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4 職場体験実施後の学習について

職場体験後のまとめ・体験発表会などの取組

1 広島県庄原市立高野中学校を訪ねて

お礼状の作成と職場体験発表会

ルポライター 西村 良平

2年生全員が主産業の農業を体験

 広島県庄原市立高野(たかの)中学校は、各学年1学級で、

 1年生22人(男子11人、女子11人)
  2年生19人(男子 9 人、女子10人)
  3年生20人(男子 6 人、女子14人)

の合計61人の生徒が在籍する(平成20年4月現在)。

 このうち、2年生(学級担任、横山博之先生)の19人は6月と9月の2回に分けて職場体験学習に取り組む。

 6月は11〜13日(水曜〜金曜)の3日間、地元の主産業である農業の職場体験をする。9月は25、26日(木曜、金曜)の2日間、地域の事業所での職場体験となる。

 農業の職場体験のほうは、つぎの7経営のところに出かけた。

 だいこん農家(2人)
 ほうれん草農家(2人)
 いちご農場(3人)
 りんご農家4経営(各3人、計12人)

 一方、事業所の職場体験のほうは、消防署、社会福祉協議会、市役所高野支所、保育所、スーパー、レストラン、森のサラダ館あしび(レストラン、農産加工室と直売所)に分かれていく。

 農家と事業所、両方の職場体験をすることで、地域の仕事を複眼的にとらえていける。それとともに、事業所での体験と比べることで農業の仕事の特質がくっきりと見えてくることになる。

 高野中学校では、体験学習でコミュニケーションの力をつけることを重視する。そのような点から、体験後のまとめ学習にも力を入れ、それを情報発信することで特色のある体験学習としている。

職場体験を新聞にする

 高野中学校の2年生は、農家での職場体験を終えると、それを新聞の紙面のスタイルにまとめる。出来上がった「リンゴ新聞」「大根新聞」など、それぞれの新聞が教室前の廊下に張り出される。

 そして、中国新聞「みんなの新聞コンクール」に応募する。受付期間が7月1日から9月6日までなので、ちょうど6月の農家での体験学習をまとめるのに適した時期に新聞を作成でき、コンクールに応募できる。

 このコンクールは中国新聞社と広島国際文化財団が主催するもので、20年度は第8回の開催となる。これまでで最多の応募総数1万3,325点(小中高生のべ1万5,600人)となっている。児童生徒が新聞づくりの体験を通して活字に親しみ、自ら学ぶ力を養うことを大きなねらいとしている。

 審査は6部門からなり、ジュニア新聞、新聞切り抜き作品、新聞感想文、学校新聞、PTA新聞、ファミリー新聞に分かれている。対象は中国地方の小学校、中学校、高校、特別支援学校のPTA、児童生徒および家族で、個人あるいは学校単位での応募となる。

 高野中学校の2年生が応募したのは、ジュニア新聞の部門。小中学生が対象でテーマ・内容は自由、B3判の応募用台紙を使って手づくりで紙面をつくる。

 なお、主催者は募集にさいして次のような学習指導要領の動きを伝えている。

 ……2009年4月から、移行措置として先行実施もされる、小中学校の新しい学習指導要領では「新聞」を活用する学習が盛り込まれています。例えば、「中学校・国語(3年)」では「社会生活のなかから課題を決め、取材を繰り返しながら、自分の考えを深めるとともに、文章の形態を選択して適切な構成を工夫すること」などとされています。

 高野中学校の生徒たちは、新聞のスタイルにまとめることを通して、体験で得た知識や感想を広く人に伝える形で整理し、興味を持ってもらい、わかりやすい情報を提示していこうとしている。そしてコンクールの入選者も出してきている。

摘果作業の体験を伝える「りんご園新聞」

 「りんご園新聞」(RINGO園新聞)には、職場体験学習の摘果作業が記事となっている。6月11、12、13日に地域のリンゴ農家の島津宏さんのところに生徒3人が出かけたときのレポートだ。

