稲束を学校に持ち帰り、昔からの「千歯こき」の経験をさせたところ、このような古来の脱穀機に意外な程熱中し、作業を続けた。

(5)その後の取り組みについて

 さらに籾すり、精米という作業があるが、これは学校ではできないため、機械のある所にお願いをしてやっていただくことにした。11月下旬に、自分たちで育てた餅米を使って餅つきをしようと考えている。また、今年は収穫量が多いので、残った米で赤飯も作ってみたいと考えている。

■ おわりに

 米は日本人の主食であり、年々消費量が減っているとはいえ、今日でも重要な作物である。この米がどのように作られ私たちの口に入るのか、実際に育て収穫し食することをとおして、今まで何気なく食べていた米に対して関心を持ってほしいと考えた。実際、今までは、給食でご飯が出たときに食器に米粒がたくさん残っていたが、この取り組みが始まったらその量が少なくなったという結果が出ている。

 また、米の栽培のほかトマト・キュウリ・カボチャなどを学校の学年園で育てた。それらを育てる過程で、苗が踏まれて折れるということがあった。苗が折れることを気にしていなかった子どもたちが、自分たちで栽培した苗が折れた時、苗をもう一度手をかけて植え直したりするようになった。ハロウィン用のお化けカボチャも栽培した。花が咲いて実ができ、大きなカボチャになるとみんなが思ったが、予想とは違い残念ながら大きなかぼちゃにならずがっかりする経験もした。米作りは本橋先生に多くの世話をしていただいたが、生徒たちは「小麦と大麦の栽培は、自分たちで世話をしたい」と積極的に取り組むようになった。

 子どもたち一人一人が、これらの取り組みをとおして多くのことを経験し、いろいろなことを感じ取ってくれたと思う。

 これからも栽培活動をとおして、子どもたちが数多くの体験や感動を経験することにより、私たちが子どもたちに身に付けさせたい願い「命の大切さや優しさ思いやり」などがより一層はぐくまれるようにしたい。

 本取り組みができたのも、本橋先生をはじめ多くの地域の方々の協力、総合教育センター江南支所の先生方のご指導の賜である。


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