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3 農業体験受入農家・団体実態調査

9 吉備中央町ストックファーム

(1)受け入れ場所に関する事項

ア)最寄り駅
 JR津山線福渡駅からタクシーで約10分。
 自動車の場合、岡山自動車道賀陽インターからR484号線を経由し約20分。

イ)体験メニュー
 搾乳、飼育管理、動物とのふれあい。

ウ)地域の特色
 岡山県の中央に位置する標高200〜500メートルの高原地帯で、昔から吉備高原と呼ばれている地域の一角にあります。気候はやや内陸性で県南部と比較して冷涼な地域です。産業の中心は農業で、水稲を中心に高原野菜、果物、花き、酪農、肉用牛肥育が盛ん。

エ)組織の属性等
 代表者:重森 計己(シゲモリ カズミ)吉備中央町長
 担当者:岡田 悦雄(オカダ エツオ)吉備中央町係長
 組織の属性:市町村
 連絡先:〒709-2331 岡山県加賀郡吉備中央町下加茂1506-109
 TEL:0867-34-0144
 FAX:0867-34-0230
 農業体験学習支援の内容:体験学習受け入れ
 受け入れ可能な人数:1日50人から5人程度まで。
 班(1班30〜40名)編成することにより1日120名程度の受け入れは可能。

(2)受け入れ場所(組織)の特色に関する事項

ア)交通の利便性
 山陽自動車道岡山IC、総社ICから約1時間、中国縦貫自動車道津山IC,落合ICから約1時間。道路は完全舗装。大型バスの通行が可能。駐車場は大型車用2台、普通車用20台用意。

イ)特にユニークだと思われる組織・体験メニュー等
 組織は、町営の育成牧場である。総面積60haうち牧草地は17ha。主な家畜は乳牛(育成牛)50頭、和牛10頭、地鶏500羽。乳牛は生後1週令から妊娠を確認するまで預託。
 体験メニュー:ブラウンスイス牛の乳搾り。牛の飼育管理(牛のエサやり、ブラッシング、糞出し等牛舎の清掃)。バター作り体験。広大な開放草地での昼食も可能です。

(3)問い合わせ事項の内容等

 近くにある国立吉備少年自然の家に宿泊し、そこでの自然教室にあわせて、農業体験学習を当ストックファームで実施したいとの照会が数多くあります。照会は、宿泊場所の国立吉備少年自然の家からではなく、自然教室を計画した学校からもの。
 新たに受け入れを希望する学校からの問い合わせは、ストックファームで体験学習をしたことのある学校(先生)から紹介された口コミが多くなっています。
 インターネットを見ての照会は旅行社および個人からの照会がほとんどです。
 養護学校からの照会については、体験可能なメニューに加えスロープ等の安全対策及び障害者用トイレの有無等についての照会があります。

(4)利用者の声

 ほとんどの学校から、校長や担任の礼状とともに生徒個々人の礼状(感想文)をいただいています。同行した先生方からも、

 「生徒たちは、初めて体験することや初めて知ったことなど活動の中でそれぞれに何かを感じ取ることが出来たようです。働くことの意義や大切さ、自然、動物や植物、そして人に対する深い愛情など身体で感じ取ることができたものと確信しております。活動後の充実感にあふれた生徒たちの顔が印象的でした。この体験が、今後生徒たちの生活に生かされるものと思っております。」
 「生徒たちにとって初めての体験で、大変喜んで帰ってまいりました。今回の職場訪問を通していろいろな職業に触れ、職業人としての厳しい生き方を少しは学ぶことができたようです。この経験をもとに、生徒達の将来への視野を広げ、目標実現のための意欲を高めさせていきたいと考えております。」

