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3 新学習指導要領と農業

 平成20年3月に新しい中学校の学習指導要領が告示され、21年度からの移行措置を経て、平成24年度から全面実施されることになりました。

 新学習指導要領は基本的には現行の学習指導要領の理念である「生きる力」をはぐくむことを継承し、その上に立って今後の大切な課題として、(1)言語活動の充実と、(2)体験活動の充実などを大きな改善事項として挙げています。(1)は知的活動やコミュニケーション、感性・情緒の基盤として言語力を高める学習活動を充実させることであり、(2)は社会性や豊かな人間性をはぐくむため、発達段階に応じて集団宿泊活動や自然体験活動、特に中学校では職場体験活動を重点的に推進することとなっています。

 その他の教育内容の改善事項としては理数教育の充実、伝統や文化に関する教育の充実、道徳教育の充実、外国語教育の充実などが挙げられています。

(1)「技術・家庭科」では『生物育成に関する技術』が必修に

 従来、農業体験活動などに利用可能であった「総合的な学習の時間」の授業時間数は、現行では210時間以上となっていて「選択教科等」に充てる授業時数との関係で弾力的に設定できていましたが、改訂により、190時間に縮減されることになりました。

 しかしながら、各教科のうち「技術・家庭科」において、特に『技術分野』では従来A・Bの2つの内容構成からなって、『作物の栽培』はAの「技術とものづくり」の中に位置づけられ学校で選択して履修させる扱いとなっていましたが、今回の改訂では、『技術分野』は内容構成がA・B・C・Dの4つとなり、新たにC『生物育成に関する技術』として独立して位置づけられ、必修として扱われるようになりました

 『生物育成に関する技術』の内容は

(1) 生物の生育環境と育成技術について、次の事項を指導する。
  ア 生物の育成に適する条件と生物の育成環境を管理する方法を知ること。
  イ 生物育成に関する技術の適切な評価・活用 について考えること。

(2)生物育成に関する技術を利用した栽培又は飼育について、次の事項を指導する。
  ア 目的とする生物の育成計画を立て、生物の栽培又は飼育ができること。

となっています。

 『家庭分野』では、地域の食材を生かした調理が選択から必修となり、新たに地域の伝統的な行事食や郷土料理など地域の食文化も学習するようになりました。

 内容の取扱いとしては、平成20年9月に出された「中学校学習指導要領解説技術・家庭編」によると、上記(2)アの栽培・飼育については、各成長段階における肥料・飼料の給与量や方法等の管理作業、及び必要な資材、用具、設備などについて知ることができるようにする。また、主な病気や害虫とそれに侵されにくい育成方法、防除方法も知ることができるようにする。栽培・飼育計画を立て、成長の変化をとらえ適切な対応を工夫する能力を育成するなどとなっています。

図

 そのほか、この学習では、◎育成計画を立てさせる際に、自分の考えを整理し、実際に栽培・飼育する前に課題を明らかにできるよう計画を表にまとめ、適切に用いることについても指導する。◎栽培・飼育する生物を選択する際には、目的に応じて種類を検討するとともに、育成する場所や時期も踏まえるよう配慮する。◎普通栽培が困難なときは、施設栽培、容器栽培、溶液栽培などを取り上げることも考えられる。また、◎動物の飼育、魚介類や藻類などを選択した場合、適当な環境がないときには、地域機関・施設などとの連携を図り、実習や観察等を実施することも考えられる。◎薬品の安全使用基準や使用上の注意を遵守させるなど、となっており、◎栽培・飼育に当たっては地域固有の生態系への配慮も求められています。

(2)「『生物育成に関する技術』に関するアンケート調査」から

 こうした新しい学習指導要領の改訂に対して、学校の現状を把握するため、全国農村青少年教育振興会では、「技術・家庭科」の「生物育成に関する技術」に関するアンケート調査を緊急に実施いたしました。(リンク:「生物育成に関する技術」に関するアンケート調査

問1 必修化に関連する準備状況については

 従来から栽培・飼育について「既に授業を行っている」学校は9%と少なく、現在「検討・準備を行っている」学校は35.7%で、約半数の54.3%の学校では「まだ検討・準備を行っていない」状況となっており、対応が急がれます。

問2 指導する実施体制については

 「既に対応可能な人員体制となっている」学校はわずかに1.5%で、「農業指導員、臨時職員等を新たに確保して、実施体制整備を進めていく」学校は6.4%となっていて、大部分の83.8%の学校では「新たに人員を確保せず、現状の人員で実施体制の整備を進めていく」となっており、今後の対応としては、現職教員の技術研修体制を充実させていくことが望まれます。

問3 取り組む内容については

 89.7%の学校で「植物(作物・野菜・花木)栽培」を実施しようとしており、「陸上動物(家畜、愛玩動物)の飼育」は3.3%、「水産生物の飼育」は0.9%と少なく、やはりほとんどの学校で植物栽培を行おうとしており、研修会を検討していく際の参考になると思います。

問4 栽培・飼育をする施設・場所については

 「容器栽培(鉢物・プランター・小型ケージ(移動可能))で実施」は62.3%、「学校の農園・圃場(飼育施設(鶏・ウサギ小屋))で実施」は27.2%、「農林漁家など学校外の生産現場において実施」は4.3%、農業高校・農業大学校等他の教育機関と連携して実施」は0.8%となっています。現状の中で授業時間内での実施を考えると手軽にできる容器栽培になってしまうと考えられますが、出来れば時間割や授業時間の弾力化によって、総合的な学習の時間などと組み合わせて、学校に近い圃場の確保や、わずかであっても校内に農園を設置して実施できればと考えます。用具や種苗等以外にも、こうした面からの予算も必要となってきます。

問5 実施に当たりどのようなものがあれば良いかについては

 「指導者のための研修機会」が31.1%、「生物育成の技術に関する指導マニュアル」が28.6%、「モデル的なカリキュラムに関する情報提供」が24.7%、「外部指導者や受入農林漁家等の相談・紹介情報」が12.8%となっており、円滑な導入に当たっての対応課題が明確になりました。

 このように、「生物育成に関する技術」の必修化にともない、学校の取り組み状況が明らかになりましたが、最大の課題は、技術科の先生方が学生時代の教職課程の講座を含めてほとんど「栽培」の経験がなく、指導に困っていると考えられ、早急に「栽培・飼育」の技術研修会を設定したり、技術指導マニュアルカリキュラムに関する情報の提供等の対応が必要となっています。

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