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1 農を取り巻く現状

生徒が食糧問題に主体的に取り組むために
様々な課題発見の方向性

ルポライター 甲本 征之

1 世界の人口増加と食料事情

●1950年から2000年の50年間で36億人増加、2000年から2050年の50年間で31億人増加

 世界の人口と将来予測(2006年国連人口推計)によると、1950年には25億人だった世界の人口が2000年には61億人、2005年には65億人、2015年には73億人、2025年には80億人と増え続け2050年には実に92億人と大幅に増加すると予測されています。

 このうち開発途上国の人口は79億人まで増加すると予想されており、食料需要の一層の増大が見込まれます。特に、世界の人口の4割を占める中国とインドは、今後、急速な経済成長が見込まれ、両国の食料需要の変化が世界の食料需要に大きな影響を及ぼすと考えられます。また、所得向上による食生活の変化に伴う畜産物・油脂類の需要増加は、飼料穀物や油糧原料の需要増加をもたらし、2050年の世界の穀物需要は、1999〜2001年の1.6倍(30億t)に増大すると予測されています。

● 世界の食料事情は将来ひっ迫

 世界的な人口増加や中国などの途上国の経済発展に伴い、畜産物の需要が増加し、穀物需要をさらに増加させる要因となってくることなどから、世界の食料需要は大幅に増加するものと見込まれています。

 一方、供給面では地球の温暖化の進展や砂漠化の進行などによる農地の縮小、単位面積当たり作物収量の伸びの鈍化等の不安定要因などが、農業生産に影響を及ぼすものと考えられ、今後、食料供給力の大幅な拡大は期待しにくく、世界の食料需給は中・長期的にひっ迫する可能性があります。

● 増大する食料需要に対応するためには

 今後、増大する食料需要に対応するためには、技術革新によるさらなる単収の増加を実現することが課題となっています。また、人口増加や経済発展により水の工業利用や生活利用の割合が上昇し、さらに我が国が輸入生産物の多くを依存する米国や豪州をはじめとして、将来的に局地的な水不足が懸念される国・地域が存在しています。

● バイオ燃料の需要拡大が世界の食料需要に影響を及ぼす

 これらに加えて、近年、原油価格の高騰や地球温暖化対策を背景として、世界的にバイオ燃料の需要が高まっていますが、特にとうもろこしやさとうきびを原料とするバイオエタノール生産は、米国やブラジルを中心に急速に拡大しており、食料需要との競合が大きな問題となっています。このため、バイオエタノールをはじめとするバイオ燃料の需要拡大が世界の食料需要に影響を及ぼすことが懸念されています。

 例えば、米国のとうもろこしの生産に占めるバイオエタノール用の割合は増加傾向にあり、2007年には25%(32億ブッシェル(8,100万t))で、また、2016年には生産量に占める割合が3割になると見通されています。米国のとうもろこしは、世界の輸出量の6割を占めており、世界全体の需給に多大な影響を及ぼす可能性があります。

図

表―1 世界の将来人口

単位:万人

国名2005年2015年2025年2050年
世界計651,465729,514801,051919,129
フランス6,0996,3756,5776,827
ドイツ8,2658,1838,0347,409
イタリア5,8655,9005,8085,461
イギリス6,0476,2796,5196,872
ロシア14,39613,64812,81910,783
カナダ3,2273,5193,7914,275
アメリカ29,98532,90135,49340,242
メキシコ10,42711,57612,47013,228
ブラジル18,68321,06522,88325,409
インド113,440130,254144,750165,827
タイ6,3006,6766,8806,738
日本12,79012,66112,16110,251
中国132,051138,860144,578140,885
大韓民国4,7874,9124,9024,233
オーストラリア2,0312,2402,4392,804

資料:ポケット農林水産統計

表―2 世界の穀物生産量、単収の動向

1961〜1963年2003〜2005年
穀物収穫面積(億ha)6.56.8
穀物生産量(億トン)9.221.9
穀物単収(トン/ha)1.43.2
人口(億人)31(1962年)65(2005年)
1人当たり穀物収穫面積(a/人)20.8(1962年)10.5(2005年)

資料:FAO “FAOSTAT

表―3 各国の1人1年当たりの供給食料

単位:kg

穀類肉類油脂類
1965→20021965→20021965→2002
日本150.0→113.8
2割減
11.1→43.9
4倍
6.4→15.9
2.5倍
アメリカ84.3→112.5
1.3倍
93.7→124.1
1.3倍
23.8→34.0
1.4倍
イギリス106.3→106.4
ほぼ横ばい
70.9→80.7
1割増
26.5→24.1
ほぼ横ばい
フランス120.2→117.3
ほぼ横ばい
81.4→102.3
1.3倍
20.9→37.0
1.8倍
ドイツ104.6→106.9
ほぼ横ばい
68.0→82.3
1.2倍
31.0→40.5
1.3倍
韓国183.7→151.7
2割減
4.9→49.2
10.0倍
1.0→15.2
15.2倍
中国149.9→166.6
1割増
9.1→52.5
5.8倍
2.3→11.9
5.2倍
インド145.5→157.8
ほぼ横ばい
3.7→5.2
1.4倍
5.1→11.8
2.3倍