等の礼状が多数届いています。
 生徒たちは、

 「小動物の小屋の糞出し作業は、量がかなりあって大変だったけど最後きれいになってすごく気持ちよかった」
 「牛には指紋の代わりに鼻紋があるなど驚くことばかりでした」
 「牛のねぐらを作るために糞の中に入っていきました。くさかったけどいい体験になりました」
 「大きな牛に赤ちゃんがいるといったのでその赤ちゃんの生まれたところが見てみたいです」
 「自分たちで作ったバターはとてもおいしかったです。牛舎の掃除は大変だったけど楽しかった」
 「最初は牛が怖かったけど、けっこうかわいく見えてきました」
 「乳搾りの体験をしたとき、思った以上に乳が出たのでびっくりしました。しぼりたての牛乳を飲んでみるととてもあまかったです」
 「オスの牛は、いつかは私たちの食べ物になるということを考えるとすこしかわいそうな気がします。でも、一生懸命育てたなら、その日その日が牛たちもうれしくて、死ぬのも苦しくないのではないでしょうか」
 「ホルスタインやブラウンスイスなどの牛の種類などを教えてもらったり、私たちが質問するとていねいに答えてくださって、とてもうれしかったです」
 「牛が涙を流したことにびっくりしました」
 「牛の乳搾りは、すごく暖かで気持ちよかったけれど、なかなかミルクが出なくてやっぱり難しい仕事なんだなーと思いました」
 「ブラッシングは牛が気持ちよさそうにするので、私もなんだかうれしくなりました」
 「除糞の時とても糞が重かったです。でもきれいになった時は牛のことを考えるととてもいい気持ちになりました」
 「バター作りは思いっきりふらないとおいしいバターが出来ないのでがんばってふりました。バターだけだと味がないのですが、クラッカーなどにつけて食べてみると、とってもおいしかったです」
 「牛舎除糞は、やる前はとてもいやな気がしていましたが、やって見ると疲れるけど、やってよかったと思いました。そして、もう一度体験したいと思いました」
 「いろんな種類の牛がいて中には人間が食べることになる牛も見て、やっぱり、肉などを食べる時には、いろんな動物が犠牲になってしまうので、感謝しながら食べんとなあと思いました」
 「帰る前には、牛の出産という普段見る機会のない貴重なところが見れて、とても感動した。あの時の子牛は元気にしていますか」
 「卵をとったときまだ卵が暖かったのはとても感動しました」

 等、初めての体験、触れることの全てが珍しく、また、感動しながら学習した様子を率直に表現した感想文を寄せくれました。

(5)学校の先生に対する要望等

 学校側への要望として、事前打ち合わせ(下見)をお願いします。小中学校ともに事前学習が必要です。事前学習で、何を学びたいのかの視点を明確にしておくことをお願いします。できれば質問事項を生徒に考えさせておくと助かります。小学生は純粋で気がついたことは何でも質問するが、中学生では、質問できない子もいます。
 大人数の場合は班編成をお願いすることもあります。事前に班編成が出来ていれば、当日の体験活動がスムーズに行えます。なお、家畜へのエサやりは早朝から行っており、家畜へのエサやりを希望する場合は、(動物が空腹で待つことになるため)なるべく早く来てくれるようにお願いしています。
 当日の体験の前には、最低限守らなければならないルールについては当方から説明しますが、学校からも事前の説明をお願いします。

(6)意見交換

ア)総合的な学習の時間について
 マスコミ報道などによると、外国に比べ学力低下が懸念されている中で、ゆとり教育や総合学習が批判の的になっているように思われます。いまやっているような農業体験学習が今後どうなるか心配です。

イ)農業体験学習の実施率が低い中学校向け実施メニューの提案について
 中学生の体験学習の受け入れは、中学校が実施している職業学習としての職業の1つとして学校から要請を受け実施していますが、中学生向けの特別なメニューは用意していません。当育成牧場のありのままの姿を、体験を通して理解してもらうように努めています。メニューは、体験学習の実施時期及び時間を考慮して、そのつど学校側と打ち合わせを行い決めています。ストックファームでは宿泊施設がないため、受け入れは1日(7時間程度)または半日(4時間程度)の受け入れが多いです。
 単調な作業の連続にならないよう、畜舎の糞出し等清掃、家畜へのエサやり、子牛への授乳、搾乳、ブラッシング、バター作り等を組み合わせています。とくに家畜の糞出し作業は、最初は嫌がるが、畜舎を清潔にすることは、「家畜の居住環境を良くするための重要な作業です」と説明すると、家畜のために一生懸命に作業をしてくれます。なお、体験学習の受け入れ中に子牛の出産があれば、他の作業を中断し、出産に立ち合わせるようにしています。生命の誕生は厳粛であり、心に残る体験となるはずです。