 「朝は8時30分に集合しました。そして1日目、私達は摘果作業を行いました。摘果作業とは、複数集まったりんごの実の中で1番大きな実を残す作業の事です。しかし、実の表面が虫にくわれていたり、傷がついていたりするとその実はいくら大きくても落とさなければなりません。」
と記事を書き出して、初日の感想を添えている。

 「なれない仕事で、少しとまどいました。木の上の方をやる時は、はしごを用いて作業しました。思ったより高くて怖かったけど、気合いでがんばりました。」

 2日目のレポートでは、
 「私達が作業している品種は『つがる』です。島津さんの話によると、『つがる』は作業しやすい品種だから、この時期来る私達のような職場体験者にさせてくれるそうです。」

 この日の感想として、
 「1日目よりはしごが上手に活用できるようになったと思います。暑かったので疲れが一段とたまりました。」
と書いている。

 最終日、3日目のレポートでは、
 「2日目よりも一段と暑かったです。暑くて死ぬかと思ったけど島津さんが2時間おきに休けいを下さったので良かったです。農家の人達のしんどさが理解できたと思います。それと天気によって仕事の疲れが大きく違う事を学びました。」
と体験しなければわからなかったことを記している。作業を終えて、

 「3日間で2列と半分くらいの量を摘果しました。1列約100メートルときいたので驚きました。」

と数字で仕事の全体量をとらえながら、実感も書いている。

 リンゴの品種も勉強して、15の品種名を「新聞」に載せた。

 1 つがる
 2 紅将軍
 3 千秋
 以下、4 こう林、5 ひめかみ、6 秋茜、7 ゴールデン、8 ジョナゴールド、9 清明、10 紅玉、11 シナノスィート、12 陽光、13 北斗、14 王林、15 フジ。

 そして、食べ頃を

 1〜3 は 9月
 4〜14は10月
 15は11月

と書いている。ただ品種を並べただけでなく、食べごろによって分類し、この新聞を読む人に役立つ情報としている。

 その後のところに「島津さんの声」が載る。これで、島津さんがどんな声をかけてもらっていたのかがわかる。

 1日目「初めての作業で分からない事もあったと思いますが、まじめに楽しく出来たと言ってくれました。」
 2日目「大変暑い1日になり、その中でがんばってくれました。つらい面も理解してくれたと思います。」
 3日目「3日間ご苦労さまでした。暑くて大変だったと思います。社会に出てから高野りんごをPRして下さい。」

● 紙面の最後に

 「りんご農家のこの時期の作業や苦労を知りました。この体験を通して色々な事を考えてみようと思います」と職場体験の感想をまとめている。この生徒にとって大きな経験であったことがわかる。

(繁田恵美さん「りんご園新聞より」)

図

職場体験新聞「りんご園新聞」

種まきや間引き、収穫を伝える「大根新聞」

 「大根新聞」には、だいこん農家、中村紀洋さんのところでの職場体験学習で、種播きから間引き、収穫、出荷までの一連の作業のようすが掲載されている。

 最初に「種播き」では、
 「大根の種はあずきの豆の1/2の大きさでとても小さいです。」
と種の形状を説明してから、どう植えるかを図解とともに伝えている。

 「中村さんがあらかじめ用意してくれたマルチの穴一つ一つに肥料をかけ、その上に土を少しかけ、拳で少しへこましてその中に種を3つほど播き、また土をかけ拳でおさえておきます。」

 そして作業の感想を書き添える。

 「しゃがみっぱなしなので、とても腰が疲れます。」

 別のマルチの穴で育っている大根の「間引き」では、

 「大きい葉や、真ん中よりの葉1枚だけ残して、あとは全部抜くという作業です。」

 この作業は「とても根気がいります。」といい、そのたいへんさをこう書いている。

 「抜く葉をすぐ見分けられるものや、見分けにくいものもあります。葉がよく育って近くで固まっているような所は、かきわけないと見分けがつきません。」

●「大根抜き」大根抜きでは2つのコツを紹介する。

 「1つ目のコツは、抜く大根です。大きい大根や太い大根だけを抜きます。小さいのや細いのはまだまだ大きくなるかもしれないので残しておきます。

 2つ目のコツは、大根の抜き方です。まず大根の葉の根もとの部分をもちます。そうするとスムーズに抜けます。抜いたあとは、5本ずつひものようなものでまとめておきます。」

