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3 農業体験受入農家・団体実態調査

3 教育ファーム 体験館-TRY-TRY-TRY-

(1)受入場所に関する事項

ア)最寄り駅
 JR東北本線黒磯駅から東野交通バス板室温泉行き(約15分乗車)開拓事務所前下車徒歩約10分。タクシーの場合はJR東北新幹線那須塩原駅から約10分。
 自動車の場合は、東北自動車道那須インターから約15分、西那須野インターから約20分。

イ)体験メニュー
 土つくり、植え付け、栽培管理、収穫、乳牛の飼育管理、搾乳体験、食品作り(ソーセージ、バター、チーズ、パンなど)

ウ)地域の特色
当地域は、栃木県の北西部、東京から150km圏の距離にあり、広大な那須野が原の高原地帯です。標高は海抜200m以上あり、高原性の冷涼な気候で降水量は夏季に多く、冬に少なくなっています。また古くから酪農の盛んな地域でもあります。

エ)組織の属性等ネット情報の確認
 代表者:人見 みゐ子(ヒトミ ミイコ)館長 酪農経営者
 団体・個人の属性:農家
 連絡先:〒325-0114 栃木県那須塩原市戸田74-2 体験館
 TEL:0287-68-0450
 FAX:0287-68-0245
 農業体験学習支援の内容:情報・教材提供、相談窓口、講師派遣、体験学習受入、
 その他(婦人団体・社員研修)
 受入可能な人数:250人/1日、1日1団体限定の受け入れ

(2)受け入れ場所(組織)の特色に関する事項

ア)交通の便
 東京から150km圏の距離にありJR東北新幹線那須塩原駅並びに東北自動車道の那須インターに近く、自動車での利用が便利です。駐車スペースも十分な広さがあります(敷地内に大型バス3台、乗用車20台、近くの駐車場を利用すれば大型バス7台まで可能)。

イ)特にユニークだと思われる組織・体験メニュー等
 乳搾りができる酪農エリア、農産物が収穫できる農業エリア、バター・チーズ・ソーセージ作りができる実習エリア、ロバ、山羊、子豚、等とふれあえるエリアがあります。
 体験学習は、最初にソーセージ作りからはじまり、ソーセージには牛肉、豚肉、羊の腸と3匹の動物の命をいただいていることを教えます。そしてお父さん、お母さんと同時に食材を作ってくれる人に対する感謝の気持ちと、命のあった動物が屠殺され、人は動物の命をいただいて生きていることをわかりやすく説明します。食事の前には感謝を込めていただきますと言えるよう、体験を通した理解を進めています。
 動物との触れ合い体験では、牛、ロバ、ポニー、羊の違いを判りやすく説明しています。例えば羊の瞳はよく見ると横長の四角です。動物の写生をする時には本物の特徴を捉えて描くように足の爪の違いや、ロバの背中の黒い筋なども説明しています。子どもたちはロバや山羊を引たり、時には脱走した子やぎを楽しそうに追いかけます。小人数の家族での体験では、牛たちと散歩をしてもらっています。
 子ども達の多くは最初牧場のにおいを嫌がります。においのもと探しを行なうと、においのもとは糞尿ではなく飼料であると気づきます。
 酪農家と畜産農家の違いについて説明し、酪農家では生まれた子牛がオスであればお母さん牛のそばには10日ほどしかいられないこと、オス牛は畜産農家へ引き取られ、1年ぐらいで食材となることを教えます。さらに、蹄や角は消火剤として利用され、無駄になるものはなにもないこと、人間は動物の命をもらって生活していることなどをわかりやすく説明してもいます。動物と人間とのかかわりについて説明することにより、親に対する感謝の気持ちを理解してもらいます。
 牧草のロールサイレージは一般の酪農家より2巻き多くし、子どもたちが転がしても、上に乗って写生をしても崩れないように配慮しています。
 養護学校の生徒さんには、孵化する前の卵を手のひらに載せてやると、中のひよこの鼓動に感動する子が多い。この体験はお母さんへの感謝の心につながっているようです。
 農業体験では、各人に10粒の種を配り、とうもろこしの種まき体験をしています。生徒の中には1穴に1〜2粒蒔くところをまとめて10粒も蒔く子もいるのですが、そんなときは10本の芽が出た写真を学校に送っています。もちろん写真を送った後には植え替えますが…。生育過程は写真で送り、収穫したとうもろこしは、宅配便で学校に送っています。夏休み期間でも登校日とあわせ、茹でたてを皆さんで味わえるようにしています。

