第3章 >> 3. 事前・事後学習の必要性

(3)アンケート結果による子どもの変化

 では、移動教室後、プログラム内容の異なる3校の子どもたちに、どのような教育的効果が見られたのでしょうか。アンケートは5段階評価の点数をつけ、現地プログラム実施前と実施後の平均値の変化で判断しました。平均値が、0.3点程度の増加傾向にあったものを十分な効果があったとし、調査生徒数と有効回答率は以下の通りとなっています。

調査対象者数および有効回答率

単位:%
  A小学校 B小学校 C小学校
  調査生徒数 有効回答率 調査生徒数 有効回答率 調査生徒数 有効回答率
事前調査 146名 76.0 111名 100.0 60名 100.0
事後調査 97.9 96.4 98.3

●A校の場合
 子どもの自主性を重視したA校の場合、子どもたちは予期しないことが起こる自然の中でそれぞれ新しい出会いを持ちながら、自主的に判断して行動する場面が多かったといえます。
 また、子どもにとって効果の上がった項目については、子どもの参加したコースごとに、プログラム内容との関連性が高い項目ほど効果が上がっているという傾向が見られました。

A小学校におけるアンケート結果表
項目 全体 森班 川班 リンゴ班
1今何をすればよいか、自分で見つけることができる 0.42688 0.3144 0.62139 0.33333
2木の家に住んでみたいと思う(木の家イエが好きだ) 0.06073 0.04735 0.12808 -0.03703
3森林での遊び方に関して、自分のやりたいことを持っている 0.10362 -0.16098 0.23856 0.24815
4食べていい木の実や山菜を知っている 0.19535 0.05113 0.28079 0.2963
5水をもっと大切に使う必要があると思う 0.0385 0.10228 0.08022 -0.08519
6森林に入るときに、すぐに入ることができる 0.27287 0.42803 0.15623 0.2037
7自然の中に行イくと新しい発見がある 0.31292 0.44697 0.12175 0.44444
8自分の力で問題を解決しようとする 0.17364 0.11174 0.31246 0.1037
9新しい友達を簡単に作ることができる 0.08605 -0.01325 0.03871 0.2963
10森林にいるときに誰とでも一緒に仕事が出来る 0.09793 0.25189 -0.07952 0.15556
11友達よりうまくできないことがあってもいやになったりせず頑張り通すことができる -0.01033 0.11175 -0.21112 0.10741
12自然と人間の生活には深い関わりがあると思う 0.1199 0.16667 -0.06756 0.22222
13森林の中には、たくさんの動物や虫が住んでいる -0.1571 -0.13826 -0.25475 -0.05556
14人前で自分の意見を言うことが出来る -0.11343 -0.17424 -0.02815 -0.05555
15必要なときにありがとう、ごめんなさいが言える 0.07131 0.22727 0.05489 -0.03704
16自然の中の活動は気持ちがいい -0.04858 -0.02841 -0.2449 0.16297
17困っている友達を助けてあげることができる 0.11706 0.26515 0.10767 -0.02223
18農業や林業は人間の生活と深い関わりがあると思う 0.14651 0.13637 0.00282 0.37778
19歩いている途中で疲れても、文句を言わないで歩き通すことができる -0.39845 -0.35417 -0.3005 -0.61852
20決められた時間に遅刻しないで行動することができる -0.17416 -0.07386 -0.27868 -0.18148
21森の近くに住んでみたいと思う -0.19302 -0.46401 0.03941 -0.12593
22できないことがあるとできるようになるまで努力し続ける方だ 0.03359 -0.00379 0.17734 -0.01481
23友達が失敗しても許すことが出来る 0.11473 0.26894 -0.18719 0.36667
24森林は人間が手入れをする必要があると思う 0.09044 0.5303 -0.24701 -0.14074
25出かけるときには、何が必要なのか自分で判断し必要なものを持って行くことができる 0.14909 0.08712 0.08726 0.23334
26みんなのできないような難しいことにも挑戦する方だ 0.07364 -0.05303 0.33568 0.0037
27草花や自然の景色を見て感動することがある -0.05839 -0.09849 0.03307 -0.01852
28自分が悪いことをした時には、すなおに反省できる 0.17777 0.12879 0.14638 0.25556
29将来、森林を守る仕事に就きたいと思う -0.00698 -0.16856 0.0753 -0.0074