 そして、数字を使って仕事の量を紹介する。

 「1日1200本、多くて2000本くらい抜くそうです。中村さん達は片手で、ひょいひょい抜いていました」
と農家の技術に目を見張っている。

●「箱詰め・出荷」

 まずは、大根をきれいにする。

 「葉っぱがきれいにそろうように先端の部分を切ったり、機械をとおして表面をブラシでていねいにみがいてきれいにしたあと、乾燥させて、いよいよ箱詰めです。」

 「箱は手づくりです。箱は100個以上は作っているそうです。」

と書いて、

 「大根の出荷時期は6月から11月までです。」

と作業の時期を伝えている。

 クイズも用意した。

 「大根農家でマリーゴールドを育てるのはどうしてでしょう?」

 1 虫よけのために使う
 2 出荷のため

 紙面の下に「答えは1」と小さく正解を載せている。

 職場体験を終えた感想として、

 「仕事の大切さ、苦労、努力が実ったらとてもうれしいということを学びました。この職場体験は人生の通過点だと思います。」ととらえ「将来に役立てていきたい」と結んでいる。

(金築晶さん「大根新聞」より)

図

職場体験新聞「大根新聞」

またやってみたいが過半数、生徒アンケート

 農業の職場体験学習を終えた生徒アンケート(回答数19)では、職場でのふれあいや充実度などをたずねている。充実した学習ができ、これからもこうした体験学習をしてみたいという回答が多かった。

Q1 自分の取り組んだ活動について、事前、期間中に家庭で話し合いましたか?

 ア よく話し合った 0
 イ 話し合った 8
 ウ どちらともいえない 7
 エ ほとんど話し合わなかった 3
 オ まったく話し合わなかった 1

Q2 職場の人たちとふれあうことが出来ましたか?

 ア よくふれあうことができた 1
 イ ふれあうことができた 10
 ウ どちらともいえない 6
 エ ほとんどふれあえなかった 2
 オ まったくふれあえなかった 0

Q3 あなたにとって,職場体験学習の3日間は、

 ア 大変充実していた  4
 イ 充実していた 11
 ウ どちらともいえない 5
 エ ほとんど充実していなかった 0
 オ まったく充実していなかった 0

Q4 今回のような活動(農業体験)を、

 ア 是非やってみたい 4
 イ やってみたい 12
 ウ どちらともいえない 3
 エ あまりやりたくない 0
 オ まったくやりたくない 0

職場体験からわかったこと

 生徒たちがアンケートで自由に書いた感想を見ていこう。

 ・いつもの授業とは違うことができ、農業体験で食べ物の大切さがわかった。
 ・間引きや種植は単純な作業だと思っていたけど、とても重労働なのだということを知った。
 ・暑い中、家族のために頑張る心を学んだ。
 ・りんごの摘果作業は難しかった。
 ・また、りんごの摘果作業をやってみたい。
 ・農業は大変だけど、苦労した分すごく充実感があった。
 ・厳しいこともいっぱいあったが、楽しかったし、農家の人たちともふれあえた。
 ・今回やった農業体験とは別の農家でも体験してみたい。
 ・ハウス内の仕事が暑くて大変だった。社会の人間関係の厳しさがわかった。
 ・疲れたけど楽しかった。
 ・朝早くから働かれているのがわかった。
 ・どんな風に収穫し、どんな風に出荷するのか学ぶことができた。
 ・先のことを考えながら色々なことをしていかないといけないと思った。
 ・わからないことをわからないままにせず、人に聞くことの大切さを学んだ。
 ・生活に関わることなので、失敗が許さない、大変な仕事だと思った。
 ・天気がよくてとても暑かったけど、人とのふれあいがとても楽しかった。
 ・天気によって疲れの量が変わる。毎日ずっと同じ仕事だから根気強さが必要。
 このように生徒たちは職業体験からさまざまな学びをしていった。