(3)問い合わせ事項の内容等

 当体験館は、特に宣伝はしていません。学校から照会されたときの話では、ここで体験を行なった学校などから口コミで知ったケースが多いようです。養護学校の場合には、この体験館での体験学習を支援したボランティアからの口コミで照会してくるケースがほとんどです。畜産専攻の大学生からは、畜産実習の受け入れ要請が毎年あります。この体験館での畜産実習が、大学の単位として認定されている大学もあるようです。
 また、社員研修や、婦人団体の研修等としても利用されている。婦人団体の研修では、酪農の話のほかに、後継者育成、家族経営協定や男女共同参画の講義を行なっています。

(4)利用者の声

ア)学校から
 子どもたちは、学校給食時に素直に「いただきます」と言えるようになりました。また、牛乳をはじめ給食を残さなくなったと聞いています。
 子どもたちの感想文を、アルバムとして編集し届けてくれる学校もあります。子どもたちからは、今度は家族と一緒に行くので、その時は宜しく、牧場の牛乳はおいしかった、牧場のおばちゃんに誉めてもらってうれしかった、最初は怖かったけれど牛さんは私のえさも食べてくれたなど率直な感想が寄せられています。
 先生からは、ここでの体験は安心だし、子どもと一緒に体験を楽しめたとのコメントをいただきました。
イ)家族から
 自発的に家事を手伝うようになった、家族での会話が増えた、という話を聞いています。また、子どもの話を聞いて家族で行きたいので受け入れてもらえるかという問い合わせも少なくありません。

(5)学校への対応

 新たに受け入れを要請してくる学校は、当体験館での体験学習の経験のある学校等から聞いた(口コミ等)という学校がほとんどです。
 体験時間は5時間程度で、単調なプログラムにならないように、変化をつけながらの子どもたちがわくわくするようなプログラムを提案していきたいと思っています。
 照会にたいしては過去の取り組み事例などを紹介することもあります。また、当体験館から逆に、アレルギー体質の子がいるか、食事に制限のある子はいるかなど、参加する生徒の概略を聞いています。
 問題行動を起こしやすい子には、館長から体験学習のお手伝いの役割を与えるように努めています。

(6)意見交換

ア)教え方について
 学校では頭の良い子(勉強ができる子)、人気のある子が学級委員になることが多いと思いますが、この体験館では、自信のなさそうな子、しり込みをしているような子にあえて、館長のお手伝いをお願いしています。そして良く出来たときはしっかり誉めます。最初は自信なさそうだった子が、初めての体験で目の色が変わっていくのが良くわかります。
 子どもからの礼状に「私は体験館で、おばちゃんに仕事を任された。私もなにか出来そうだ」との手紙をもらったこともあります。また、普段学校では目立たなかった子が、体験を終えてから、ここでの体験でわからなかったことを、親と一緒に図書館に通って調べ、自由研究にまとめました。学期が終了し、作品が本人に返されると、体験館までこの研究を届けてくれました。私でも頑張ればできると、大きな自信を得たようで、学校の成績も上がったようです。
 子どもたちへの説明に当たっては、専門用語はなるべく使わないように心掛け、さらに具体的な事例をわかりやすく説明しています。例えば乳牛の場合、出産の50日前まで搾乳しているが、乳を搾っている時はおなかに子どもが入っている。人間がそんなに連続して子どもを作ったら母親の体はぼろぼろになると、母親のありがたさを教えています。
 たまたま酪農体験中に子牛の出産があり、見学者は今か今かとカメラを構えて出産の瞬間を待ち構えていました。しかし、生まれてきた子牛は、呼吸していませんでした。子牛にまたがり一生懸命、心臓マッサージを行ないました。見学者は見るに耐えかね、ひとりまたひとりと牛小屋から外へ出て行きました。マッサージの甲斐なく、子牛は息を吹き返しませんでした。見学者も言葉がなかったが、出産はうれしさと悲しみの紙一重の出来事でもあると、親に対する感謝の心を教えています。また、生き物の違いをわかりやすく説明する。例えば、胃袋が1個のロバには上の前歯があるが、4個の牛には上の前歯がありません。牛の口に手を入れてみようと体験させています。ロバに同じことをすると噛むことも教えて注意させています。子供たちはいくら注意しても自分の興味のあるところへは行きます。危険なところは見張って、安全と安心を心掛けています。