 プラスの効果があった項目は、全体では「1 今何をすればよいか、自分で見つけることができる」「7 自然の中に行くと新しい発見がある」となりました。
 また、コース別に見ると、いくつかの特徴が見られます。
 森グループでは「6 森林に入るときに、すぐに入ることができる」「7 自然の中に行くと新しい発見がある」「24 森林は人間が手入れをする必要があると思う」といった森林や自然に関する項目に効果が見られました。農業(りんご班)についても同様でした。
 マイナスの効果があった項目についてみると、全体では「19 歩いている途中で疲れても、文句を言わないで歩き通すことができる」があります。これは、森林の斜面を歩くこと、田んぼのあぜ道を歩くこと、川の中を歩くこと、というこれまでに体験したことのないことが強いインパクトとなって表れた結果であり、必ずしも教育効果が上がらなかったとは言えません。生徒の感想文の中でも、この点は記述されていました。
 また、子どもたちは、ノコギリを使うことやヘルメットをかぶること、現地のインストラクターや農家の方々との交流が強く印象に残っていることが、作文での記述より明らかになっています。村での自然体験学習や教員以外の大人であるスタッフとの交流が、子どもたちの意識変化に大きな影響を及ぼしていることが見て取れます。
 A校では、事前学習の取り組み方、村での自然体験学習のプログラムのあり方や事後学習(ふりかえり)等、一連のプログラム内容は一定程度の効果があったものと言えます。

●B、C校の場合
 対してB校では、変化のあった項目が5項目(プラス項目)、C校では3項目(マイナス項目)という結果となっています。具体的には、B校のプラス項目は、「1 今何をすればよいか、自分で見つけることができる」「10 誰とでも一緒に協力して仕事ができる」「14 人前で自分の意見を言うことができる」「19 歩いている途中で疲れても、文句をいわないで歩き通すことができる」「22 できないことがあるとできるようになるまで努力し続ける」等です。また、C校でのマイナス項目は、「15 必要なときにありがとう、ごめんなさいが言える」「19 歩いている途中で疲れても、文句を言わないで歩き通すことができる」「23 友だちが失敗しても許すことができる」となっています。
 2校の結果で特徴的なことは、農業や森林、林業、自然に関する項目で変化が一切みられないことです。

 事前学習とプログラムを実践するまでの経緯、事後学習の重要性がうかがえます。

B,C小学校におけるアンケート結果表
項目 B小学校 C小学校
1今何をすればよいか、自分で見つけることができる 0.54 -0.28
2木の家に住んでみたいと思う(木の家イエが好きだ) 0.22 0.06
3森林での遊び方に関して、自分のやりたいことを持っている 0.20 0.01
4食べていい木の実や山菜を知っている 0.19 0.09
5水をもっと大切に使う必要があると思う 0.20 -0.13
6森林に入るときに、すぐに入ることができる 0.22 -0.18
7自然の中に行イくと新しい発見がある 0.23 -0.06
8自分の力で問題を解決しようとする 0.14 0.06
9新しい友達を簡単に作ることができる 0.19 -0.07
10森林にいるときに誰とでも一緒に仕事が出来る 0.41 -0.14
11友達よりうまくできないことがあってもいやになったりせず頑張り通すことができる 0.17 0.21
12自然と人間の生活には深い関わりがあると思う 0.20 -0.07
13森林の中には、たくさんの動物や虫が住んでいる -0.20 0.03
14人前で自分の意見を言うことが出来る 0.50 0.00
15必要なときにありがとう、ごめんなさいが言える 0.16 -0.31
16自然の中の活動は気持ちがいい 0.09 -0.20
17困っている友達を助けてあげることができる 0.14 -0.14
18農業や林業は人間の生活と深い関わりがあると思う -0.15 0.04
19歩いている途中で疲れても、文句を言わないで歩き通すことができる 0.29 -0.38
20決められた時間に遅刻しないで行動することができる 0.12 0.10
21森の近くに住んでみたいと思う 0.08 0.14
22できないことがあるとできるようになるまで努力し続ける方だ 0.29 -0.15
23友達が失敗しても許すことが出来る 0.18 -0.53
24森林は人間が手入れをする必要があると思う -0.08 -0.02
25出かけるときには、何が必要なのか自分で判断し必要なものを持って行くことができる 0.08 -0.20
26みんなのできないような難しいことにも挑戦する方だ -0.07 0.08
27草花や自然の景色を見て感動することがある 0.28 -0.25
28自分が悪いことをした時には、すなおに反省できる 0.16 -0.22
29将来、森林を守る仕事に就きたいと思う 0.09 0.04


第3章 森林・林業体験学習の取り組み方

1.体験学習のねらいの明確化

2. 企画の立て方とプログラムの組み方

3. 事前・事後学習の必要性
(1)比較対象校について
(2)事前・事後学習の取り組み
(3)アンケート結果による子どもの変化

このコンテンツのすべての画像、文字データについて無断転用・無断掲載をお断りいたします