(以上、第2学年通信「STEP」6月20日発行号より)

事業所での職場体験

 なお、9月の事業所体験では、消防署、社会福祉協議会、市役所高野支所、スーパー、レストラン、森のさらだ館で職場体験をしている。

 レストラン「りんご畑」は地域の女性たちが地元の農産物を食材として提供する店で、農業とのつよい結びつきのある店だ。森のさらだ館も農産物の直売や加工、レストランで働くことができる。

 9月の事業所での職場体験を終えての生徒たちのアンケートでは、人とのかかわり、コミュニケーションでの感想が多かった。たとえば、

 ・子どもと遊ぶのがとても楽しかった。常に笑顔を絶やさないことを学んだ。
 ・お年寄りの方とお話をすることの大切さを学んだ。
 ・人とのふれあいがたいせつだと言うことを学んだ。
 ・あいさつは大きな声でしなくてはいけないことを学んだ。

などと書いている。

 6月に農業体験で感じたことと合わせて、職業について多角的に学べている。農業の分野でもコミュニケーションの大切さが指摘され、それを事業所の体験で一層、強く感じるようになっている。

図

ハウスでのホウレンソウの収穫

図

イチゴのハウスでは
摘花、摘葉の作業をした

クラス内の体験発表

 高野中学校では、2年生の職場体験の発表を秋に2回、実施している。

 第1回目の発表は10月31日のクラス内発表会。第2回目は11月15日の文化祭での全校生徒に向けてのものとなる。

 第1回目のクラス内発表会は、総合的な学習の時間の単元名「生き方を学ぶ〜 職場体験学習を通して」として実施された。高野中学校は平成19・20年度の広島県備北教育事務所教育実践指定校であり、教育研究会での公開授業となっている。

 これは「職場体験のまとめと、人生のイメージ作成」を学習内容としていて、

(1)発表会の目標
 これまで学んだことを振り返り、 自らの生き方を主体的に追究する態度を身につける

(2)観点別評価規準
 学んだことを振り返り、今後の学習や生活に生かそうとしている(将来設計能力)

(3)準備物
 発表用資料、パソコン、プロジェクター、ワークシート

となっている。まず「職場体験学習でのエピソードなどを想起させる」。そして、発表会は生徒の司会によって進めることが指導上の留意事項となっている。

 冒頭で生徒が体験学習の全体の説明をする。

 「私たちは2年生の総合的な学習の時間で、6月にはりんご農家、だいこん農家、ほうれんそう農家、いちご農場で3日間の農業体験を行い、9月には消防署、社会福祉協議会、新市保育所、高野支所、スーパー岩倉、 レストラン「リんご畑」、森のサラダ館「あしび」の7か所で2日間の事業所体験を行いました。

 それぞれの体験に向けて、履歴書を書いたり、体験先の方との打ち合わせを行ったりする中で、 自分の長所や意欲をアピールすることの難しさや大切さ、コミュニケーションの重要性を実感しました。

 実際に職場で働かせていただく中で、仕事の大変さや、 1日やり終えたときの充実感、職場の方の仕事に対する意識の高さなど、普段の学校生活では経験できないことを数多く体験しました。

 そして、職場体験のまとめをしていく中で、自分の生活を振り返り、将来の夢の実現に向けてマイキャリアプランを作成し、人生のイメージを作ってきました。」

 発表で注意する点を述べる。

 「今日は、職場体験学習のまとめの発表と、マイキャリアプランの発表を行います。それぞれが学んだことを、みんなで共有し、お互いにしっかり学びあいましょう。

 発表する人は、発表するときの姿勢や声の大きさ、話す速さなどに注意して、みんなにわかりやすく発表できるよう心掛けましょう。聞いている人は集中して聞き、質問や新たな発見など、 しっかりメモをとりましょう。」