イ)叱り方について
 子ども達用にポットに飲み物を入れ、そばにコップも用意してあったが、私の見ている前でポットの蛇口に直接口をつけて飲んだ子がいました。私はその子を呼んで叱りました。何で叱られているかが理解できないようでしたが、ルールを教え、その子に役割を与えました。その後は一生懸命に体験してくれ、後片付けも率先してやってくれました。意識してよくやったことは誉めました。後日談ですが、一人っ子で甘やかされて育ち、学校でも問題行動が目立つ子で、親からも叱られた経験がなかったようです。
 私が預かった以上は、どんな子でも自分の子と同じように愛情を注ぎたいと思っています。ルールを破る行動をすれば、その時には体を張って本人を叱るようにしています。叱った後は役割を与え、よく出来たときには誉めます。体験を通じて社会のルールを体で覚え、自分の役割を成し遂げた時に喜びが実感できるように教えています。先生からも叱ってくれて有難うとお礼をいただいたこともありました。

ウ)体験学習の受け入れと酪農経営について
 体験館の館長は私(人見みゐ子)であり、体験学習の責任者です。ソーセージ作り等の食品加工体験は娘に手伝ってもらいますが、それ以外は私も楽しみながら説明や案内をしています。
 自家の酪農は、家族全員で行なっています。労働力は家族のみであり、体験の受け入れの際にも雇用労働は使っていません。5〜6月には牧草の取り入れと、とうもろこし作付けを行ないます。この時期は、学校の方もあまり動きがないので、体験の受け入れもほとんどありません。9月はとうもろこしの収穫。この時期も学校はあまり動かないようです。農作業は家族4人で集中して行っています。飼料作物の畑5haの作付けは3日間くらいでできます。トラクター3台を同時に稼動して、しっかり飼料作りをしています。これらの作業は、体験学習の受け入れとダブらないように工夫しています。

エ)情報の発信について
 現在のところ独自のホームページを開設する予定はありません。ただ中央酪農会議の酪農教育ファームフームに参加しているので、酪農教育ファームのホームページや、教育振興会の農業体験学習ネットで紹介してもらっています。那須という近くに温泉等の観光地が沢山ある土地柄のためか、旅行社のホームページでも紹介されています。一応パソコンは導入し、Eメールアドレスは取得しています。

オ)農業体験学習の実施率の低い中学生向けのメニューの提案について
 当体験館では、食と農、自然と人とのかかわりを、消費者や子ども達に伝えたいという思いから、酪農家としての生活の中で経験してきた子育てや生活の知恵、工夫、そして農業者としての誇りを持って、学びの場を提供しています。
 体験メニューについて特に小学生、中学生を意識していない。中学生では勉強が忙しくなり、職業体験(チャレンジデー)としての受け入れである。いくつかのメニュー(産業・職業)の中で本人の希望が、たまたま酪農体験であり、学校からの依頼を受け入れた事例があるが、結果として同じクラスの生徒で酪農体験を経験したのは2?3名と思われる。
 中学生向けのメニュー作成は、農業の種類も多種多様であるが、体験学習に割ける時間の確保が先ず重要であると思う。
 平成11年から酪農体験の受け入れをしているが、来館者の反応を見ていると、来館したときとは別人のようになって帰って行く子どもたちを見送りながら、総合的な学習の場として牧場を提供することにして本当に良かったと思っています。新たな実施メニューよりも体験学習の教育的な効果に対する理解を深めることが重要であると思います。

(7)受け入れに際して特に留意していること

 受け入れに当たっては、小人数の受け入れであっても体験学習に集中できるよう一日一組に限定して受け入れており、そのため完全予約制となっています。受け入れの時間は10時から15時で、10時以前と15時以降は、酪農家としての搾乳等飼育管理を行なっています。
 昼食および19時以降のレストランも予約制。食事は、地元の食材を工夫してオリジナルなものを提供しています。基本的にはお任せメニューですが、前回いつ頃来られてどんな食事を提供したか、そのあたりを意識して、メニューには変化を持たせています。
 受け入れにあったっては、先生(引率者等)方には事前の見学(打ち合わせ)をお願いし、当方が提案したメニュー(体験内容)の確認を行なっています。

