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3 農業体験受入農家・団体実態調査

1 鉢ヶ峯営農組合 フラワー農園コスモス館

(1)受入場所に関する事項

ア)最寄り駅
 泉北高速鉄道泉ヶ丘駅から南海バス「鉢ヶ峯」行き(約15分乗車)「コスモス館前」下車徒歩1分。自家用車の場合は、阪神自動車道堺インターから堺かつらぎ線(泉北2号線(府道61号))を南に8km(約15分)。

イ)体験メニュー
 土つくり、植え付け、栽培管理、収穫(水稲、大豆、野菜、花卉)、餅つき、豆腐・味噌作り(大豆加工)ただし、小学生までは、田植え・稲刈り体験。
 中学生、養護学校生は1日から5日間の職場体験学習として実施。

ウ)地域の特色
 鉢ヶ峯営農組合がある鉢ヶ峯地区は、堺市南部の丘陵地に位置し、人口16万人を有する泉北ニュータウンに隣接し、就労条件の良さから農家の兼業化が進み、新規就農者の参入も農地の高価格から期待できない都市的地域である。
 ほ場整備事業等の実施を契機に受益農家全員(86名)による鉢ヶ峯営農組合を組織し、整備後の29haの農地において集落営農方式による農業を展開している。
 営農面では花壇用苗物の生産や農産物の直売を始め花摘みや野菜のもぎ取りなど、優良農地の保全とともに農と都市市民との交流の場ともなっている。

エ)組織の属性等ネット情報の確認
 代表者:北野 源一(キタノ ゲンイチ)鉢ヶ峯営農組合 組合長
 担当者:田中 延佳(タナカ ノブヨシ)鉢ヶ峯営農組合 事務局長
 団体の属性:営農組合
 連絡先:〒590-0125 大阪府堺市鉢ヶ峯寺2866 コスモス館
 TEL:072-290-0505
 FAX:072-290-0505
 農業体験学習支援の内容:体験学習受け入れ
 受け入れ可能な人数:1日5人程度まで

(2)受け入れ場所(組織)の特色に関する事項

ア)交通の便
 泉北高速鉄道泉ヶ丘駅から南海バスが1時間に2本程度運行され乗車時間も15分程度であり利便性は良好です。また、自家用車を利用する場合、十分な駐車スペースがあります。

イ)特にユニークだと思われる組織・体験メニュー等
 組織は、農家による営農組合ですが、もぎ取り園をきっかけに都市住民との交流を本格的に始めることとなりました。平成4年の花摘み園・芋掘り園を手始めに、翌5年には花や野菜などの収穫が体験できる「体験農園」さらに6年からは「オーナー農園」7年にはオーナー農園を発展させた「農業体験道場」が開始されました。加えて同時期に「ホビー農園」を始め、9年には、常設の直売所「コスモス館」がオープンしました。
 このような経過の中で、現在の営農組合の耕地面積は約29ha。内容は、水田(水稲及び大豆等転作作物の栽培)、普通畑(野菜及び四季の花の摘み取り)、花卉のハウス(野菜・花卉等の苗の生産)、及びホビー農園(貸し農園)等となっています。
 事業の柱となっているホビー農園(貸農園・1区画20平方メートル・160区画)事業は、耕起・苗の配布・技術指導を営農組合が行い、年4回のイベントを通じて農と住民との農業交流の場となりました。
 農産物直売所「コスモス館」では、新鮮な農産物を販売するだけでなく、来訪者には圃場から直接収穫してもらい、コスモス館で料金を清算する参加型の販売方式を採用しています。
 平成11年からは農作業を都市住民がボランティアで手伝う「農作業応援団」が組織され、土・日・祝日には30人程度が無償で農作業を手伝っています。参加者は20〜30代の若手から40代の働き盛りの人、50代の定年間近の人、60代の人と各世代にわたっています。個人での参加が多いのですが、中には夫婦や家族揃っての参加している方々もいます。職業は自営業、サラリーマン、教員など多様で、女性の参加も目立ちます。農作業はほとんどの人が素人でしたが、今ではトラクター、コンバインなど農業機械を使いこなす人も見かけられるようになりました。参加の動機は、「家庭菜園をしているので野菜つくりの技術を学びたい」「将来は農業に従事したい」「定年退職後には田舎で自給自足の生活がしたい」「農作業は体力的にはきついが、精神的には癒され、仕事で蓄積された精神的ストレスの解消のために行っている」などさまざま。
 営農組合の非営利事業として小・中学校等からの要請による農業体験学習の受け入れを行なっています。小学生までは、田植え・稲刈り体験。中学生、養護学校生は1日から5日間の職場体験学習として実施しています。
 中学生では1、2年生を対象に、職場体験学習の一環としての農業体験学習を要請されました(平成13年度4回延べ16人、平成16年度中学校6校延べ25人)。なお、堺市に隣接する和泉市立中学校からも要請があり2年生5名を受け入れています。

(3)問い合わせ事項の内容等

 近隣の中学校から3学期に農業体験学習を要請されましたが、営農組合では各作物の生育ステージを考慮し、原則は4月から11月までの受け入れとしています。
 堺市には97校の小学校があり、そのうち1/3の約30校(3年生が中心)が見学研修に訪れ、花卉ハウスの説明を行ないました。
 当組合ではホームページは開設していませんが、ネットで情報を得た方からの照会が数多くあります。そのほとんどは教育関係者以外の方となっています。また、平成15年は県外から28団体、平成16年は7団体が視察に訪れました。

