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3 農業体験受入農家・団体実態調査

8 岡山県農林漁業担い手育成財団 岡山県農林業実践学習の里 体験学習農園

(1)受け入れ場所に関する事項

ア)最寄り駅
 JR岡山駅から中鉄バス、吉備高原リハビリセンター線 国少口下車徒歩約30分。岡山駅からの所要時間は約1時間30分。
 車利用の場合は、JR岡山駅から国道53号または国道180号から県道72号を経由し約40分。津山市からは国道53号から国道484号を経由し約90分。
岡山自動車道賀陽インターから国道484号を経由し約10分。

イ)体験メニュー
2、3月 しいたけ植菌、ジャガイモ植付け、鶏のエサやり・卵とり
4月 しいたけ収穫、鶏エサやり・卵とり
5月 さつまいも植付け・草取り、鶏のエサやり・卵とり、田植え、なすなどの定植、ももの実の間引き
6月 きゅうり・たまねぎの収穫、ジャガイモ収穫、さつまいも植付け・草取り、鶏のエサやり・卵とり
7月 きゅうり・なす収穫、鶏のエサやり・卵とり
8月 きゅうり・なす・トマト・ぶどう収穫(デラウェア)、ジャガイモ植付け、鶏のエサやり・卵とり
9月 ほうれんそう種まき、さつまいも掘り、ぶどう収穫(ピオーネ)、鶏のエサやり・卵とり
10月 ほうれんそう・しいたけ・ぶどう収穫(ピオーネ)、さつまいも掘り、くり拾い、稲刈り、鶏のエサやり・卵とり
11月 ほうれんそう・ジャガイモ・しいたけ収穫、焼きいも、鶏のエサやり・卵とり

 その他、農村生活体験として、宿泊・自炊、農具・生活用具の見学、わら細工・竹細工の体験、希望により持ちつき体験が可能。

ウ)地域の特色
 当地域は岡山県のほぼ中央部に位置し、標高約400mのなだらかな丘陵地帯の中に、自然環境を生かしながら豊かな福祉社会の実現をめざして街づくりを進めています。
 当施設は「吉備高原都市」の一角にあり、付近には、宿泊施設200人収容の「国立吉備少年自然の家」や森林・林業の観察・体験実習ができる「21世紀の森」をはじめ、先端技術等紹介の「吉備高原ニューサイエンス館」野外活動施設「はるみの丘」などがあり、多様な学習ができる環境が整っています。

エ)組織の属性等
 代表者:村上 進通  岡山県農林漁業担い手育成財団理事長
 担当者:藤原 重彦  農林業実践学習の里体験学習農園塾長
 組織区分:公益法人
 連絡先:〒709-2343 岡山県加賀郡吉備中央町竹部2617-2
 TEL:0866-56-8040
 FAX:0860-56-8040
 農業体験学習支援の内容:体験学習受け入れ
 受け入れ可能な人数:50人/1日。体験内容により増減する。
 田植え、稲刈りは100人程度まで受け入れ可能。

(2)受け入れ場所(組織)の特色に関する事項

ア)交通の便
 岡山自動車道賀陽インターから国道484号を経由し約10分と、自家用車又はレンタカーの利用が便利です。施設は大型自動車の乗り入れも可能。

イ)特にユニークだと思われる組織・体験メニュー等
 体験学習農園は農林業を志す青少年の研修施設として作られましたが、農村生活の実践体験を通じて農業への理解を深める場として、都市生活者や小中高生にも広く開放しています。特に研修宿泊施設は茅葺屋根の農家を再現するなど、体験学習農園全体が厳密な時代考証のもとに再現され、緑豊かな環境の中、昔の農村生活をそっくり体験できる場となっています。
 体験学習農園には水田、畑、果樹園があり、水稲や野菜、ぶどう、もも、くり、うめ、すもも、プルーン、りんご、いちじく等のほかにしいたけなども栽培しています。また、鶏、ガチョウ、ウサギなどの小動物との触れあいも可能です。なお、ぶどうは車椅子でも作業ができるよう、ビニールハウス内で低木仕立てのぶどう園を育成中です。
 宿泊体験は自炊ですが、収穫した作物を使った食文化が楽しめます。その他のプログラムとして、そば打ち体験、正月用のお飾り作り、わらぞうり作りも体験できます。

(3)問い合わせ事項の内容等

 ネットを見ての照会では、いつ空いているか、どんな体験ができるのかとの問い合わせが大部分です。たまに資料を送って欲しいと要請されることもあります。旅行社からの照会も多々あります。また、当体験学習農園への照会以外に、役場に照会されることもあります。
 受け入れは岡山県内を優先にしていますが、全国から受け入れています。グループの場合は予約が必要です。早めの予約により、体験プログラムにあわせた準備(田植えの希望があれば田植え時期にあわせた苗の準備など)が可能です。予約は1ヶ月前までに電話または直接来園して利用の申し込みを行い、2週間前までには来園してもらい、参加者数、体験プログラムの詳細について事前打ち合わせを行っていまする。

