第6章 >> 1. 林業家からのメッセージ

(3)井上さんのお話〜森林・林業について誤解していること

 ●木を伐ることは悪いことなの?
 いまだに木を伐ることは悪いことだと考えている人が多くて驚きます。自然保護、環境保全というと、木は伐ってはいけないのではないか、と思っている人がいます。人工林を適切に管理するには間伐という作業が不可欠ですし、その作業が遅れている森林が増えていることが問題となっていることを、もっと知って欲しいと思います。
 飯能市では、小学3年生の生活科で「私たちのまちを知る」という勉強があり、その中に“やまの仕事”というものがあります。また、飯能市周辺の木材を「西川材」と言いますが、地元ではそれなりに認知されているので、総合的な学習の時間でそれを取り上げ、範囲を広げて環境を含めて勉強する学校が多くあります。
 私は、林業にたずさわっている者として、授業で話す機会を多くいただいています。そのとき私が小学生にこれだけは理解して欲しいと思うのは、「地域に植わっているスギやヒノキの人工林は、人が利用するために植えて育てている木だということ」「その木々は最後まで人がきちんと面倒を見ないといけないということ」です。

 ●スギやヒノキの森よりもブナの森は偉い?
  マスコミの影響か、ブナ林が優れた森林だというイメージを持っている人がとても多くいます。ブナ林といっても、ブナだけで構成されているわけではありませんし、水の保水能力もブナの森林だけが特別に優れているということではないのです。ブナ林にはブナ林の特徴と役割があり、スギやヒノキの人工林には木材を産出するという目的がある、ということです。

 ●木という素材だからこそ伝えられること
 木材の特徴には、調湿効果や衝撃を和らげる作用があるため、木造校舎にした学校では風邪をひく子どもやケガをする子どもが減るということがよく言われます。しかし、それ以上に木造校舎の大切な意味があります。
 木造校舎の小学校の校長先生が言っていたことですが、「木材の床だと傷がつきやすく、力を加えるとすぐに傷がついてしまう。壊れないものを与えるのが教育ではない。傷つきやすい木材校舎だからこそ子どもたちにとって学ぶことがある」と言うのです。教育に対して深い含蓄を含んだ話ではないでしょうか。

 ●木材を輸入するとはどういうことか
 日本の木材自給率は、現在は約2割となっています。安い外材が大量に輸入されているのが現状です。その第一の原因は、国内の木材をトラックで輸送するよりも、船で外国から運ぶ方がはるかに安い値段だからです。
 しかし、外国から木材を運ぶと、おそらく大量の二酸化炭素を排出しながら運搬することとなります。
 しかも、現在の日本の一戸建ては、建築から建て替えまでの年数が平均で25年くらいと言われていますが、外国で100年かけて育った木で造った家をその程度の年数で取り壊していいものだろうかと、大変疑問に思います。

 以上のような、さまざまな矛盾点や一般には誤解されていること、理解して欲しい森林や林業のことを、山に来る人たちに説明することを心がけています。


第6章 参考コラム

1.東京農業大学環境教育支援センターとの連携によるA小学校のプログラム事例
(1)林業家・井上淳治さんと地域をフィールドとした活動
(2)井上さんのお話〜林業体験で知って欲しいこと
(3)井上さんのお話〜森林・林業について誤解していること

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