ウ)体験学習の費用について
 当ストックファームは町営の育成牧場です。農家から(生後一週令から)預託を受け育成し、種付け・妊娠を確認して農家に返す方式です。
 他に、乳牛のブラウンスイス種の牛乳を原料としたアイスクリームの製造販売を行っています。
 経営的には、育成部門は赤字であるが、町民(消費者)に酪農を理解してもらうために当初は無償で体験学習を受け入れました。現在は、1日体験で1人当たり500円、半日体験で250円としています。
 なお、体験学習が終了した時点でアイスクリームを食べてもらっています。子どもたちからは作業を無事終えたという達成感とともに、汗をかいた後の後のアイスクリーム味は忘れられないようです。

エ)鳥インフルエンザの発生による体験学習の対応について
 地鶏の育雛を行っていますが、当施設では鳥インフルエンザの発生はありません。しかし万が一を考え、鶏舎は外来者の立ち入りは禁止としています。生みたての卵採りや生まれたてのひよことの触れあいは、体験学習のメニューとして人気がありましたが、事故防止の観点から鶏とのふれあい体験は休止しています。

(7)受け入れに関して特に留意(注意)していること

ア)班編成について
 体験学習を効率的に行うためと安全確保のため、1班5〜30名の班編成をお願いしています。班によりスタート時のメニューは変ることになりますが、順次交代して体験していきます。

イ)動物との接し方について
 動物との接し方は、家族同様にやさしく接してくださいと説明し、人間以上に繊細な神経の持ち主で、急に大声を出したり、走ったりして動物を驚かすことがないようにと注意しています。

ウ)体験学習の順番について
 搾乳体験などは、順番に各人に体験してもらうが、後ろへ回る自信のなさそうな生徒から体験してもらうように意識しています。元気の良い子、積極的にやりたい子はどんどん挑戦しますが、自信喪失ぎみの自閉的な生徒を優先し、自信をつけさせるように努力しています。このような子が最初に乳搾りに成功すると見違えるように積極的になってくれます。後ろへ回る自信のなさそうな子にも体験学習を通して何かを感じとってもらいたいと願っています。

エ)サイレージの匂いについて
 サイレージは人間の食べる漬物と同じで、家畜の大好物であると説明します。すると、今まで鼻をつまんでいた子が積極的にエサやりをやってくれます。

オ)質問事項について
 質問には丁寧にやさしく答えるように努力しています。過去の体験学習で、積極的に質問してくれたある生徒は、体験学習で学んだ成果をパネルとしてとりまとめたものが教室に掲示されました。学期末に作品が返されたらストックファームまでわざわざ届けてくれて、受け取った当方が感激したことがあります。子どもたちにとっては短時間の体験であっても、体験をとおして何かをつかんで帰ってもらいたいと、職員一同が同じ気持ちで子どもたちに接するように心掛けています。

カ)受け入れの対象地区について
 地元の加茂川町(現在は吉備中央町)を中心に、高梁市、倉敷市、津山市から、県外では大阪府、兵庫県、鳥取県智頭町、広島県尾道市等の小中学校を受け入れています。
 なお体験に集中してもらうため、受け入れは1日1校限定で予約制としていますが、希望する日が重なった山の学校(鳥取県智頭町)と海の学校(広島県尾道市)の先生同士が話しをつけ、同時に2校受け入れたこともあります。学校同士のトラブルを心配しましたが、先生も生徒も山の学校と海の学校の交流が出来、一味違った体験学習となったようなケースもあります。

(8)調査員の所見

 当ストックファームは、これまでは加茂川町営の育成牧場です。平成16年10月加茂川町は隣接する賀陽町と合併し、吉備中央町となりました。旧賀陽町もかつては町営の育成牧場を運営していましたが、廃止した経緯があるようです。一方、当育成牧場も育成部門は赤字とのことで、難しい経営を強いられているようです。
 このような中での体験学習の受け入れは、職員にとってはかなりの負担であると思われますが、子どもたちからの礼状(感想文)「初めての体験で不安があったが、やさしく説明してもらったので自信を持って体験できた。」「私たちが質問すると丁寧に答えてくださって、とてもうれしかったです。」等は職員の励みとなっています。また、このような社会貢献活動の中から、町営牧場としての存在意義をみいだしたいとしています」
 鳥インフルエンザウィルスのため鶏とのふれあい体験が出来ないのは残念です。ただ、子供たちにとって多くの体験が可能な施設であることは間違いありません。町関係者の理解を得て、今後ともぜひ継続していただけるようお願いします。また、費用・労力の問題はありますが、広大な敷地面積(総面積60ha、牧草地17ha)の一部を活用した景観作物の作付け等の景観整備も実現するよう願っています。

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