 ここからは、生徒がパワーポイントを活用し、「職場体験学習のまとめ」「私の人生のイメージ」を写真などを交えながら説明していく。

 担任の横山先生は発表の様子を見ながら発表する姿勢や声の大きさ、話す速さなどを必要に応じて助言をする。

 発表を聞いている生徒が質問や意見をいう。意見を言う生徒には、その理由をはっきり述べさせる。こうして何人かの生徒が感想を交流する。

 発表を聞いて、これからの自分の生活に生かしていこうと思うことをワークシートに書く。これまで学んできたことを振り返り、自分の生き方を主体的に追究する態度を身につけていけるようにするためだ。評価規準もこの点に設定している。

図

マルチが敷かれた畑での
大根の間引き

図

脚立に乗ってリンゴの摘果

文化祭での職場体験発表

 クラス内発表に続いて、11月15日には文化祭での発表となる。ここでは、他の学年の生徒にもわかりやすく発表できること、学んだことを振り返り、今後の学習活動に生かそうとすることが焦点となり、ここを評価する。

 生徒たちの職場体験学習の発表は、次のような形ですすめられる。最初に生徒3人が立ち、

 「僕たちは1回目の職場体験学習として、6月11日〜13日の3日間、農業体験を行いました。」と言って、だいこん農家、ほうれん草農家、いちご農場、以上、各1経営、それにりんご農家4経営の体験先と生徒(それぞれ2〜3人のグループ)を紹介する。

 続いて、5分ほどのビデオで農業体験全体の様子を上映する。その後、生徒が農業体験の全体を語る。

 「3日間、とても暑い日が続きましたが、どの農家の方も優しく指導して下さり、普段の授業ではできない、貴重な体験をすることができました。また、摘果や間引き、収穫など、単純な作業だと思っていたけど、1日やっただけでも腕や腰が痛くなり、重労働だということが分かりました。しかし、苦労した分、すごく充実感もあり、どんな食べ物も、たくさんの人の手が掛かっています。この農業体験を通して、食べ物の大切さはもちろんのこと、コツコツと地道に頑張ることの大切を学ぶことができました。」

 そのあとは、事業所体験全体についての発表となる。同様にビデオを上映し、全体の体験を語る。

 「事業所体験を通して、 どんな仕事でも、基本になるのはあいさつと掃除で、大きな声であいさつができなかったり、掃除を丁寧にできなかったりすると、社会に出て通用しないことも分かりました。体験した職種は色々とありましたが、あいさつや掃除はもちろん、仕事に対する姿勢や責任感など、これからの中学校生活にしっかりと生かしていきたいと思います。」

 次に、個別の職場での体験学習発表に移る。

 農業分野では、りんご農家、だいこん農家でのまとめの発表がある。事業所分野では、社会福祉協議会と「りんご畑」での体験のまとめが発表された。

図

職場体験学習「りんご」のプレゼンテーション

図

職場体験学習「だいこん」のプレゼンテーション

情報発信を軸とした職場体験のまとめ

 高野中学校の農家での職場体験学習では、事後学習に新聞づくり、そして発表会という2つの大きな柱がある。体験で得たものを伝える作業をしながら、そのなかでしっかりとポイントを整理することができる。それを通して、自分のなかで体験を反芻し、そこから人生の将来像を描くための思考を展開することにもつなげていける。また、農家と事業所、それぞれでの体験をすることで農業という仕事の特質を浮き彫りにすることも可能になる。

 このほか、体験先への礼状を書くことで体験を通して得た自分の思いや考えをわかりやすく相手に伝える学習もしている。

 礼状は、時候のあいさつから始まり、忙しいなかで貴重な時間を割いて指導をしていただいたことへのお礼が最初に書かれる。そして、体験で驚いたり、緊張して疲れたりしたことなどにも触れ、摘果などの仕事を覚えていくうちに作業が楽しくなったことなどが書かれていく。これからの学習にもこの経験を役立てたいなど、前向きな言葉も書く生徒もいる。