(4)利用者の声

 当組合の小・中学校からの要請による農業体験学習の受け入れは、営農組合の社会事業活動として無償で実施しています。ほとんどの学校からは、校長先生、担任からの礼状と一緒に生徒個々人の礼状(感想文)が届きます。生徒からは率直に「初めての体験、触れることの全てが珍しく、感動しながら学習できた」とする感想が寄せられています。中には、田植え〜稲刈りなと3回に渡る体験学習で、担任の先生がその間の水稲の生育を追跡し、写真パネルとして事後学習に活用している事例もありました。

(参考)子ども達からの礼状  昨日はいろいろとおしえていただきありがとうございました。勉強になったこともいっぱいありました。ぼくは、正直もっとしんどくないと思っていたのですが、思っていたよりしんどかったです。また、5月にとりにいけたらとりに行きます。(平成17年2月 堺市宮山台中学校1年4組 U君)
 この前は、ありがとうございました。じゃがいもを植えるのは苦労したけど、育ったじゃがいもがおいしく食べられると思うと、うれしいです。最初は種で植えると思っていました。でも、じゃがいもを植えると知った時びっくりしました。勉強になりました。仕事したあとの、ココア緑茶おいしかったです。ありがとうございました。(平成17年2月 堺市宮山台中学校1年4組 K君)

(5)学校の先生への要望等

 学校側への要望として、事前打ち合わせ(下見)をお願いしたい。
 小中学校ともに事後学習が重要であると思う。
 3学期の体験学習の受け入れは馬鈴薯の植付けを行ないました。馬鈴薯の収穫期には生徒の学年が変わってしまいますが、受入れ側としては是非収穫体験もして、収穫の喜びも味わって欲しいと思います。

(6)意見交換

ア)農業体験学習の実施率が低い中学校向け実施メニューの提案について
 当組合での中学生の農業体験学習の受け入れでは、中学生向けの特別なメニューを用意していません。しかし、その都度学校側と打ち合わせを行ない、実施時期や期間を考慮してメニューを決めています。

イ)農作業応援団に対する営農組合としての対応について
 当営農組合の重要な戦力となりつつある「農作業応援団」は、当初は試行という感もあって「交通費、昼食等は各人負担、お茶等は各自で持参、万一の事故のため各人の負担で掛け金3000円の傷害保険に入ってもらうこと」としていましたが、最近では傷害保険の掛け金は営農組合で負担することにしました。
 また、農作業応援団に一定の面積に対する生産を一切任せ、収穫物は直売所のコスモス館で販売することを検討しています。

(7)受け入れに際して特に留意していること

 小・中学校の生徒だけでなく、家族を含め一般消費者の収穫体験等も受け入れているため、事故防止には特に注意しており、作業道具の使い方等の事前説明を徹底するようにしています。小・中学校とは事前打ち合わせ(下見を含め)を行なっています。
 全員が傷害保険に加入している学校も多いのですが、当組合では不特定多数を対象とした傷害保険に加入しています。
 過去の事故としては、コスモスの花摘み(9or10月)中に転倒したひょうしに鋏が足に刺さリ、救急車を呼んで病院に搬送したことがあります。

(8)調査員の所見

 大都市に近く、更には16万人が暮らす泉北ニュータウンに隣接した当地での農業は、都市化の進展に伴う農地の減少や農業後継者不足、農業従事者の高齢化、営農環境の悪化など多くの課題を抱えています。その中で新鮮な農産物の市民への供給、家族を含めた一般消費者に対する農業体験の提供など、優良農地の保全とともに消費者との連携に努めている姿に新しい風のながれを感じました。
 中学校の職業体験学習が実施される3学期は、作物の一番少ない時期であり、農作業も限定されるので、農業体験学習の時期としてはかならずしも適切な時期ではないことが残念そうでした。しかし別の見方をすれば、この時期は一般の来客が少ない時期であるため、営農組合の対応の面では都合がよいともいえます。
 子ども達を巡る事件が多発する中で、昨年受け入れたある女子中学生は5名中3名が茶髪であり、投げやりな態度が見られ当初は困惑したとのこと。しかしよく見てみれば、単調な農作業も途中で投げ出すことなく最後までやり遂げ、丁寧なお礼の挨拶と共に再開を約束して元気に帰途についたそうです。また、学級崩壊に直面した教師が農作業応援団に参加し、農作業を自ら体験することで、生徒への接し方も変わったという話をお聞きしました。これらの話しからは、農業体験学習は各種の農作業を通じ「初めての体験、触れることの珍しさ、感動しながらの学習」等を実感しながら自らを変える可能性を持っていることがわかります。もちろん研修生自らの謙虚な姿勢と同時に、体験学習をサポートしたスタッフ(農業のプロ集団)の適切な対応があっての結果ことですが、体験という行動の中に座学では得られないある種の力のようなものが潜在しているのではないかと感じられる話です。
 農業は他の産業(職場)と異なり動植物を育てることであり、当然失敗することもあります。現状での中学生の体験学習の受け入れは、1〜3日の農作業体験にとどまっているため、失敗を体験するほどの深い学習は行えません。今後の中学生向けのメニューの作成に当たっては、農業・農村体験学習のねらいを明確にし、学校行事の中で時間的ゆとりを持たせ、肥培管理の苦しみだけでなく、収穫・加工・販売等の喜びを実感できるようなものの作成が望まれます。実際、研修に参加した生徒も、作業は思っていたより大変だったが、収穫期にはまた来たいとの感想を寄せています。
 営農組合では広報誌を発行し、各種事業に直接参加しない組合員に対して情報の提供を行なっている。今後は、農業体験学習の受け入れに関する情報についても掲載し、更なる発展につなげていただけるよう期待しています。

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