(8)調査員の所見

 体験館-TRY-TRY-TRY-の特徴は、館長自らが酪農経営のエキスパートであると同時に、栃木県女性農業士、黒磯市農業指導士や黒磯市農業委員などの活動を通じ、酪農だけでなく農業全般の事情に精通していること、さらに、ヨーロッパのグリーンツーリズムを体験し、自らの酪農経営を変えることなく、牧場を学びの場として提供していることにあります。
 酪農エリアでの搾乳体験や乳牛へのエサやり体験、農業エリアでの野菜の種まき・草取り・収穫体験、食品加工エリアでのソーセージ作り体験、キャンプ場エリアでの酪農家の暮らし体験や山羊・ひつじ・ウサギなど小動物とのふれあい体験など、子どもたちがわくわくするような変化に富んだプログラムの提案は、館長自身の理論と実践に裏打ちされた当牧場でなければ体験できないプログラムでしょう。また、地域の特性を生かし、宿泊希望者にはキャンプ方式(テント持参)で受け入れ、キャンプ場利用者には自家生産の食材を提供するなど、広大な敷地を有効活用もしています。
 平成11年の受け入れ開始から6年が経過し、平成16年の受け入れは5,000人を上回るとうかがいました。館長の「総合的な学習の場として牧場を提供することにして本当に良かったと思います」との言葉は印象的で、自信に裏打ちされているものと感じました。自らの酪農経営を大幅に変えることなく家族の理解と協力のもとに自らも楽しみながらの子どもたちへ酪農家からのメッセージを伝えています。最後に館長はじめ体験館の皆さんが、健康で明るく更なる発展をされるよう願っています。

人見みゐ子さんのプロフィール
昭酪農経営  乳牛50頭  経営耕地5ha
和24年   開拓農家の6人兄弟の長女として生まれる
昭和42年  開拓農家の長男と結婚酪農の道へと入る
昭和63年  酪農経営者となる
平成元年   黒磯市農業指導士
平成8年   農村婦海外研修(スイス、ドイツ)
平成11年  体験館-TRY-TRY-TRY-オープン
       黒磯市農業委員
       地域交流牧場全国連絡会入会
平成12年  教育ファーム研修(イギリス)
平成13年  食と農、自然に学ぶ(ネパール)
平成14年  農家レストランオープン
平成14年度 栃木県女性農業士
平成15年  女性農業者リーダー交流(アメリカ派遣)
受 賞
 毎日農業記録賞(優秀賞)
 くらしとおかね体験作文 第3部門(特賞)
 地域に根ざした食生活推進コンクール2001(優秀賞)
 (農林水産省総合食料局長賞)

(参考)子ども達の感想文・礼状

 ぼくは、ちちしぼりやえさやりを体験して、らく農の仕事はたいへんなんだなあと思いました。一番心に残った体験はちちしぼりです。牛のしぼりたての牛乳はとてもあたたかくてすごくあまかったです。えさやりをしたときに、となりの牛がえさをよこどりして食べていました。もりもりいっぱい食べていたのでびっくりしました。牛とさんぽをして、とても牛が速いのにびっくりしました。バター作りやソーセージ作りもとても楽しかったです。(小山市立小山第三小学校 4年1組 O君)

 わたしは牛を見に行ったことはあるけど、牛をさわったことはありません。わたしが一番心に残ったことは、ソーセージやバターを作ったことです。なぜかと言うと、みんなで楽しくできたからです。みんなで牛のせわをすることになったとき、ブラシで牛のしっぽをやってあげたら、人見さんに「上手ね。」と言われたので、とてもうれしかったです。(小山市立小山第三小学校 4年1組 kさん)

体験館のおばさんへ
 おばさん朝五時におきてたいへんですね。そのころ、ぼくは、ふとんの中です。ぼくは、おばさんの話を聞いたあと、たまごとりににわとりごやにいきました。親鳥がたまごをあたためると、ひなになるといいますが、本当なのか、ひなになるところみてみたいです。いろいろなお話をありがとうございました。(東原小学校 3年1組 K君)

体験館のおばさん・おねえさんへ
 11月20日には、ありがとうございます。ちょうしんきで、しんぞうの音をきいたり、とてもおもしろかったし、牛には、いぶくろが4つあることなど、いろいろ勉強になりました。そのほかにも、牛のふんはやさいのえいようなどになることがわかりました。どうもありがとうございました。


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