資料:FAO FAOSTAT

● 単収の伸びは鈍化傾向

年率
1961〜63年1.41トン/ha
3.0%
1971〜73年1.90トン/ha
2.0%
1981〜83年2.31トン/ha
1.7%
1991〜93年2.73トン/ha
1.3%
2003〜05年3.24トン/ha

資料:FAO FAOSTAT

図

● 過度の放牧、森林の過伐採等による砂漠化の進行

合計500万ha/年以上の農地が砂漠化
(1分間に9.5ha、東京ドームのグラウンド7個分)
この他、放牧地でも多くの面積が砂漠化

資料:UNEP(国連環境計画)報告(1991年)

● 地球温暖化等の生産制約要因

21世紀末の世界の平均気温は1.1℃〜6.4℃上昇。
平均気温3℃以上の上昇で世界の食料生産は減少。

資料:IPCC(気候変動に関する政府間パネル)(2007年)

2 世界の農産物輸出入の動き

ア 世界の農産物貿易

● 世界経済の拡大とともに、農産物貿易も拡大

 世界経済は、2007年前半は、中国、インド等での経済成長を受け、堅調な成長を遂げましたが、後半は金融市場の不安定な状況を受け、緩やかな成長となりました。こうしたことから2008年の成長率は4.9%から3.7%に低下する見通しとなっています。

 世界経済の拡大とともに世界の貿易額は増大しており、2007年は13兆9,400億ドルと10年前の2倍となっています。

 世界の農産物貿易額も、2005年には過去最高の6,700億ドルを記録し、また、世界の食料輸入総額は、2007年には前年より21%増加して過去最高額になると予測されています。

表―4 主要農産物貿易等の貿易率(2006年)

貿易率(%)
小麦19.4
とうもろこし12.9
7.2
大豆29.9
牛肉12.6
豚肉5.4
石油62.3
乗用車44.0

資料:米国農務省、米国エネルギー省

注:
1)貿易率=輸出量/生産量×100
2)石油は生産量、輸出量上位15か国の計乗用車は2005年の数値、輸出量は主要国の輸出量(台数
)の計

● 農産物は貿易率が低く、輸出は特定の国や地域が占有

 農産物貿易は、今後、一層拡大することが見込まれていますが、農産物は基本的に生産国内の消費に仕向けられるものであることから、鉱工業品に比べ貿易率が低い傾向にあります。

 また、主な農産物の輸出は、上位1〜5位の国・地域で全体の7割以上を占めており、特定の国・地域に集中しています。

 このため、輸出国での不作や作付けの転換等が国際市場に大きな影響を及ぼす構造となっています。

図

表−5 主要農産物の輸出国別割合(2006年)

単位:%

小麦とうもろこし
1位米国21.8米国59.5
2位カナダ16.9アルゼンチン17.3
3位EU12.1ブラジル8.9
4位アルゼンチン10.6中国5.8
5位豪州9.8その他8.6
6位ロシア9.4
7位その他19.5

単位:%

大豆
1位タイ31.4米国42.9
2位インド16.5ブラジル33.1
3位ベトナム14.9アルゼンチン13.4
4位米国10.0パラグアイ5.6
5位パキスタン7.9その他4.7
6位中国4.4
7位その他14.8

単位:%

牛肉豚肉
1位ブラジル27.8米国26.0
2位豪州19.1EU24.6
3位インド9.1カナダ20.7
4位アルゼンチン7.4ブラジル12.2
5位ニュージーランド7.1中国10.4
6位米国6.9その他6.0
7位その他22.6

資料:米国農務省「Markets and Trade Data(April 2008)」を基に農林水産省で作成

イ 農産物貿易交渉の動向

● WTO交渉やEPA/FTA交渉が進行

 世界経済は、これまで、ガット(関税及び貿易に関する一般協定)1995年にガットの成果を発展的に継承した世界貿易機関(WTO)の体制のもとで、持続的に発展してきています。現在、21世紀の貿易ルールの構築に向け、151の加盟国・地域が共通のルールを決めるWTO交渉を行っているほか、これに、加え、WTOの多角的な貿易体制を補完するものとして、特定の国・地域間で関税撤廃等を行うEPA(経済連携協定)/FTA(自由貿易協定)に関する交渉等が進められています。

注:
WTO体制とは、
(1)どの国に対しても同様の条件で、関税等の通商規則を定めることが条件で、関税等の通商規則定めることが原則(最恵国待遇)
(2)関税、国内補助金、輸出補助金の削減ルール等を交渉
自由貿易協定(FTA)とは、
(1)協定締約国のみを対象として、物やサービスの貿易自由化を行う協定
(2)実質上すべての貿易について、10年以内の関税撤廃
経済連携協定(EPA)とは、
(1)協定締約国間での、物やサービスの貿易自由化だけでなく、投資、知的財産、協力の増進等幅広い分野を含む協定
(EPA・FTAはWTOの多角的貿易体制を補完するものとして行われています)

図

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