(4)利用者の声

 ほとんどの学校の校長や担任から、礼状とともに生徒個々人の礼状(感想文)をいただいています。生徒からは率直に
「にんじん収穫では葉がすごかった。卵はとる時に暖かかった」「初めての体験であり、全てが珍しく、感動しながら学習できた」
などの感想文が寄せられています。
 岡山市立清輝小学校(5年生)では当初は稲刈りを計画していましたが、台風の襲来で、さつまいも・にんじん収穫とニワトリの採卵に計画変更しました。雨の中での体験でしたが、生徒たちは途中から傘を放り捨てて収穫作業に熱中していました。清輝小学校の5年生は、学年全員で19名の少人数学校ですが、学年のホームページに体験学習農園での農業体験を写真入で紹介しています。
 また、岡山市立財田小学校(5年生)は、ジャガイモとたまねぎの収穫、卵とりを体験。さらに農園内にある江戸時代中・後期の農家を再現した施設で、伝統的な農具や生活用具を見ながら、昔の農村の暮らし振りについての勉強もしました。これらの体験の様子は学年のホームページで紹介されています。

(5)学校の先生の声、要望等

 体験を希望する小・中学校には事前に資料(パンフレット)を送り「月別の体験学習モデル例」を参考に実施時期・参加者数・希望する体験メニュー等について検討をお願いし、その後に具体的な打ち合わせを行っています。通常、小学校の場合には、鶏の飼育をメインに数種類の体験メニューを組み合わせて対応しています。
 ある小学校からは収穫した作物及び卵を是非持ち帰りたいとの要望があり「体験実習費」名目で1人当たり300円を受け取ったことがあるが、指導体験費用は原則無料です。
 中学生では田植え体験の希望が多く、加えて通常は1日の体験であるため、受け入れの時期に合わせて水田の代掻き等の準備は体験館のスタッフが事前に行っています。
 受け入れ可能人数としては1日50人としていますが、16年は田植え体験で、1日で233人を受け入れたこともあります。
 養護学校の先生からは、車椅子での果樹作業の要望があり、低木仕立てのぶどう園を育成中です。また、車椅子でも入れるよう、ビニールハウス内でピーマン、ナスなども栽培することとしている。
 小学校からはトイレの水洗化を要請されています。体験学習農園の各施設は昭和56〜58年にかけて岡山県内各地の代表的な民家を移築したもので、トイレも昔ながらの汲み取り式です。水洗便所が普及した現在、子どもたちにとっては汲み取り式の便所には抵抗感(怖さ)があるようです。

(6)意見交換

ア)農業体験学習の実施率が低い中学校(中学生)向け実施メニューの提案について
 当体験学習農園での中学生の体験学習の受け入れは、学校全体としては田植え体験の希望が多く、1日の体験として実施しています。中学校が実施している職業体験学習の受け入れは、16年2月に中学2年生を対象に3日間受け入れました。実施時期は作物の少ない時期でしたが、ビニールハウス内で春野菜用の土作り、シイタケ栽培の原木への植菌作業及び鶏の飼育管理作業等を行いました。3日間の農作業体験は春作物の準備作業だけで終わってしまいましたが、できれば春野菜やしいたけを収穫する喜びも体験してもらいたいと願っています。
 当体験館では、体験の実施時期に応じた実施可能なメニューをその都度学校と協議して作成しています。鶏の飼育管理を除いては、時期によりメニューは変わることとなりますが、年間を通じて受け入れができるように工夫しています。

イ)有害動物等について
 山間部の体験施設のため、いのしし、きつね、たぬき等が出没します。最近では、鳥インフルエンザの関係でカラスやスズメも気になります。また、マムシもいますが、草刈りに努め、事故のないように注意しています。来園者にも山林やしいたけのホダ場、水田などにはマムシが出てくる可能性があるので、体験学習農園の職員の指示がない限り不用意に近づかないように注意を徹底しています。水田には田植え時期に蛭が発生することがあるが、タバコくずの散布で発生を防いでいます。蛭やマムシはニコチンを嫌うようです。カラスには鶏の卵を狙われます。
 園内には岡山県内の代表的な民家6棟を移築・再現し、宿舎・農業歴史展示館等として活用しているが、茅葺のため維持管理が大変であり、傷んだ個所を順次補修しています。補修後は屋根全体を網で被い野鳥によるいたずらを防いでいます。

