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3 農業体験受入農家・団体実態調査

6 NPO法人 市村自然塾関東

(1)受け入れ場所に関する事項

ア)最寄り駅
 小田急線「新松田駅」またはJR御殿場線「松田駅」下車、駅前より 富士急バス「寄(やどりき)行き」バスに乗り「田代向」停留所下車、徒歩8分(中津川の田代橋を渡り聖心女子学院 学舎の隣)。車利用の場合は、東名高速「大井松田インターチェンジ」から国道255号線、国道246号線を経て約20分。

イ)体験メニュー
 農作業・自然体験活動及び共同生活を基盤においた隔週末2泊3日の活動。子どもたちの自主性・自立性・自律性を伸ばす各種プログラムを用意しています。子どもたちは、6〜7名ごと4チームに分かれ、チームごとの活動と全体での活動を体験します。

ウ)地域の特色
 西丹沢の山々や水源林に囲まれた寄(やどりき)は、古くはタバコや落花生を栽培する山村でしたが、県道の拡幅・整備にともない、今では新たな町並みも見られます。とはいえ、森林保全規制により大規模開発は行なわれず、清流・中津川には今でも蛍が住むなど、手つかずの自然が色濃く残っています。近年、作物栽培の中心がタバコからお茶に変わり、新緑の季節ともなると、山裾に広がる茶畑の淡い緑が訪れる人の目を引いています。

エ)組織の属性等
 代表者:木全 正義(塾頭)
 担当者:並木 正行
 組織区分:NPO法人
 連絡先:〒258-0001神奈川県足柄上郡松田町寄(やどりき)5807番地 市村自然塾関東
 TEL:0465-88-2066
 FAX:0465-88-2067
 E-mail:isk@szj.jp
 URL:http://www.szj.jp

 農業体験学習支援の内容
 土つくり、植え付け、栽培管理、収穫などの農業体験と生物調査、森林保全、道路清掃等の環境ボランティア体験を基本に長期実習体験受入

 受入可能な人数
 年間30名。関東近県(金曜日の夕食から日曜日の昼食までの隔週開催で、3月20日から12月1日までの通年活動なので、自宅からの交通を考慮すれば近県とならざるを得ません。)の小学校4年生から中学校2年生までを対象に学年バランス、地域バランス等を考慮し書類選考し、さらに親子面談の上参加者を決定しています。

(2)受け入れ場所(組織)の特色に関する事項

ア)特にユニークだと思われる組織・体験メニュー等
 市村自然塾は、「生きる力を大地から学ぶ」を基本理念に、リコー及び三愛グループの創始者である市村清の生誕100周年を記念して設立された、特定非営利法人(NPO)です。
 この施設の特色は、
・農作業を中心とした自然体験活動と共同生活基盤においた隔週末2泊3日の活動としている
・活動の期間を3月下旬から11月下旬まで年間18回の通年型の活動としている
・夏休み期間には、親子体験を含めた合宿を実施している
 などであり、農業体験受入施設としては他に例をみないユニークな施設です。なお、宿泊費、食事代等は無料ですが、自宅から自然塾までの交通費や保険料(スポーツ安全保険年間1000円)は参加者の負担となっています。

■農作業体験
全員が協力して耕す共同農場と、チームごとに何を育てるか自由に決めることのできるチーム農場があります。農場では、50種類以上の野菜や穀物を栽培。土つくりから、種まき、雑草の除去、潅水など塾生が自主的に行なえるように専任のスタッフがサポートしています。

■自然科学体験
夜の星座観察や蛍狩りなど、手つかずの自然環境を活用し、実験や観察を通して自然や宇宙について勉強します。

■イベント体験
お弁当を作ってのハイキングや清流中津川での川遊びなど。また、お茶や味噌作り、竹とんぼや竹箸作りも体験します。

■ボランティア活動
リコーの社員で作る寄森睦会と共同で森林保全活動を体験します。

■共同生活
学校とは違って、各地から集まった学年の異なる友達と一緒に生活します。仲間同士で協力し合い、自分たちで考え、自分たちで進んで行動する習慣を身に付けます。