 このように職場体験をコミュニケーションという作業を通すことで、その意味をしっかりと咀嚼し、それによって考えを深めていく取り組みをしている。ここに高野中学校の職場体験学習の大きな特長がある。

●手紙の例

拝啓 うっとうしい梅雨の候となりました。島津さん、お元気でいらっしゃいますか。私は元気で学校に通っています。

 さて、先日の職場体験での三日間、大変お世話になりました。私は、今回の島津さん宅での職場体験をさせていただきました。この三日間で、りんご園の今の時期の仕事の厳しさや、楽しさを学ばせてもらいました。その他、休けいの時りんごやりんご煮といった、この時期食べられない物を出していただき、まことにありがとうございました。りんごを出していただいた時、はじめとても驚きました。そして食べてみると、とても甘くてシャリシャリとした食感で、顔がおもわずほころんでしまいました。本当にとってもおいしかったです。ありがとうございました。

 終わりになりましたが、本当にこの三日間、お世話になりました。それでは気候不順の折、ご自愛ください。乱筆をお許しください。

敬具

繁田恵美


拝啓 向暑のみぎり、お変わりございませんか。私は元気で暮らしています。

 さて、この度の職場体験では大変お世話になりました。りんごの摘果作業をさせていただきありがとうございました。摘果の説明はとても分かりやすかったです。摘果作業では、葉の多いところや、高いところが難しかったです。また、暑いのに作業をしないといけないということも大変でした。りんご作りの大変さがよく分かりました。青才さんにいただいた、さくらんぼやりんごジュースはとてもおいしかったです。三日間、ありがとうございました。

 みなさまの御多幸をお祈りします。

敬具

岩本有加


拝啓 初夏の候、6月だというのに、だんだん暑くなってきました。皆様お元気でいらっしゃいますか。私は相変わらず元気で過ごしております。

 さて、先週の職場体験学習では、大変お世話になりました。中村様のご説明は、とてもていねいで分かりやすかったです。今回の職場体験学習は、とても充実していて、これからの人生でとてもいい経験になると思います。私が一番心に残った作業は、間引きと種植えです。この作業は、しゃがみっぱなしでとても根気のいる重労働でした。この作業をいつもやっておられる中村様はすごく精神力が強い方だと、とても尊敬しました。

 ところで、お土産にもらった大根、すごくおいしかったです。家族も大絶賛でした。辛味がまったくなく、さすが苦労して作っている大根だと思いました。苦労した物ほどおいしいものだと改めて実感しました。

 私がこの職場体験学習で学んだことは、大根の作業はとても工夫がいる作業だということです。これからもお体に気をつけて元気に頑張って下さい。

 皆様の御多幸をお祈りします。

敬具

金築 晶


【学校紹介】

図

庄原市立高野中学校

豊原芳史校長
各学年1学級 全校生徒61名、教員数16名
所在地 広島県庄原市高野町新市1289番地
電 話 0824―86―2221
FAX 0824―86―2248

中学校は高原地帯の農業のまちにある

 庄原市立高野中学校は、広島市から車で1時間30分ほどの高原地帯にある。ここは県最北端で隣は島根県となり、過疎化や高齢化が進行している。2005年3月に高野町が合併で庄原市となった地区にある唯一の中学校である。校区の中心的な産業は農業で約10億円の農業生産額がある。リンゴやダイコンは地域の特産品となっている。高野中学校には農家の子どもたちがおおぜい学んでいる。

 中学校では「総合的な学習を核にキャリア教育の推進を図る」(自己表現力の育成)という研究テーマが設定され、全学年ですすめられている。キャリア教育は、総合的な学習の時間での取り組みを中心としたもので、それまでの職場体験学習をベースにして組み立てられ、今年で4年目になる。広島県備北教育事務所教育実践指定校として総合的な学習の時間を用いて、自己表現力の育成を重視したキャリア教育を推進する。

図

職場体験新聞「りんご園新聞」

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