ウ)研修生の受け入れ状況について
 平成16年度の受け入れ人数は、1,413人と15年度とほぼ同数となっています。小・中学生は全体の約7割を占めています。小学生、中学生ともに年間500名弱とほぼ同数ですが、小学生は全員が岡山県内であるのに対して、中学生は県内が65%、県外が35%となっています。受け入れの時期は、小学生では5〜10月の6ヶ月間の受け入れに対し、中学生では職業体験での受け入れを除くと5〜6月の2ヶ月であり、体験メニューは田植え体験のみの受け入れです。
 社会人の農林業の実践体験として、土曜日・日曜日の2日間の宿泊研修「サンデー就農塾」があり、16年は年3回8人が参加しました。「サンデー実践コースOB会」は4回延べ24名が参加しました。OB会はまとまりが良く、自分達の実践活動の他に草刈り、作物の収穫後の後片付けや、堆肥作りなどを積極的に行ってくれる奇特な人たちです。
 「農業体験学習推進セミナー」は8月と11月に開催され、延べ26人が参加してます。これは農業体験学習指定校の先生の集まりであり、会議、検討と同時に農作業を体験します。

エ)体験学習の指導者について
 指導者は塾長のほかに2名の指導主幹(インストラクター)が担当しています。わら細工体験やそばうち体験では、地元の農家やボランティアに指導をお願いすることもあります。

オ)過去の事故事例について
 職員が農作業中に、急斜面で転んで骨折した事例はありますが、体験学習参加者の事故事例はありません。

(7)受け入れに関して特に留意(注意)していること

 単なる観光ではなく研修であるので、団体の司会進行により、入園式・退園式を行っています。また、数人から十数人の班編成と、班毎に責任者の配置をお願いしています。研修態度については、班毎の責任者に指導・監督をお願いしています。クワ、カマ、ハサミなどの農具は全て農園で用意し、作業の前には安全な使い方を説明し、事故防止に努めています。

(8)調査員の所見

ア)施設について
 自然林に囲まれ、研修用の施設はそれぞれが岡山県を代表する文化財であり、研修環境としては申し分がないと思われます。付き添いを含めて、中学生以下の受け入れが全体の8割弱を占めています。小学生からの要望である施設のトイレ4箇所を、例えば合併浄化槽方式にし水洗化すると1千万円近くの予算が必要とのことです。農村部でも下水道が普及している現在、昔の民家の再現といえども、実際に利用するトイレの水洗化は必要なのでしょう。
 宿泊施設はあるものの原則自炊となっているためか、年間を通じての利用は少ないようです。
 文化財的な施設の管理には気苦労もあると思われるが、折角の施設でもあり、宿泊して体験ができるような体制がとれれば、より充実するものと期待されます。

イ)年間を通じた受け入れと対象について
 受け入れ期間は、5〜10月がメインであるが、それ以外の時期でも秋植えジャガイモの収穫や、早出と遅出の種類(品種)を組み合わせたシイタケ栽培など、年間を通じての受け入れが可能なように工夫されています。
 体験農園開設当時の「農林業を志す青少年等を対象に農林業を実践的に学習させ、その体験を通じてたくましい担い手の育成を図る」ことから「小中高生や都市居住者などの農作業や農村生活体験の場としても活用し、農林業に対する理解を深めることを目的」に体験学習農園の使命が変化している現実を見ると、中・高生の受け入れには改善の余地があると思われます。16年度の中学生の受け入れでは4回(校)のうち3回(校)が田植え体験でした。田植え体験は他のメニューに比べ、作業が単純で、研修生全体に対する目配りが可能で、大人数の受け入れに適しているが、折角の機会であり、他のプログラムを組み合わせた体験の実現が望まれます。また、16年は台風の襲来が多く、日程変更もかなりあったと思われるが、田植え体験を行った場所の稲刈り体験が実現しなかったのは残念でした。

ウ)持帰り料金の設定について
 体験及び宿泊は、宿泊した場合の布団カバーのクリーニング代を除き、無料としているが、小学校5年生のある学校から、収穫した作物及び卵を是非持ち帰りたいとの要望があり、「体験実習費」名目で1人当たり300円を受け取った例があるようです。子どもたちも自分で収穫した野菜などを家族へのお土産に持ち帰りたいと思うのは自然な気持ちであり、持ち帰ったお土産を通じて家族との会話も豊かになると思われます。子どもからの礼状の中にも「(持ち帰った)たまごはおいしかったです。ほんとうにありがとうございました。」と率直な感想が述べられてもいます。十分な数量の確保や料金の設定等が難しいのかもしれないが、時期に応じた新鮮な作物を持ち帰ることも農業と食を理解する上では重要であると思われます。

エ)「サンデー実践コースOB会」の活用ついて
 社会人の農林業の実践体験として、土曜日・日曜日の2日間の宿泊研修「サンデー就農塾」を受け入れています。同コースの卒業生で組織する「サンデー実践コースOB会」は、まとまりが良くボランティアとして、農園内の草刈りや作物の収穫後の後片付け、堆肥作りなど積極的に応援してくれるとのことであるので、一歩進めて体験学習の場での活躍などが見込めれば、面白い展開が期待できるのではないかと思われます。


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