■食生活
食材の多くは、共同農場で収穫した新鮮な野菜など、皆で育て、収穫したもの。感謝の気持ちとともに食の大切さを学びます。

(3)利用者に関して

 学校を通じての募集活動は行なっていません。近県の小中学生から参加者を募集。学年バランス、地域バランス等を考慮し書類選考し、さらに親子面談の上1年間の参加者を決定しています。応募の動機は参加する小中学生より保護者の意向が強いようです。
 ステージを重ねるにつれ子どもたちは着実に成長し、塾での出来事を保護者へ報告していきます。自ら管理・育成した野菜等を持ち帰り、親子ともども味わうことで食に対する考え方が変わったとする報告もよせられました。
 参加した子どもたちは、着実に変わり(成長し)最終ステージが近づくにつれ、積極性が発揮され、もっと経験を積みたいとする子どもたちが多く見られます。

(4)施設の関係者の話

ア)前塾頭
 平成14年2月完成の塾舎を拠点に活動を開始し、第2期生の活動が終了しました。活動を振り返ってみると、あっという間に過ぎ去ったようにも感じます。
 入塾時には「友達ができるだろうか」「友達と仲良くやっていけるだろうか」と不安に思っていた塾生達が、農作業で共に汗を流し、共同生活で寝食を共にすることにより塾生同士の結びつきは驚くほど強くなっていきました。
 学校では友達も少なくあまりしゃべらなかった子も塾ではたくさんの友達を作り、楽しく語り合い、塾が終わってしまう事を惜しんでいました。野菜作りの大変さを体験して嫌いな野菜を残さず食べられるようになった塾生や自然の大切さを心に刻んでくれた塾生もいます。家庭で食事や掃除の手伝いを進んで出来るようになった塾生もいます。自然の事を調べたい、自然を守る仕事をしたい、幼稚園の先生になって自然に関する事を教えてあげたい、と将来に夢を広げている塾生もいます。
 市村自然塾での体験から学び取った内容を糧として子どもたちが大きく成長されることを心から願っています。

イ)世話人・スタッフ
 自然の中で作物を育て、それを食べることで、明らかに野菜や食材や料理などへの興味がわく子どもが多くいます。また、自然や環境に関する関心も高くなるようです。また、こうした活動を続けることで、最初は弱々しく、落ち着きのなかった子どもでも、たくましく、落ち着きを身につけるようになってきます。
 農作業では、においのきつい鶏糞堆肥やコンポストなども扱います。また、野菜に付いた虫を取って殺していかなければなりません。最初は大騒ぎしている子供たちも次第にそうしたことを自然に受け入れていきます。暑い、疲れた、といっている子どもたちも徐々に忍耐力が出てきます。雨が降れば計画通りに作業はできず、播いた種が出てこなかったり、植えた苗を枯らしてしまったり、せっかく育てた作物が鳥や獣に荒らされてしまうなどの失敗も経験します。しかし、子どもたちの成長を見、卒塾時の言葉などを聞くと、そうした、快適ではなかったり思い通りにいかなかった経験から多くを学び取り一回りも二回りも大きくなっており、そうした体験の大切さを感じています。共同生活では、沢山の友達が出来て楽しいという面ばかりでなく、人間関係に悩む子どもも見られます。そうした悩みを乗り越え人間(仲間や自分)を好きになったという言葉に、スタッフ一同感激させられております。
 塾生自身の企画などの活動を通じて、子どもたちは何もないところからリーダー役を選び、自分たちで問題を解決していきました。最初は大人から見ると大変じれったく、口を出してしまいそうになりましたが、じっと様子を見守っていくと、問題に自分たちで気づき、解決策を見つけていく子どもたちの能力に教えられました。市村自然塾での体験を通じ、子どもたちは自ら問題を解決することを着実に学んだと思います。卒塾生の一人ひとりが自分に対して自信を持って21世紀のリーダーとして、さまざまな分野で活躍してくれる事を期待しております。

(5)農業・農村体験学習の今後に期待すること

 ほとんどの子どもたちが塾での体験および生活を通じて自らを見直し、着実に変化が見られます。自然塾で過ごした八ヶ月(18ステージのべ54日)の間に「農作業体験」と「共同生活」という水と肥料を摂取し、今後の各人の成長のために有意義な体験になったと思います。市村自然塾は民間レベルでの取り組みですが、公的機関でも「命をはぐくむ教育」として農業・農村体験学習の推進に更なる取り組みをお願いしたい。株式会社リコーの浜田会長(市村自然塾関東の顧問)は「このような施設が日本には2万箇所必要だ」と発言され、民間企業等も市村自然塾関東に続いて欲しいと期待しています。
 市村自然塾の夢は、卒塾生の一人ひとりが21世紀のリーダーとして、さまざまな分野で活躍してくれる事です。野菜が立派に成長する為には、土・太陽・水・空気と同時に人の世話が必要です。人間も、大きく成長していくにはいろいろな苦労を一歩一歩乗り越えていかなければなりません。その苦労を乗り越えるためには、常に心の糧となるものが必要で、よき友人が必要です。市村自然塾関東は卒塾生の心の糧を見つける場として、卒塾生をいつまでも見守っていきたいと願っています。
 そして卒塾生一人ひとりがよき友人として長く付き合っていける約束の場として「大地の会」が発足しています。

(6)受け入れに関して留意していること

 塾生は傷害保険に加入してもらっています。万が一、けがや急病が発生した場合は、常駐する看護士が速やかに応急措置を施したうえで近隣の診療所、または松田町にある神奈川県立足柄上病院へと運び対処しています。けがをしやすい道具を使う作業に入る前には、必ず道具の使い方に関する練習カリキュラムを組み、事故防止に努めています。また、全体での作業中はスタッフを増員し、目の行き届いた体制をとれるよう計画しています。塾舎は、震度7クラスの地震にも耐える鉄骨構造。さらに、地震や火災に備え、塾生に対して定期的に防災訓練を実施しています。専任のスタッフは、農業指導員、看護士、栄養士などの専門職のほかに、寝食を共にするスタッフとしてお父さん的な塾頭、お母さん的な塾母、お兄さんお姉さん的な世話人を配置しています。さらに、共同生活の運営を円滑に行なうため事務スタッフも必ず参加しています。スタッフ、ボランティアとも、市村自然塾の基本理念に賛同し、かつ子どもたちの能力を引き出す事の出来る者を配置。企業内で熱意を持って部下を育成してきた管理職経験者、教職員の資格を持った者、あるいはアウトドア活動の指導員など、さまざまなバックグラウンドを持つ者がスタッフとして参加しています。また、子どもたちと直接接する世話人役には、明るく元気がよい現役の大学生がスタッフとして参加しています。塾生活の最中は、基本的にいつでも自由に見学が可能です。また、保護者の見学会を兼ねて、親子体験活動のプログラムを用意しています。ただし、通常の塾活動はチームとして、グループ全体として子どもたちが主体となり活動しているので、子どもと一緒の活動はできません。また、保護者(見学者)用の宿泊施設はありません。
 自然塾では成長支援の基本姿勢として、子どもたちの自主性・自立性・自律性を伸ばすため、子どもたちに対して「指示しすぎない」、「命令しすぎない」、「教えすぎない」、「世話をやきすぎない」の4無を実践しています。

(7)調査員の所見

 この受入施設は、周辺の自然環境に恵まれ、農業体験と長期間継続して集団での宿泊体験を通して、子どもたちの人間形成を図ろうとする点に大きな特徴を持っています。明確な指導理念があり、いわゆるイベント的で断片的な体験ではなく、一年間定期的に継続して活動を行なうことで、子どもの成長に大きな影響を与えるものと思われます。
 受入の際に、保護者および本人との面接を綿密に行ない、施設の目的や趣旨を十分に理解した上で入塾するシステムは、体験活動の効果を一層高めるものだと考えます。
 過去2年間の指導のノウハウが生きており、充実したスタッフの体制が整備されています。さらに、施設として活用できる農地も子供たちの活動を十分に保証するものです。ただ、個人での申し込みが中心で、学校や社会教育団体が単独で短期的に活用することができない点は残念な部分です。

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